「世界一チャレンジしやすいまち」の実現をビジョンに掲げる宮崎県新富町。人口1万7,000人の小さなこの町で、なぜ1粒1,000円ライチや企業との連携事例が続々と生まれ、移住者たちが飛びこんできているのか。仕掛け人である地域商社こゆ財団の視点から、その理由と気づきをご紹介します。今回のテーマは「地方創生のビジネス論」です。
持続可能な地域の実現を目的に、宮崎県新富町が2017年に設立した地域商社こゆ財団。これまでに、特産品である農産物を活用したブランディングを手掛けてきました。
代表的な事例が「1粒1000円ライチ」です。
希少価値の高い地元産のライチをブランド化し、市場を開拓。売上を伸ばしただけでなく、町の新しい特産品として関係人口創出にもつながったとして、2020年には「グッドデザイン賞」を受賞することができました。
この取り組みのポイントは、①ブランド確立に集中し、全精力を注ぐこと、②ブランド確立後はその価値を守りながら広がりを持たせること、③その間、軸をぶらさないことです。これが、地域資源を活用したビジネスには不可欠です。
まずは1点に集中
こゆ財団が「1粒1000円のライチ」という、新たな核となる商品がつくれたのは、ライチのブランディングにとにかく集中して取り組んだことです。
味、品質、見た目やその希少価値など特長を編集し、ネーミングやパッケージで表現。本当に魅力あるものに付加価値を加えることで、メディアが注目するブランディングをやり遂げました。
水平展開で接点を増やす
とはいえ、ライチの収穫時は年1回、5月下旬から7月中旬まで。消費者がライチに触れられる期間が短いため、私たちはライチを使った加工品開発にも取り組みました。経験のない中での開発だけに試行錯誤も多かったのですが、ライチビール、ライチティー、ボディクリームなど、さまざまな国産ライチの加工品が生まれました。
特にライチビールは、町内の酒屋で1本1,000円で限定販売したのですが、あっという間に売り切れに。地元新聞に取り上げていただいたのも大きな反響につながりました。
宮崎市内の高校とコラボしたライチアイスは、完成後も高校生の手によってショッピングモールの一等地で宣伝販売を行ってくださいました。ライチの被り物をかぶった高校生が新富町をアピールしてくれる姿に、各方面からうれしい反響がありましたね。
軸をぶらさない
あれこれ同時にブランディングしようとしたり、ブランドが確立されていない状態で商品開発に着手すると、迷いが生じます。
まずはやるべきことを一点に絞り、集中してやり遂げること。それから水平方向に展開することで、広まり方が断然違ってきます。
もちろん、それでも迷う時はあります。そこはリーダーがクリエイティブディレクターとなって、軸をぶらさないことが重要です。
ちなみにライチは、新富町で20年ほど前から生産されていた農産物です。みなさんの地域にも、まだ光のあたっていない、新しいビジネスにつながるものが必ず眠っていると思います。