別居から始まる2拠点夫婦生活。私たち、ゲストハウスのオーナー同士で結婚しました。

別居から始まる2拠点夫婦生活。私たち、ゲストハウスのオーナー同士で結婚しました。

その土地で旅人をあたたかく迎え入れる宿・ゲストハウス。別の地域でそれぞれゲストハウスを営むオーナー同士が結婚したら、夫婦生活はどんな感じ?地域に根付いて宿を切り盛りする2人が出会い、共に手を取り合うまでの物語を、根掘り葉掘り聞いてみました!

それぞれの場所でゲストハウスを営む2人


クロちゃんとみさとさん
長崎県平戸市の石黒雅俊さん(左)と佐賀県伊万里市の石黒みさとさん(右)

長崎県平戸市でヒラドゲストハウス「コトノハ」を構える石黒雅俊さん。愛称はクロちゃんで親しまれる雅俊さんは、愛知県春日井出身で、2016年3月に平戸へIターン移住した。移住のきっかけは、たまたま旅先で知り合った平戸の大ファンという人との出会い。その人に誘われて平戸へ遊びに行った際に、「ここでゲストハウスやりなよ」という提案が。元々ゲストハウスに興味があった雅俊さんは、なんとその時に移住とゲストハウスの開業を決意。移住後、1年かけて物件をDIYし、2017年2月にコトノハはオープンした。


コトノハの外観


佐賀県伊万里市にある農家民宿型ゲストハウス「Ne doco? 猫床のオーナー・石黒みさとさん。佐賀県佐賀市で生まれ育ったみさとさんは、ゲストハウスをやりたくて2017年6月に伊万里市へ移住。物件はみさとさんの祖父母の家をリノベーションすることに。移住からの4ヶ月間で、ゲストハウス開業に向けてDIY合宿を企画し、協力してくれる人を募った。そうして、2017年10月に猫床がスタートしたのであった。


Ne doko?の内観


大工の雅俊さんが大活躍!DIY合宿で惹かれ合う…!?


前職はコスメの会社に勤めていたみさとさん。ゲストハウス運営の経験はもちろん、リノベーションの技術や知識も持ち合わせていなかった。


みさとさん「ゲストハウスを開業・DIYするにあたって、まずは他の宿を視察しに行こう!と思いました。近くにないかな〜と思って探してみたところ、半年前くらいにできたばかりのゲストハウスが平戸にある…!普段は、旅行は計画的に準備したいタイプな私ですが、この時は当日に行こう!と決断して泊まりに行ったんです。それがクロちゃんとの出会いですね(笑)」


雅俊さん「みさとさんから予約の電話が来た時、ちょうど出かけていたんです。うーん、どうしようかなぁと悩んでいたんですけど、その日は他にも当日予約があと2件も来て。観念して、宿に戻りました(笑)本当に予定が合わない時はお断りすることもあるので、もしかしたら会えなかった可能性もゼロじゃないですね…。」


みさとさん「電話先でかなり渋っていて、まずそこが驚きでした。18時以降ならいいですよ、とか言われて。え、受付してもらえないの?そんなことある?って(笑)そもそもゲストハウスってそういうものなんだって知ることができましたね。」


この日、たまたまもう1人のゲストも長崎でゲストハウスをしている人だったとのこと。未来の同業者・みさとさんも含めて、3人で語り合った。よくよく聞いてみると、雅俊さんの職業は元・大工さん。そこから2人の物語が動き始めた。


みさとさん「お、これは…?と思いましたね(笑)それからDIY合宿にも誘って、クロちゃんが平戸から仲間を引き連れて何度もお手伝いに来てくれたんです。おじさん達ばかりだったけど(笑)毎回打ち上げして、みんな泊まって行くので、そうやって仲良くなりました。この時点では恋愛感情は無くて、頼れるアニキ(?)って感じで。」


DIY合宿の様子


それから、雅俊さんがみさとさんに猛アプローチ。加えて、猫床のDIY合宿に来ていたコトノハのヘルパーさんが、雅俊さんの魅力を猛プッシュ!雅俊さんのアプローチと熱心なプレゼンにより、猫床のオープン直前から結婚を前提にお付き合いがスタート。そして、猫床のオープン1周年記念直前となる2018年9月末に結婚。ゲストハウスで結婚式を挙げた。


結婚式の様子
結婚式は伊万里と、平戸でもビーチウェディングを行なう2daysの予定だったが、台風で中止に。2019年、1年越しに実現させた(が、結局台風は来たらしい。)

こうして、2人の移住・ゲストハウス開業に伴い、出会いから結婚までのストーリーへと発展していったのだった。



気になる、2人の暮らしぶりは?

宿のオーナー同士だからこそ共有できる。良かったこと・大変なこと


2人のプライベートな時間は、雅俊さんが伊万里に通うことで週に1〜2回は作っていた。コトノハに予約が入っていない時や、ゲストが承諾してくれた時には、宿を後にしてみさとさんの元へ向かった。


雅俊さん「特に、外国人のゲストは理解をしてくれました。僕の奥さんが佐賀に居て…と事情を説明すると、それは早く行ってあげて!こっちは大丈夫だから!って言ってくれたり(笑)そんな感じでチェックインなどの手続きが済んだら、お客さんが宿に泊まっていても伊万里に行っていましたね。」


コトノハのカウンター


みさとさん「私が平戸へ行くことももちろんありましたが、猫を飼っているということもあって、身動きが取りづらくて…。結婚前の付き合っていた時期も含めると、そんな生活を2年半くらい続けてきました。」


平戸と伊万里は車で1時間程度。意外と、分断された生活というわけでもなく、行ったり来たりを繰り返して成り立っていた。そんな中でも大変なことはあったのだろうか?


雅俊さん「うーん、あんまり無いけど…、強いて言うなら何かトラブルや問題が起こった時、ですかね。例えば、みさとさんが体調を崩した時に、薬を買って駆けつけようと思っても、到着するのは1時間後。心配事があった時にすぐに行きたくても、時間がかかってしまいますね。」


みさとさん「女性1人でゲストハウスをやってるというと、心配されることが多いです。変なお客さんが泊まりに来て危ないんじゃないか…?とか。でも、そんな変な人はあまり来ないですね。なので、特に大変なことや心配なことはないと思います。重たい物を動かしたりとか、男手が必要なことがあっても、週一くらいでクロちゃんが来るので(笑)」


nedokoの外観


雅俊さん「僕たちは初めから別居が普通で、それが分かった上での結婚でした。お互い開業して間もないので、まだまだ自分の場所で自分のスタイルを確立することに集中してて。どちらかに統合するという選択もしませんでした。」


また、パートナーであると同時に“貴重な同業者”である2人。ローカルでほとんど同じ時期にゲストハウスを開業した者同士、時には相談事をして苦労を分かち合うことも。そんな人が身内にいてくれて、とても心強いという。


雅俊さん「相談というか、愚痴もありますね。悪いお客さんじゃないんだけど、ユニークお客さん自慢大会とか(笑)こっちすげえ人が来たよ、なんて話をしてます。」


みさとさん「同業者という点で言えば、忙しい時期と暇な時期のリズムも大体一緒なんです。忙しい時期は相手も忙しいので、お互い気にならなくて。逆に2月とかは2人とも暇なので、1ヶ月間丸々ゲストハウスを休みにして、ハネムーンに行きました(笑)」


ハネムーンの写真
メキシコ、スペイン、モロッコ、韓国。オフシーズンに2人で充実した旅をしていた

それぞれの城は違えど、共にゲストハウスという場所を作っていく2人には、生活の緩急や仕事の中で感じる点が重なっていた。遠距離恋愛でありながら、心地よい距離感を保っていたのである。もちろん、これが自分たち夫婦のカタチだと分かっていながらも、雅俊さんが足繁く伊万里に通うなど、2人のプライベートな時間をちゃんと作ることを怠らなかった。


将来はこのまま2拠点?それとも…?


コトノハは宿としての借家物件。対して猫床はゲストハウス兼住居であり、また祖父母の持ち家なので家賃がかからない。経済的にも、もし将来一緒に住むなら伊万里になるかな、という話はしていた。それがいつ、という具体的な話ではないけれど、ぼんやりとそんなイメージはあったようだ。しかし、今では状況が大きく変わりつつあり、石黒夫婦も転機を迎えようとしている。


雅俊さん「今、実は2拠点というよりも、1.5拠点くらいになっていて(笑)コロナの影響で予約も減ってきているので、ほとんどの時間を僕も猫床に居るようになってきているんです。逆にいうと、コロナによって夫婦の時間は増えました。それから、これは一大発表なんですが、春先くらいにコトノハは一度幕を下ろすことになると思います…!」


みさとさん「そうなんです…!色々と家族会議をしまして(笑)クロちゃんは今、大工業の仕事がたくさん入ってきていて、コトノハは積極的には稼働していない状況で。猫床も今後のことを考えると、やりたくて始めたゲストハウスも、別事業に比重を置いたり、新しいことを始めていかないといけないなと思っています。」


猫床には、現在セレクトショップを併設しており、もっとそちらを伸ばしていこうとしているみさとさん。また、ランチで出しているおむすびについて、テイクアウトメインのおむすび屋さんを新しく始めたいとのこと。ただ、1人では手が回らない心配もあり、今回のタイミングで雅俊さんも伊万里に腰を据えて2人で挑戦することを決めた。春先から動き始めて、秋にやってくる猫床の4周年に合わせ、近所の空き家をその拠点にしようと進めている。


猫床のおむすびランチ


同じゲストハウスという業種である2人には、コロナの影響は同様に厳しく2人に降りかかった。2拠点生活だった石黒夫婦も、時代に合わせてそのカタチを変えていく。もちろん、雅俊さんが繋いできた平戸の縁が途切れるわけではなく、いつでも帰れる場所はある。今まではそれぞれの場所で培ってきたモノを、これからは伊万里の居場所に持ち寄って、新しいことを生み出そうとしている雅俊さんとみさとさん。


ウェディングの2人


別の場所で、同じ夢を追いかけ、お互いのことを見つめていた2人が交わる時、次はどんな物語が生まれるのだろうか。

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