古くからの技と新しい可能性をつなぐ街・西陣。

古くからの技と新しい可能性をつなぐ街・西陣。

 京都市の繁華街といえば四条河原町界隈のイメージがありますが、千本通と中立売通の交差点「千中」もかつては映画館が立ち並ぶ歓楽街で、今も知る人ぞ知る名店が並んでいます。そもそも京都は、いくつもの街で構成された都市でした。


 そんな京都の古い街を代表する西陣。応仁の乱で西軍の陣地となった船岡山の麓から山名宗全邸があった一帯が、西陣と呼ばれていました。激戦地となった百々橋のあった小川通には茶道の表千家と裏千家が並んでいたり、かつて能の観世家の邸宅があった観世町が町名に残っていたり、京の伝統文化の中枢でもありました。中世には街として四条界隈よりもずっと規模が大きく、「洛中洛外屏風図」には小川通はメインストリートとして描かれています。


 この西陣で今、街と若者をつなぐプロジェクト『西陣connect』が展開されています。西陣織によるウェディングドレス、帯をった椅子や織り機をモチーフとした家具、大学生による社会課題解決のアイデアを募ったコンペティションなど、積極的なコラボレートが展開されはじめています。


 現在進行中のプロジェクト『三帯三』は、西陣織の事業者3社と、伝統工芸とはかけ離れた分野で活躍する3人とを掛け合わせる試みです。シンガーソングライター・佐藤ひらりさんと『秦流舎』による「鼓動」、建築家・高濱史子さんと『桝屋高尾』による「京都西陣市街図」、絵本作家・谷口智則さんと『西陣まいづる』との「つながるおもひ」の3本の帯づくりが行われています。


家具と西陣織の共同開発プロジェクト『OBI』。この椅子に座るとちょうど帯を締めたように見える。

 西陣織にはいくつもの工程があり、それぞれの工程に最高水準の技が投入され織り上がっていきます。今も機械化不能な工程がいくつかあり、驚くほど繊細な技術が今も使われています。


 街の「音」にフォーカスして新しい魅力を引き出そうという『FM京都』との試みも『西陣connect」のプロジェクトの一つ。


 西陣の町に響く機織りの音によくよく耳を凝らしてゆくとその音はモーター等の「動力」の音と、機織りのギッコンバッタン、糸巻き車のキュルキュルといった「機構」の音の2つがあることに気づきます。動力以外の音に集中してみれば、聞こえてくる音は昔と基本的には同じ音なのです。それぞれの街角にそれぞれの工程でまったく違った表情が音からは見えてきます。


西陣織の機織りの音は、今でも街で聞こえてくる音だという。

 西陣は応仁の乱の後、地方に避難していた職人たちが戻ってくることで発展していきました。戦国期以降は唐織と呼ばれる金襴の製法や大型の織り機の登場など技術革新が次々と起こり、今出川大宮は「千両が辻」と呼ばれるほど巨大な生産高を誇る地域に発展していきました。重要なのは織り手たちを通して、各地から大陸の最新技術が京都に集積されていったこと。文明開化期にはフランスから導入されたジャカード機が西陣の生産性を飛躍的に向上させていきましたが、これらのことはこの街の本質をよく表しているのではないでしょうか。


 伝統の技をその最深部に残しながら、歴史の変わり目にはそうした古い技術を活かす方向に新しいものを大胆に取り込んできた西陣。街にとっても、学生や若い層にとっても新しい可能性は意外なところにあるのかもしれません。

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