田舎暮らしに興味はあるけど、車がないと無理でしょ? ペーパードライバーだから不安。免許がないし……。そう思って諦めている人はいませんか?田舎といってもいろいろな場所があるので一概には言えませんが、自転車とともに移住した私の経験を紹介します。
通勤時間は自転車で片道50分
私が11年前に千葉県の南房総エリアに移住した当時の住環境は、スーパーと最寄りのバス停まで徒歩5分、コンビニまで自転車で10分という場所でした。免許取得後長年ペーパードライバーのままゴールド免許を保持し続けている状態だったので、私の中の選択肢に“車”の文字が浮かぶことはなく、自転車と公共交通機関の利用が自然な流れでした。移住後見つけた仕事先は、13キロ離れた隣町。通勤路はトンネルを2つ通り抜ける、山に囲まれた道でした。
冬でも、自転車をこいでいると汗をかきます。夏は汗だくになるので、職場に着いたらまず着替え。
車移動に慣れた今、あの山道を自転車で片道50分なんてよくやったなと自分でも思います。でも、選択肢に車がなかった当時の私にとっては当たり前のことであり、鳥の声を聞きながら山道を自転車で走るのは、楽しくもあったのです。
自転車しかないから周囲が助けてくれた
雨の日はさすがにバスを使いましたが、一時間に一本しかないバスでの通勤は自転車のときよりも早く家を出なければならず、交通費は往復で1000円以上したのであまり利用しませんでした。自転車で通勤しても、職場の人が自転車ごと車に積んで送ってくれたことも。
ほとんど車しか通らない山間の道を自転車で通勤していると、けっこう目立ちます。そんな私を見かねて、電動アシスト自転車を貸してくれる人が現れました。当時の電動アシスト自転車だと片道分しか充電が持ちませんでしたが、職場で充電させてもらって通勤しました。電動アシスト自転車と一緒に、反射板が付いたベストも貸りました。街灯が少ない山道は、自転車のライトだけではかなり暗く、車から見ると危険な存在です。自分の存在を知らせて身を守るために、反射するものを身に着けた方がいいでしょう。
個人的にたくさんの荷物を運ばなければいけないときや、友達が遊びに来たときは車を持っている友達にお願いして車を出してもらいました。自転車生活に必要なのは本人のやる気と体力、そして協力してくれる仲間だと思います。
電動アシスト自転車から原動機付自転車へ昇格!?
電動アシスト自転車で通勤している私に、友達が原動機付自転車(以下原付)を貸してくれました。体力の消耗も時間も相当削減でき、行動範囲が一気に広がりました。行きはいいけど、帰りの時間と体力を考えると気軽に行けなかった地域にも、気にせず行けるようになりました。
夜、自転車で山間の道を帰っていると、田畑からカエルの大合唱が鳴り響き、ハクビシンなどの小動物と出くわし、トンネルを越えるとどこか異世界へとタイムスリップしてしまうのではないかと思ったことがあります。原付はエンジン音がうるさいので、周囲の自然音を聞いて楽しむことはできません。でもライトの明るさは自転車よりも各段に明るくて運転しやすいです。
車の運転に自信がないからと田舎暮らしを諦めていた人は、原付だけでも取得すると移住先の選択肢がぐんと広がるのではないでしょうか。
車を持たない人たちの工夫
田舎町でも、駅から徒歩圏内の場所に住んでいると自転車で最低限の用事を済ますことができます。車を持たない前提で移住を考えるなら、住環境が重要になるでしょう。
車が必要なとき、私は車を持っている友達を頼りました。車だけでなく、さまざまな場面で助け合える人間関係作りはとても大切です。「雨の日は職場の人が送迎してくれます」「最寄り駅から職場までは職場の人が送迎してくれる」という話はふつうに耳にします。
とはいえ、急な用事でどうしても車が必要になることはあるでしょう。そういうときはタクシーを使うという人がいます。普段は公共交通機関を利用し、車が必要なときはタクシー。自分で車を維持するよりも、その方が安いと判断しているようです。
車があれば、好きなときに好きな場所へ天候を気にせずに移動でき、たくさん荷物を運ぶことができます。原付だと雨の日の移動が困難で、運べる荷物は車より少なくなり、友達を乗せることはできません。自転車は更に労力が必要になりますが、鳥や虫の鳴き声など、自然音や景色、風を感じて楽しむことができます。駐車場がなくても、景色のいいところですぐに停まることができ、寄り道しやすいのもお気に入りのポイントです。
どれも一長一短。時と場合によって最善のものが異なるので、今の私は車と原付、自転車を所有しています。最初から車がないとダメだと思い込まず、今自分ができる条件でとりあえず行動してみるのが一番ではないでしょうか。慣れてから徐々にステップアップすればいいのですから。