地方で働く女性、都心で働く女性、子育てをしながら働く女性、さまざまなライフスタイルを送る女性たちを取り上げ、女性の健康課題や社会課題について考える対談コンテンツ『フェムコト』。
今回対談させていただいたのは、Mellia株式会社CEOの原由記さん。2018年にデリケートゾーンケアブランド『I’m La Floria(アイム ラフロリア)』を立ち上げました。ブランド名のI’mには“自分のために必要なものを自分で選択する”という意味が込められているといいます。「体や心で悩まない世の中になるように、企業として寄り添っていきたい」と願う原さんに起業の思いなどをお聞きしました。
RULE1.自分の体を知り、不調を見逃さない
RULE2.納得いくまで話し合いやリサーチをする
RULE3.デリケートゾーンをケアしてシェアする
Profile
Mellia株式会社CEO・原由記さん
はら・ゆき 徳島県出身。18歳で上京し、被服科のある大学へ進学。卒業後、美容業界へ。ベンチャー系の化粧品会社で商品企画やPRプロモーションの部署を統括。2017年、幼なじみの和田由紀氏と共にMellia株式会社を設立。デリケートゾーンケアブランド『I’m La Floria(アイム ラフロリア)』の商品開発・コンセプターを務める。女性ホルモンバランスプランナーの資格も所持。0歳児の母としての顔も持つ。
ハードワークで腟カンジダなど体の不調に直面
原さん:うちは母子家庭で母はお花の先生をしていて、全国を飛び回っていました。そんな母の背中を見て育ったので、女性が働くことが当たり前の環境で過ごしていたんです。学生時代は美術部に入るなど、昔からモノづくりは好きでしたね。
フェムテックtv:大学卒業後は化粧品会社に約10年勤められたとのことですが、当時の働き方についてお聞かせください。
原さん:新卒の頃って、初めてのことや課せられた仕事をこなすだけでも忙しいですよね。だけど私は好奇心旺盛で、仕事もしたいし遊びもしたい! やりたいことだらけで、何もかも全力で向き合っていました。ただやっぱり体は疲れ、食生活が乱れ、運動や趣味の時間も少なくなり、いろんなことがおざなりに。生理は1〜2日で終わってしまい、経血量がすごく少ない時期もありました。腟カンジダを発症し、病院で診察して薬をもらって治しても毎月のように繰り返し発症する。疲れやストレスによるものだったと思います。
フェムテックtv:症状を放置せず、病院はしっかり受診されていたんですね。
原さん:そうですね。腟カンジダはかゆくて我慢できないんですよ。ただ薬を塗れば治りましたけど、根本的な解決にはなっていなかったんです。睡眠や食事など生活リズムを変え、本当に挑戦したかったことで起業をしたら、こういった体の不調はなくなりました。
忙しさに追われていた時代は、体の菌のバランスを整えることが大事だったり女性ホルモンの仕組みを理解していなかったりと、知らないことだらけ。改善の方法を初めからわかっていたわけではありませんでした。ホルモンバランスの勉強を通じ、学ぶことの重要性を痛感しました。自分の体のことを知るだけで、自分自身で改善の方向に導くこともできるんです。知らないと、ほったらかしにしてしまいがちですからね。
フェムテックtv:原さんは前職から女性が多い環境で働いていたかと思います。ホルモンバランスが及ぼす仕事への影響などを感じたことはありますか?
原さん:生理痛やPMS、臭いなど、生理にまつわる悩みは人それぞれ抱えていると思います。チームの女性社員を見て「今日、生理なのかな?」と思うことはありました。ただ以前は、それが打ち明けられなかった。オープンに話せてそれぞれの状況をもっとよく知っていれば、それに合わせて仕事を振りパフォーマンスを上げることができたと思うんです。「心と体は繋がっている」と私はよくお話させてもらいますが、心配事があると1日の気持ちが上がらない。そうすると仕事にも集中できない。それってよくない循環ですよね。そんな経験も、女性の体を知りたい! と思ったきっかけです。
“私だけかも?”と思う悩みは人それぞれ感じている
原さん:母や祖母を含め、いろんな世代の方にお話を聞きに行きました。マーケットデータも見ながら“日本でデリケートゾーンケアのアイテムが少ないのはなぜだろう?”と、その理由を分析。欧米のように文化として根づかせたいと考えました。
フェムテックtv:共同経営者である和田由紀さんとは幼なじみの間柄ですが、ビジネスパートナーになったことで関係性の変化はありましたか?
原さん:よく聞かれるんですが、特にないんですよね。もはや35年くらいの付き合いにもなれば、姉妹みたいなもの。考え方にズレが生じたり意見がぶつかったりしても、納得いくまで話し合います。揉めることはないですね。即座に情報もシェアしてよく相談もします。それから幼少期に一緒にクラシックバレエを習っていたので、元々2人とも根性があるということはわかっているんですよね(笑)。それがビジネスにも活きています。私がブランドの商品開発やブランディング、和田が資金調達や営業面を担当。お互いの得意なことを活かしています。
フェムテックtv:原さんは商品開発をするにあたり、どのようなことを参考にしていますか?
原さん:お客様の声は大事にしています。それから私自身は、20代後半のときに初めてデリケートゾーンソープを使用したんですね。ドラッグストアで売っているアメリカの商品です。そこからいろんなブランドのものを片っ端から購入し使用しましたが、これだ! というものがなくて。それからボディソープでデリケートゾーンを洗ったときに、すごく染みた経験もあるんですね。染みる原因は何なんだろう? と思ったら、デリケートゾーンはpH値が低く目元と同じくらい繊細な場所ということを知ったんです。女性にとってデリケートゾーンは大切な場所であるのにも拘わらず、そこまで大切に扱ってこなかったなと気づきました。もっと快適なデリケートゾーンを叶えようと誕生したのが、全身に使える『デリケートボディウォッシュ』です。
原さん:ボディソープとは別にデリケートゾーン専用にもう1本買うのって、結構ハードルが高いなと思ったんです。1本で全部叶えられるものがあればいいのになって。ゆくゆくは歯磨き粉やシャンプーやリンス、洗顔フォームのように専用アイテムとして主流になればいいでしょうけど、まだまだ時間はかかる。それにデリケートゾーンが洗えるくらい肌にやさしいものなら、ボディも洗えますからね。健康な肌は弱酸性でその状態をキープすることでバリア機能を保持し潤いを保っているので、むしろ弱酸性のアイテムで洗浄するほうが不要な汚れのみ除去することができるんです。
私自身、腟カンジダだったりボディソープが染みたりしたことは“私だけかも?”と思って、当時は周囲に言えませんでした。でも人に言えないだけで、もしかしたら同じような悩みの人はいるのかもしれない。だから私は「デリケートゾーンをケアするって気持ちいいよ! ハッピーだよ! みんな使って!」といまは自身の体験から自信を持ってシェアできる。同じようにたくさんの方がシェアしていけば、デリケートゾーンケアへの認識も変わっていくと思っています。
デリケートゾーンケアが産後の回復を早める
原さん:私は足すより引き算の考え方が好きなんですね。だから『I’m La Floria(アイム ラフロリア)』のデザインも、リニューアルのタイミングでシンプルにしました。世代やジェンダーを問わずどんな方にも手に取ってもらいやすいかと思います。
それから根っからのミーハー。いまならフェムテック全般に興味があるので、海外の情報を仕入れるなど常にアンテナを張っています。趣味が仕事になっていますね。全て経験です。
フェムテックtv:そんなパワフルな原さんの1日のスケジュールを教えてください。
原さん:朝6時頃に起きて、前日の夜にできなかった仕事を片付けて、7時頃に子どもが起きたらミルクをあげたり一緒に遊んだりしています。8時から化粧をするなど自分の準備をして子どもを保育園に送ったら、9時からは毎日和田と2人で役員会議。10時から通常業務です。ミーティングやライターさんと情報共有などして、18時には子どもを迎えに。21時までは子どもとの時間を過ごし、そのまま一緒に寝てしまうか、溜まった仕事があれば終わらせてから寝ることもあります。
原さん:尿漏れや骨盤の開きですね。いまも時々くしゃみをすると漏れるので、産後の方はもちろん、そうじゃない方も女性は腟トレをしないとゆくゆく大変かと思います。幸いにも、私は会陰マッサージをしていたおかげで傷口はすぐに完治。デリケートゾーン専門の先生のところで腟内ケアもしましたが「会陰マッサージで保湿されて肌が柔らかい状態だったから、治りが早かったんだね」と褒められました。やはりデリケートゾーンケアが、産後の回復を早めるなと実感。産後にデリケートゾーンを洗うのは怖いと思いますが、『I’m La Floria(アイム ラフロリア)』のソープは弱酸性で優しくつくっているのでしみません。産後ママにもおすすめですね。
私自身、出産を通じて“産後はこういう悩みがあるんだな”と知りました。産後のケアにより更年期をどう過ごせるか変わるということから、“更年期”というワードにも注目していますね。
フェムテックtv:どんなステージの女性にも寄り添うブランドとしての展開を楽しみにしています! 原さんは今後どのようなライフプランを描いていますか?
原さん:『I’m La Floria(アイム ラフロリア)』をデリケートゾーンケアアイテムブランドNo.1にする。そのことしか頭になく、40歳になるまでには実現したいと思っています。海外展開も視野に入れ、日本だけではなく世界で羽ばたくブランドにしていきたい。ゆくゆくは子どもに海外留学をさせてあげたいので、海外でも働ける基盤をつくりたいですね。
フェムテックtv:ありがとうございます! では最後に、原さんにとってのウェルビーイングな社会とは?
原さん:体や心の悩みや心配事がなく、一人一人が輝ける社会。ウェルビーイングな社会になるためのいちアイテムとして、私たち『I’m La Floria(アイム ラフロリア)』も並走していきたいです。それから自分の体の一部である性をオープンにできる社会になったらいいなと思いますね。
株式会社ツインプラネットが運営するフェムテック情報共有サイト。《毎日をイキイキと、自分らしく過ごす》ため、《自分のカラダについての“知らなかった”をなくす》ことを目的に、女性の健康に関するコンテンツを公開しています。
https://femtech.tv