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サスティナビリティ

新しい仕組みづくりや子どもたちへの授業を通じて、明るい未来をつくる大崎電気工業とローラスインターナショナルスクール

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100年以上にわたって電力計量の製造・販売を行う『大崎電気工業』。代表取締役社長の渡辺光康さんは、東京都港区にある『ローラス インターナショナルスクール オブ サイエンス初等部』(以下、ローラス)において特別授業を行いました。授業後、ローラスの日置麻実校長と、子どもたちに伝えたいこと、SDGs(持続可能な開発目標)との向き合い方などについて、語り合いました。

目次

ローラスでエネルギーの授業を終えて

渡辺光康(以下、渡辺) 本日の授業では、地球温暖化と自然災害の関係、再生可能エネルギーの種類、電気のスマートな使い方などについて、初等部1年生〜4年生の子どもたちに伝えました。既にさまざまな知識を得ていて、自分なりに関心を持っているような印象を受けました。
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日置麻実(以下、日置) これまでに就学前の年長クラスで「サステナブルなエネルギー」をテーマに太陽光や風力などの再生可能エネルギーによる発電システムのプロトタイプを作り、実際に作り出したエネルギーを使ってみる授業を行っています。教室だけでの学びでは限界があるので、今回渡辺さんのご協力頂いたように、専門家や事業家をお呼びして子どもたちに知見を直接伝える授業は、世界の問題を知り、自分たちで何ができるかを考える思考になっていくための大事な機会と捉えています。

渡辺 企業の役割として、小さくても積み重ねていける私たちにできることを考えた時、子どもたちに少しでも正しい知識を教えることが何かの役に立つはずだと思い、今回授業を行うことにしました。再生可能エネルギーを採用して二酸化炭素(CO2)を削減していくことはとても重要ですが、いきなり火力発電を止めてしまうなど、発電供給のバランスを早急に変えてしまうと電力は足りなくなります。また、電力を使う側は、その電力が再生可能エネルギーで作られたものか、その他の発電方法で供給されているのか、正確にはわからないし選択もできない。そんな現実を子どもたちに伝えて、最適な電力の組み合わせについて自分たちで考える。そんな力を育める時間になればと思って授業に臨みました。

日置 渡辺さんの本日の授業を通じて、電力需要のピーク時に合わせて電気の使用を調整する話を聞いた子どもたちが、オフピーク時に使えばいいなど、自分たちのできる範囲での解決策を思いつくことが非常に大事だと思っています。例えばですが、アマゾンでの森林破壊を止めなさいと言われてもどうして良いか分からないけれど、できるところから実行して、それができたら次のもう一段高い段階でできることを考えて実行するという発想になってくる。このような思考を身につける大変有意義な時間でした。

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電力計量の製造・販売会社としてできるエネルギーの在り方の提案

渡辺 弊社は電気の使用量を測るメーターを製造・販売している会社で、以前はアナログ式メーターを扱い、検針員が使用量を確認していました。しかし、この7、8年の間でデジタル式のスマートメーターに置き換わり、これには通信機能が付いているので、災害時にどこが停電しているかなど電力会社が各所の使用状況を把握できるようになりました。スマートメーターによって、誰がどこでどれだけ電気を使っているか把握できるようになり、電気の供給も変わってくると思います。これまでのように節電して電力需要のピークを下げるだけでなく、電力の効率的な使い方も可能になり、例えば夜間は定額で電力の使い放題にするようなことも想定できます。人々が我慢せずに豊かに暮らしながら地球にもやさしい、そんな未来が実現可能になっていくと思います。
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日置 昨年度に年長クラスで、無人島に流れ着いてから脱出するまでどうするかを考えるプロジェクトを行いました。5週間をかけて、家、食べ物、水、衣服、脱出のための筏といったようにテーマを決めて、撥水効果のある素材で家を作ったり、塩水を飲み水に変える実験を行ったりしました。今自然に使っている電気や水がないとどれだけ大変かを体感すると同時に、論理的・構造的に思考するクリティカルシンキングを身につける内容で、世界がものすごいスピードで変わっていく時代に生き抜く力になると思っています。

渡辺 授業の最後にあった質問の時間で「私たちは将来電気を使い続けるのか」という問いが子どもたちから出たように、物事の根本から問い直す視点が持てる子どもたちを見ると、豊かな未来の可能性を感じますね。いろいろな思想や社会での立場に関係なく、子どもたちに基礎情報を伝えて、実験をはじめとする科学を軸に自分なりの答えを導く。自宅に固定電話を置かなくなった今、スマートメーターの通信機能が家とつながる社会インフラへと変わりつつあります。その新しい社会インフラへ、セキュリティサービスや地域・コミュニティの見守り機能なども入れることも可能になってくる。どんなプラットフォームを作れるか、子どもたちに聞いてみるとおもしろいことが出てきそうですね。

問題解決能力をつける教育を

日置 世界がすさまじい勢いで変化している今、例えばいい学校に入っていい会社に勤めることが成功の方程式ではなくなり、自分の頭で考えることが一番重要なことだと思っています。ローラスでは、STEM教育(ステム/ Science, Technology, Engineering and Mathematicsの総称)に力を入れ、科学、技術、工学、数学を横断的に学びながら自身の考えと判断力を持つ人材の育成に努めています。そして、この教育の中心にあるのがエンジニアリング・デザイン・プロセスで、問題解決力、情報分析力、創造力、プレゼンテーション能力の向上を図ろうとしているため、授業の始まりは問題提起から入ることが多いですね。

渡辺 本日の授業でも自分の意見をしっかり発表し、また他の生徒の発言に対しても真剣に耳を傾けている子どもたちの姿に感心しました。私自身もアメリカの大学院で学んだ経験がありますが、日本人は自身の意見を発表するのが苦手であるように思えます。小さな頃からインターナショナルスクールで、自身の考えや導き出した結論を説明できる力をつけることができたら素晴らしいですね。

日置 日本では間違えてはいけない、失敗してはいけない空気がありますが、STEM教育の場合は間違うのが重要というか、何度間違えても良く、最終的に自分の正解にたどり着けばいいという方針です。これに加えてインターナショナルスクールの良いところは多様性があることで、いろいろな国の子どもたちがどんどん手を挙げて自分の思ったことは間違っていても発表していく環境にあること。他の人の意見が自分の意見が違っていても変な空気になったりしないので、多様性も重要だと思っています。

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企業と学校でSDGsとどう向き合うか

日置 先にお伝えしたように、STEM教育では問題提起から物事がスタートするので、例えば「海のプラスチックごみをどうやって減らせるのだろうか」と言ったテーマを掲げて、自然とSDGsと向き合うことがローラスでは多くなっています。現在5年生は、フィリピンのスラム街の貧困問題をどう解決するかに取り組み、そこで支援活動を行うシスターに話を聞いた後、iPadケースを子どもたち自身がデザインしてスラム街で暮らす人々に作ってもらい、それを日本で販売するプロジェクトを手掛けています。今、プロトタイプが出来上がったところです。

渡辺 日置さんが話された教育内容は、SDGsの理想的な在り方ですね。弊社は電力計量の製造・販売を行う企業なので自然とエネルギー問題に関わり、SDGsに取り組む立場にあります。しかし、SDGsを目標にして杓子定規な取り組みをするのではなく、自分たちの会社の役割を社会的に、または道徳的に考えて行動していった先に、改めて自分たちの行動を見つめ直してみたらSDGsと合致していたというのが理想的ですね。社員一人ひとりがSDGsに取り組む感覚を自然と身につけていれば、会社の方向性や行動も自然とSDGsがにじみ出たものになる。だから、本日のように授業を受けてエネルギーに対するモラルや高い意識を身につけた子どもたちが成長して大人になることで、自然とSDGsに取り組む状況が生まれるのかもしれませんね。

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日置 今年の入学式でも子どもたちに、問題を解決することは子どもだからできないということではないと伝えました。例えば、数年前にスウェーデンの環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんが国連気候行動サミットで演説したことで世界を変えた例や、アフリカのある国で高校生でしたけれども干ばつから人々を救おうと風力発電で井戸から水を汲み上げるプロジェクトを行った例があり、子どもでも小さい問題から少しずつ解決していくことの大切さを話しました。自分なりの答えにたどり着くためには、エンジニアリング・デザイン・プロセスが役立つので、これからも教育の中でしっかりと取り組んでいきたいと思っています。

渡辺 教育を科学で行うことは、子どもにとっても大事なことだと思います。もし、間違った結果を導いてしまっても、途中のプロセスを振り返って間違った原因を突き止めることで、自身の中でこれから2度と間違えないようになる。子どもたちに何かを一方的に教えるのではなくて、どうするべきか自分たちで結論を出せる力をつけるために、基礎情報を伝えたり、自分たちで実験して検証させたりすることが大事になるということがよく理解できました。

日置 改めて本日の授業を通じて、外部のゲストスピーカーをお呼びして、世界にある問題を知ること、自分たちには何ができるのかを考えることはとても貴重な機会であると認識しました。またぜひ、渡辺さんや『大崎電気工業』の社員の方々に授業を行っていただけると大変うれしいです。本日はありがとうございました。

渡辺 私たちも自分たちの小さな一歩を積み重ねて行けばやがて大きな力になることを信じ、授業を通して社会で起きていることを包み隠さずに伝えることで、子どもたちが自分たちで未来を考える一助になればと思っています。こちらこそありがとうございました。

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