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仕事・働き方

特集 | 未来をつくるキーパーソンに聞く 指出総編集長インタビュー

これからの農業と地域のあり方を語る。農業の未来を担うのは、「アグリローカルヒーロー」だ!

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新たな世代が継承する時期を迎えている日本の農業界。若い新規就農者の挑戦によって、農業と地域のあり方も変わりつつあります。その変化を加速させるために必要なのは何か? そして、誰か?法政大学教授の図司直也さんと弊誌編集長・指出が語り合いました!

目次

「手前」の若者を担い手に。

指出一正(以下、指出) 高齢化と後継者不足が叫ばれて久しい農業。現況はいかがでしょう?

図司直也教授(以下、図司) 農家の担い手として最も多かったのが昭和1ケタ世代。90歳近くになっているため、農業人口が急減しています。一方で、非農家出身ながら農村に飛び込み、農業に挑戦する若者も増えています。

指出 農業も事業承継を考えなければいけない時期を迎えたと?

図司 そうですね。代々受け継いだ農地を血縁のない者に譲ることに抵抗を感じる農家は多く、長男に継がせる傾向は根強く残っていますが、徐々にバトンのつなぎ方は変わってきて、それが「農業の質的変化」を生んでいます。

図司さんの近著『就村からなりわい就農へ』(JCA研究ブックレット)
図司さんの近著『就村からなりわい就農へ』(JCA研究ブックレット)

指出 法人化して地域の農業を持続させようという動きも見られます。そこに移住者がコミットしたり。

図司 農業法人で新規就農する若者も増えてきましたが、なかにはサラリーマン的に就職したものの、農業の特徴をよく理解しないままに、仕事に愛着を持てずに辞めるケースも少なくありません。農業は技術や経験が大事ですから、人材育成も重要です。

指出 都会の若者に農業を知るきっかけや場を提供することも必要ですね。

図司 はい。就農の窓口として『全国新規就農相談センター』がありますが、相談件数は横バイ状態です。一方、NPO『ふるさと回帰支援センター』への移住相談件数は急増しています。このギャップが生まれる理由は、全国新規就農相談センターには「農業をする」と決めてから訪れる人がほとんどだから。でも実は、その「手前」にいる若者も多いと思います。例えば、農業とは別の目的で農村に入った地域おこし協力隊隊員が、そこで生活するうちに、近所のおばさんから庭の畑で採れた野菜をお裾分けしてもらったり、耕作放棄地の問題を知ったりして、「おじいさんの田植えを手伝おうかな」という気持ちになり、農業に関わり始める。そんなふうに、地域に入ってから農業に関心を持つ隊員も多いのです。それを「就村から就農へ」と呼んで研究していますが、農業に関心を持つ「手前」の若者を農業の担い手、さらには農村の担い手に育てることで、少しずつギャップは埋められると考えています。

農業や地域関連の本にあふれる、法政大学多摩キャンパスの図司さんの研究室。
農業や地域関連の本にあふれる、法政大学多摩キャンパスの図司さんの研究室。

カッコいい農業のために。

指出 先ほど、「農業の質的変化」とおっしゃいましたが、具体的にはどういうことでしょうか?

図司 例えば、都会から来た若者は、地域で当たり前に栽培されている作物だけでなく、都会で売れそうな作物をつくり、インターネットや自分のネットワークで直販するなど、農業のかたちや集落の雰囲気を変える力を持っています。それも質的変化です。

指出 地域のことを思いながら、やりたい農業に挑戦し、質的変化を起こしている若者たちを「アグリローカルヒーロー」と呼んでいます。戦隊ものではありませんよ(笑)。10年ほど前から、都会で活躍するクリエイターが「農業はカッコいい」と発信するようになり、農業のイメージに変化を起こしました。こだわりを持って食べ物を生産する同世代の若者に、同じクリエイターとして共感を覚えたのでしょう。

図司 「農業はカッコいい」というトレンドが続くためにも、地域側にはアグリローカルヒーローを受け止める土壌づくりが必要です。安定した稼ぎを得られる作物から始め、技術的にも経営的にも自走できるようになったら、自分のやりたい作物に挑戦する。そんな新規就農者の独り立ちを、行政とJAがバックアップする地域も増えています。専業か兼業かだけでなく、稼ぎ方ももっと複合的であっていいかも。

指出 農業は地域を知る仕事でもあります。地域のよさを引き継ぐような複業を持ちながら、楽しくて稼げる未来の日本の農業に挑戦してほしいですね。

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