スキューバダイビングの名所として名高い、伊豆半島西部の「大瀬崎」(静岡県沼津市)。
東京から約160km南に位置し、車で約2時間半で行ける距離で、アクセスもしやすいスポットだ。しかし、大瀬崎の名所は何も「スキューバダイビング」のみとは限らない。
この場所には、地元”ぬまづの100選”に選ばれた「神池」と呼ばれる神秘的な池や、駿河湾一帯を見守る神が祀られた「大瀬神社」、樹齢千年以上の老木の群生からなる「ビャクシン樹林」など見どころ満載の観光スポットでもあるのだ。
ここでは、決して「検索」では辿り着けない、神秘と謎に包まれた大瀬崎の神池とその一帯を「探索」して行く。
駿河湾に突き出すのは、大自然がくれた”イヤリング”
ここは静岡県沼津市。伊豆半島北西部から駿河湾へ突き出す芸術的な岬「大瀬崎」は、もちろん自然の産物だ。これは海岸沿いの海流から運ばれた岩や土砂が帯状にたまってできる砂嘴(さし)という地形だそうで、先端には「神池」と呼ばれる「神秘に包まれた池」がある。
上から俯瞰してみてみると、まるで、女性の耳たぶにぶら下がる「イヤリング」のように見える。ビャクシン樹林と海に囲まれたこの池には、水源がないにも関わらず、鯉や鯰などの”淡水魚”が住むといい、なぜ淡水が湧くのか、その理由は未だに解明されていないのだという。
ダイビングのメッカ「大瀬崎」の向こうに富士山が待っていた
沼津駅から車を走らせること約45分。大瀬駐車場に車を留め、神池のある大瀬神社へ向かう途中に「大瀬海水浴場」がある。
大瀬崎の海は、天気が良ければ海越しに富士山を見ることのできる、日本を代表するダイビングのメッカ。この周辺には、9箇所のダイビングスポットがあり、1年を通じて多くのダイバーが訪れている場所でもある。中には、マンボウやマンタなどの大型海水魚を水中から間近で見られるスポットもあるというから驚きだ。
また、大瀬海水浴場は環境省が選ぶ「快水浴場百選」にも認定されるほど、日本でも指折りの水が綺麗な海水浴場。海中生物は約700種類生息していると言われていて、毎年多くの観光客が訪れる。
大瀬崎は、ダイビングも海水浴も富士山も楽しめる、この上なく贅沢な場所なのだ。
大瀬神社-それは、駿河湾と漁民を守る「海の神」
大瀬海水浴場から歩くこと約10分のところにあるのが、大瀬神社(おせじんじゃ)。
この場所は、古くから駿河湾の漁民たちが「海の守護神」として信仰している神社。漁民の暮らしが描かれた絵馬や漁船の模型などが奉納されているという。
また、大瀬神社では毎年4月4日に「大瀬まつり」が催される。これは、駿河湾の漁民が大漁と航海の安全を願って参拝するもので、各地区から「女装」した青年達を乗せ、踊り船に乗ってやってくるという。
大瀬神社は「海の神」として、駿河湾とその漁民たちを見守っているのだ。
伊豆の七不思議-未だ解明されていない神秘の池「神池」
大瀬神社の境内をくぐり、入り口にて、拝観料100円を支払う。ここでは、神池に潜むコイの餌を買うこともできる。
入り口を進むと、境内の案内図がある。
神池に通ずる道は、木々が生い茂っている。少しひんやりしたちょっと異質な空間から、神聖な雰囲気を感じ取ることができる。
ここ神池は、「伊豆七不思議」の一つ。その所以たるは、海からほんの僅かな距離しかないにも関わらず、淡水(真水)の池であり、鯉や鯰などの淡水魚が多数生息していること。
神秘的な淡水池。辺りはビャクシンの樹林に包まれ、海からの距離が最も近い所で20mほどしかないという。淡水とは言うものの、濃い緑色のような印象だ。
直径は約100mと思いの外広く、淡水魚たちも伸び伸びと遊泳している。
海からさほど離れていないにも関わらず、「海水が含まれてない」というのは驚かざるを得ない。僅か先の距離にある海が荒れ、その海水が吹き込んできても神池の水に変化はないという。
しかし神池は、「神域である」という考えから、詳しい水質調査が行われたことがなく、その理由も解明されていない。
そして、「なぜ、この場所に淡水池が誕生したのか」も謎のままと、「神秘の池」でもあるのだ。
「樹齢千年」を超える老木の群衆-ビャクシン樹林
大瀬崎一帯は、樹齢千年以上と言われる、約百三十本のビャクシンに覆われ、この老木たちが神池を囲んでいる。
ビャクシンとは、ヒノキ科の針葉樹の一種で、日本では、本州、四国、九州で見られる常緑針葉高木。大瀬崎のような海岸の岩場などに生育し、大木へと成長すると、幹がねじれるように伸びていくのが特徴だ。
大瀬崎のビャクシンは自然発生のまま群生していると言われ、この一帯のように群生している樹林を観られる場所は全国的にも数少なく、国からは天然記念物に指定(1932年)されている。
ビャクシン樹林のなかには、大瀬神社のご神木も。
樹林を抜けると、駿河湾と青空に再会した。
都会の喧噪とは無縁の穏やかさを感じながら、大瀬崎の散歩道を歩く。この眺めは格別だ。
神池とは異なる、駿河湾の波が打ち寄せている。
後ろ髪を引かれる想いで、神池を後にする。そして、振り返ると釣り人がいた。
ここでは、釣り人も、この景色の一部になる。
これほど澄んだ空も、神池が呼んでくれたんだろうか。
また来るね。と心の中で、囁いた。
“海の神様”に見守られた駿河湾の新鮮な魚を味わう-「地魚料理やまや」
「海の神様」が見守る地では、いったいどんな魚を愉しめるのだろうか。沼津の地魚料理を求めて、大瀬崎から沼津駅方面へ車を走らせること約20分。ここに、4代続く沼津の名店「地魚料理やまや」がある。
聞けば、もとは「旅館」兼「料亭」として経営したお店を、昨年の9月に改装し、「地魚料理」一本で勝負することを決めたという。
毎年、大瀬神社でのお参りを欠かさないと言い、店内には、「御神酒」が大事に飾られていることからも、大瀬神社がこの地の漁民に無くてはならない存在であることがよく分かる。
「地魚料理やまや」の一押しは、「金目鯛の炙り漬け丼」(1650円、税込)。
駿河湾でとれる新鮮な金目鯛を使用し、上にはとろけるような卵をのせた、鮮度抜群のガッツリ飯は、地元のテレビ番組でも幾度となく、紹介されているほど。
金目鯛もギュッと身が引き締まっていて、肉厚。食べ応えのある一品だ。
地元では知る人ぞ知る「地魚料理やまや」は、東京から大瀬崎へ観光へ行った帰りに訪れることも多いとのこと。
この炙り丼を味わうためだけに、また訪れたいと思うほどやみつきになる一品。ぜひとも、大瀬崎に来たときに、訪れてみて欲しい名店だ。
店名:地魚料理 やまや
住所:静岡県沼津市内浦三津199-4
営業時間:11:00~19:30
定休日:木曜日
※季節により変動あり。
大瀬崎のアクセス情報
住所: 静岡県沼津市西浦江梨
アクセス:〈車でお越しの方〉東名高速道路沼津I.Cより国道414号線経由
414号線から口野(狩野川放水路)の交差点を右折し、県道17号線へ。(口野から大瀬まで約40分)平常時約1時間、33km
○東京~沼津I.C(1時間20分)~大瀬崎(50分)
○名古屋~沼津I.C(2時間30分)~大瀬崎(50分)
□関東方面から車でお越しの方
首都高→三ツ沢→横浜新道→南西湘→湘南バイパスまたは東名→厚木I.C→小田原・厚木道路→小田原→箱根新道→国道1号国道136号→中伊豆バイパス→県道17号→大瀬崎
※こちらからですと抜け道も多く、料金も安上がりです。
〈新幹線、東海道本線・バスご利用の場合〉
三島駅より東海道本線に乗り換え、沼津駅へ。沼津駅南口から直通バス(1日2往復・沼津発6:41・16:25 大瀬発8:20・18:02)江梨行きのバスが1日数本出ていますので、大瀬行きに乗れない場合、江梨行きをご利用ください。
JR沼津駅・三島駅、伊豆箱根鉄道伊豆長岡駅、江梨停留所などから送迎してくれる宿やサービスもあるのでご確認下さい。
○東京~三島(1時間)~沼津(7分)~大瀬崎(1時間)
○名古屋~三島(1時間45分)~沼津(7分)~大瀬崎(1時間)
〈沼津港より船でお越しの方〉※夏期のみ
夏季時期は沼津港より船が出ています。沼津駅から沼津港行き(約10分)のバスに乗り、大瀬行きの定期船(千鳥丸)をご利用下さい。約30分(千鳥観光汽船 TEL.055-943-2221)
URL:http://www.city.numazu.shizuoka.jp/kankou/asobu/osezaki/