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特集 | ソトコト流 東京宝島 離島歩きガイド

ソトコト流「東京宝島 離島歩きガイド」【part3_御蔵島・青ヶ島編】

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おいしいものを食べたり、きれいな風景を眺めたり、かわいい土産物を見つけたり……。そんな“観光”はきっと楽しい。でも、小誌読者なら、さらに一歩踏み込んで、その土地の本当の魅力、価値と出合う旅をしたいはず。
ソトコト流「東京宝島 離島歩きガイド」のはじまりです! part3では、御蔵島と青ヶ島を紹介します。

御蔵島

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面積 約21平方キロメートル
周囲 約16キロメートル
人口 約320人
▶御蔵島へのアクセス 東京・竹芝客船ターミナルより 大型客船:往路7時間25分/復路7時間10分 羽田空港より 飛行機+ヘリ(八丈島経由)もしくは、調布空港より飛行機+ヘリ(大島・三宅島経由)も可能
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春から夏にかけて、御蔵島は「イルカと泳げる島」として大いに賑わう。が、ともすると島はリゾート的な雰囲気となり、実は御蔵島本来のそれとはおよそ異なる。

御蔵島の本当の姿。そのヒントは山であり森にある。急峻な崖が島の周囲を守るさまは、まるで海上に浮かぶ山塊のよう。年間降水量は約3000ミリにも及ぶ“雨の島”であり、大半は深い森に覆われ、樹齢1000年を超えるスダジイなどの巨木が点在。温帯の植物が自生する一方で、山の中には本州であったら1500メートル級の山々で見かける植物が同居しているのもおもしろい。

豊かな森を背景に、もともと島では林業が盛んであった。特産は黄楊と桑。特に御蔵島の黄楊材は良質だと評判で、戦前には現在の貨幣価値に換算するとおよそ3億円の売り上げがあったとも。そんな御蔵島の森は秋冬こそおすすめだ。人が少ないこと、加えてほどよい湿気となり歩きやすくなるからだ(夏場は湿度100パーセントにも!)。誰もいない森閑とした山道を行く時間こそ、御蔵島の極上の贅沢だと感じるはず。夏よりも落ちついた集落で、のんびりと滞在していたら島人と交流できるかもしれない。

海・山ガイド|柳瀬美緒さん「山の楽しさも伝えたい!」

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「荒天をも楽しめる人に向いてる島ですよ」と柳瀬さん。
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柳瀬さんおすすめの長滝山コースからの眺望。
軽く登っただけでしっかりとした山を感じられる風景に出合えます。そこが御蔵のいいところ。散策するコースは8つほどあり、季節で見られる植物や風景が違うので、何度歩いても楽しいです。コースは植物や散策道の保全を目的として認定ガイドの同行が必須なので、美しい自然が守られていますよ。昼は海で捕食し、夜になると森の中に掘った巣穴へと帰る渡り鳥・オオミズナギドリは、御蔵島の海と山をつないでいる存在です。

『ゲストハウス MITOMI』責任者|井上愛子さん「ゆったりとした時間を楽しんで。」

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『MITOMI』オーナーの三喜さんと愛子さん。宿前にある、海と夕日を望める場所にて。
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白を基調とした清潔感漂う客室。
私自身、約20年前にイルカを目的に御蔵島に遊びに来たのが最初です。縁があって島で働くようになり、そのうちに主人・三喜と出会い、2012年にゲストハウス『MITOMI』をオープンしました。3部屋しかない小さい宿なので、自分の家のように、ゆっくりしてもらえるのが魅力かなと思います。島にはコンビニはないし、足りないものだらけだし、低気圧が近づくとすぐに旅行はキャンセルになるけれど、その“不便さ”を楽しみにいらしてください(笑)。

『丸二西川商店』店主|西川登美江さん「思いどおりにはいかない島です(笑)。」

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店を切り盛りする女性陣。左から西川登美江さん、黒田浩子さん、西川弥生さん。
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予約制で弁当の製造販売も。
夏の観光は、宿が早々に満室になるほど、めいっぱい(笑)。それでも……と思ってくださるのであれば、御蔵のことをできるだけ調べてから入ってきてほしいです。すると海だけでない島の姿や、欲しいものが必ず手に入るとは限らないこと、島はあくまでも暮らしの場であることなど、ここが一般的な観光地とはまるで違うことに気づくはず。自然しかない島だけど、自分で楽しみ方を見つけ、考えられる人には合ってるんじゃないかなと思います。

青ヶ島

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面積 約6平方キロメートル
周囲 約9キロメートル
人口 約160人
▶青ヶ島へのアクセス 八丈島より 大型客船:3時間 ヘリ:20分 羽田空港より 飛行機+ヘリ(八丈島経由)も可能
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伊豆諸島の中でも島の周囲は特に潮目がきつく、船の就航率が低い。ゆえにヘリコプターでの渡島がおすすめではあるのだが、席数が9席しかなく、朝の1便しかないため1か月前から開始される予約は超激戦。宿の部屋数も少ないから、おのずと島内に入ることができる人数はかなり限定される。ここ青ヶ島は、そんなところ。

島は「二重式カルデラ火山」という珍しい構造。島の中央にある古い火口・丸山を中心に、周囲は森に囲まれ、さらに島全体は断崖絶壁によって守られているかのように見える。歴史をひもとけば、1785年の噴火で一度は全島避難を余儀なくされたという。50年後にようやく本格的な復興となり、島民は島へと帰ったそうだが、途中幾度となく、島へ渡ろうと努力し、失われた命も多数あったそうだ。島の偉容から、昨今、海外のウェブサイトでもとり上げられる機会も多いが、島の先人にとっては、そうまでして帰りたかった故郷であるという事実も理解しておきたい。島を想うDNAは今も。暮らしを支える商店、来島者を迎える宿、伝統の「あおちゅう・青酎」を守る杜氏などなど。島人と触れ合えば、孤島の暮らしの厳しさとともに、豊かさを実感できるだろう。

『十一屋酒店』店員|荒井暢子さん「島を知ってもらう入り口になれば。」

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「青ヶ島で唯一の商店なので、気軽にお立ち寄りくださいね」と荒井暢子さん。
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島内産素材などを使った「月とオリーブ」のスイーツも販売。
日用品や生鮮食品、お酒やお土産に加えて、レンタカーの取り扱いも行っていますので、島外から来る方の、青ヶ島の窓口という役割も担えたらと思っています。なにかを目的に来島されるのもいいですが、ゆったりのんびりしてみようかなって島を訪れるのもおすすめですよ。そして島は暮らしの場でもあるので、できたら島民の普段の生活に触れてほしい。基本的に、島の方は話したい方が多いので、挨拶したりすると、会話が始まったりするかもしれません。

『民宿 かいゆう丸』店主|佐々木富士子さん「お弁当のみも受け付けています!」

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「青ヶ島には時間に余裕のある人に来てほしい」と佐々木富士子さん。
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島の郷土料理に定評がある。自家栽培した野菜などもおいしい。
本当は30年前に始めたかったんですけど、その時は主人が乗り気じゃなくて(笑)。2020年1月にようやく民宿『かいゆう丸』をオープンできました。もともと、島の法事の料理や食堂の食事、お弁当をつくってきたので料理も楽しんでもらえると思います。私も呑んべえだから、つまみになるようなおかずが多いかもしれません(笑)。島のものを出すのは当然。宿泊される間にかならず刺身や島寿司、多様な明日葉料理を食べていただくようにしています。

『青ヶ島酒造』杜氏|奥山 晃さん「予約制で試飲もできますよ。」

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奥山晃さん。杜氏のほか、建設関係や育牛など、さまざまな仕事をこなす。
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予約制の試飲では十数種類の貴重な「あおちゅう・青酎」が飲める。
青ヶ島の蒸留酒が「あおちゅう・青酎」です。昔は各家でつくっていた家庭の味。現在、島には杜氏が10人いて、多くが島の暮らしを担う仕事の傍ら、焼酎づくりをしています。「あおちゅう・青酎」のおもしろいのは同じ蔵と原料を使っているのに、毎年味が違うこと。理由は麹も酵母も自然のものを使っているから。空気中の菌が降りてくるのを待つという江戸時代から変わらない方法だからです。菌の増え方によって味が変わるので、逆に同じ味にできません。
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photographs by Yuki Inui & Yusuke Abe text by Yuki Inui & Mari Kubota illustrations by Hitohisa Isogai
記事は雑誌ソトコト2022年3月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。
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