「人間は何歳まで生きることができるのか」という好奇心を満たす結論は得られていないとしても、1997年に122歳で亡くなったフランス人女性のジャンヌ・カルマンさんの長生き世界記録はしばしばベンチマークにされる。サーチュインと呼ばれる長寿遺伝子を活性化するために摂取カロリーを減らす、DNAを傷つけないために紫外線や喫煙を避ける、抗酸化成分をたくさんとる、適度な運動やストレス発散。自分の寿命の予測はできないとしても、努力で老化を防ぐための研究は活発である。不老不死という究極を模索する科学者もいる。
「何歳まで生きたい?」という質問を交わし合った経験は、きっとほとんどの人にあるだろう。
「100歳まで生きてみたい」「平均寿命が目標」「健康だったら何歳まででも」「太く短くがいい」。寿命に関しては、個人の価値観によるところが大きく、「不老不死なんて地獄だ」という考え方だってある。
本人の希望はともかく、先進国の長寿化は進み、その中でも日本はトップレベルの速さ。平均寿命は最高を更新し続ける一方、年金の先行き不安や高齢になって生活費を稼ぐ仕事の確保が困難になることを危ぶみ、“長生きリスク”という皮肉な見方もされる。
自分が慣れ親しんだもの以外、とりわけ新しい現象にはついていけない。「自分はおじさんだから」と自嘲まじりにお茶を濁してしまう。
テクノロジーが表裏をひっくり返すほど日常を劇的に変えるサイクルに入っているところに、長寿傾向が輪をかける。テクノロジーがもたらす進化のスピードに振り落とされそうになり、脳が長寿についていけない。そこで脳を成長させるマラソンをリタイアしてしまうと、社会の進化と寿命に脳が著しく置き去りにされる。
幸いなことに、脳は長期的に鍛えられることを示す研究は盛んだ。年齢とともに脳を構成する神経細胞は減り続けると考えられていたが、大人になってからも神経新生という新たな神経細胞が生まれ、人間の行動によってコントロールが可能だということもわかってきた。生まれた神経細胞は使ってあげないとすぐに死んでしまうので、使っているかいないかで大きな差が生じる。また、頭脳の司令塔である前頭葉の“体力”が落ちると「面倒くさい」「楽をしたい」と感じるようになる。一度坂を転がり始めると、また上るのは大変だ。前頭葉を鍛え続け、未来に向けて意欲的に創造、思考する力を磨くことを止めない。
前頭葉は、新しいことに出合い、初めてのことに挑戦する時に刺激を受けるので、実はテクノロジーがもたらす絶え間ない変化は好機なのだ。気後れしたり、自分の可能性に蓋をしている場合ではない。生き様が反映されるのが脳だから、意識して鍛え、脳の極限を超えていこう。
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