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連載 | とおくの、ちかく。 北海道・東京・福岡

わたしのプレイリスト

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「ただ住むだけじゃもったいない」「自分たちの住むまちをおもしろがる」そんな掛け声で集まったローカルを思う存分楽しみたい3人(北海道より畠田大詩・東京より竹中あゆみ・福岡より中村紀世志)の連載。8回目は、偏愛が詰まったリトルプレスについて東京からお届けします。

目次

いざ、愛すべきリトルプレスの旅へ。

 -今回の書き手:竹中あゆみ
駅の近くや空港にある観光案内所には、そのまちの概要のような「map付き冊子」を筆頭に、食とアクティビティに特化した「クーポン付きのカタログ」、1件のお店の魅力がグッと閉じ込めてある「紹介パンフレット」などが所狭しと並んでいる。「派手さはないけれど実直さがあります!」と言っているかのようなリトルプレスたちだ。
一方で、まちの中のカフェやゲストハウス、コワーキングスペース、本屋などでは少しラインナップが変わり、「近隣のお散歩map」やそのまちの日常・文化を伝える「読み物冊子」、商店街の旬を伝える「〇〇商店街瓦版」など、誰かのより私的なリトルプレスがお店の片隅にコソッと置いてある印象。偏愛を凝縮させた尖っているものが多い。
大きい視点でまちを俯瞰してみるとその輪郭がうっすら見えてくるし、ある一点の視点で見つめてみると、こんな表情もあるんだなとまちの解像度がじわりじわりと上がってくる。どちらも大切な視点で、すべて誰かの編集のその先にあるもの。作者のあふれんばかりの愛を知りに、はじめてのまちに訪れる時には特に、リトルプレスコーナーを探し注視するようにしている。また、たくさんのリトルプレスを抱えて宿に帰り、気になるところに目印をつけて、さらに人伝に聞いたおすすめや実際に行ってみて良かったところを追記して、自分だけのmapを作っていくのが私のルーティーンだ。「どんな人がが作ったんだろう」そんなことをイメージして落とし込んでいくこの時間が本当に楽しい。
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ラックに入っている場合もあれば、机に並べられている場合も。入り口付近かレジ周り、お手洗いエリアの近くに置いてあることが多い。
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行きたいところ、行ったところをgooglemapにコツコツと記録している。
墨田区への引っ越しと、遠出が制限されたことをきっかけに、今までやってこなかった足元の「リトルプレス探し」と「map化」もやってみることに。今回は探し歩くなかで見つけた、いくつかのリトルプレスをぜひ紹介したい。
まずは、区政情報を伝える『すみだ区報』に、年に4回発行されている「私たちの街をもっと好きになる情報タブロイド誌『すみだノート』」。大きい視点でまちを見つめるのに役に立つこの2つは、ベースとして目を通しておきたいものだ。「暮らす人」として知っておくべき情報に、文化や歴史、オープンしたばかりのお店の情報、店主のインタビューなど広くこのまちの今を知ることができる。また、『すみだ区報』はWEBでPDFを読みことができ、『すみだノート』にはWEB版もあるので、取りに行けない時にとてもありがたい!
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無料のものから有料のものまで。instagramやnoteなどのSNSでも発信していることが多いので、合わせて読むのがおすすめ。
そして小さな視点では、墨田区の産業やものづくりを発信している「すみだ 3M すみだものづくり探訪ガイドマップ」に(現在は「すみだ 3M ものづくりのひみつ」というマップに変わった)、今年初めに購入した「すみだエリアの魅力を伝える袋とじzine『シューミーンダック』」、今月手に入れたばかりの「まちの楽しみ方や、不動産で遊ぶ人を紹介する冊子『PLAYLIST』」などがある。すべて個性的な視点から編集され、まちの見え方が変わるものたちばかりだ。
発行側の意図や思い、視点を知ると何倍にもその冊子のおもしろさがふくらむので(ぜひ周りに発行者がいたら聞いてみて!)、以前から知り合いだった『PLAYLIST』の製作者の一人、墨田区で賃貸管理、リノベーション、場づくり、まちづくりをしている不動産会社『キュピ』の齊藤浩一郎さんに制作の背景を伺ってみた。
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4部構成で作られているという『PLAYLIST』の1コーナー「不動産で遊ぶ大人たち」。不動産で遊ぶ……!?
「『PLAYLIST』は、遊びの場所のリストであり、まるで自分の好きな音楽の再生リスト(プレイリスト)のように、ぼくたちがおもしろい、伝えたいと思った場所をシェアできる物として一冊にまとめた冊子なんです。不動産の会社を起こして10年が経ち、自分たちの活動を目に見える形でまとめて発信していきたいという思いもありますが、それ以上に不動産屋だからこそ見えるまちの「場」のおもしろさや、このまちの素敵な人を紹介することで、『僕もこんなお店や取り組みをやってみたい』『わたしもやれるかもしれない』と思える人が一人でも増えたらいいと思い、作ることにしました。第一号となる今回は、1000部ほど刷っていて、現在墨田区内の7店舗に置いてもらっています。少しずつ設置場所を増やしていきたいですし、第二号も近いうちに作れたらと思っていますよ!」
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『キュピ』の齊藤浩一郎さん。仕事内容は一言で言うと「不動産を使って遊ぶ人を増やすこと」とのこと。いつもおもしろそうなプロジェクトが多数動いている。
『PLAYLIST』には新しくできた不動産の紹介のほかに、不動産で遊んでいるオーナーのインタビューや、変わった物件だが工夫次第で素敵なお店に生まれ変わったお店の紹介など、不動産屋視点で編集された、楽しんでいる大人たちが紹介されている。齊藤さんに話を伺った時に訪れたお店『三/十』も、いつか『PLAYLIST』に掲載したいと思っている場所の一つだそうだ。
「昼はサンドイッチカフェ、夜はおでんバー」という業態がすでに興味を惹くし、お店は約築100年の建物をリノベーションした物件であり、2階はオーナーである建築設計事務所のオフィスフロアになっているなど気になるポイントがたくさんある。さらに初対面にも関わらず素敵な笑顔で出迎えてくれた店長の福田愛子さん(通称:ふくちゃん)に、もう一撃でファンになってしまった。確かにここはもっと通って話を聴きたくなるお店だ。
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『三/十』の店長、福田愛子さん。今年5月にオープンしたばかりだが、すでに常連さんの姿も。(現在夜はアルコールなしで定食の提供を行っているとのこと。次は夜に行きたい!)
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ハードパンをベースにしっかりした味付けの『三/ 十』のバゲットサンド。
今更ながら、自分が暮らす場所だからこそもっともっと「知るアクション」を起こさなければ! と話を終えて探索心に火がついた。そんな気持ちでいるだけで途端に「こんなところに小唄教室が」「めだかの稚魚くれるの!?」「ラジオ体操会があったなんて」など普段目につかない場所が見えてくるから不思議。わたしの東京のプレイリストが少しずつ色鮮やかになっていく。
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まちを観察しようと思うだけで、見えていなかったものの多さに気が付く。運動がてらに歩く際、ぜひまちを観察してみてほしい。
photographs & text by Ayumi Takenaka
竹中あゆみ/1986年大阪府生まれ。雑誌『PHaT PHOTO』『Have a nice PHOTO!』の編集・企画を経て、2016年より『ソトコト』編集部に在籍。香川県小豆島の『小豆島カメラ』など、写真で地域を発信するグループの立ち上げに携わる。東京を拠点に取材をとおしてさまざまな地域の今を発信しながら、ライフワークとして香川県小豆島や愛媛県忽那諸島に通い続けている。https://www.instagram.com/aymiz/
畠田大詩/1988年京都市まれ。「写真」を軸にした出版・イベント・教室・展示等を運営する会社にて、企画や営業、雑誌・Webメディアの編集・執筆、イベント運営まで多岐に渡り経験。写真を活用した地域活性化プロジェクトの企画運営やディレクションなども担当した後、2020年4月から、地域活性化企業人として北海道東川町役場に勤務。東川スタイル課にて、ブランド推進の企画や情報発信に携わる。https://www.instagram.com/daishi1007/
中村紀世志/1975年石川県生まれ。機械メーカーの営業として勤務しつつ、フォトグラファーとしての活動を続けたのちに、2014年、結婚を機に福岡へ移り住みカメラマンとして独立。雑誌やWebメディアの取材、企業や地域のブランディングに関わる撮影を行う一方で、大牟田市動物園を勝手に応援するフリーペーパー「KEMONOTE」の制作や、家族写真の撮影イベント「ズンドコ写真館」を手掛けるなど、写真を通して地域に何を残せるかを模索しながら活動中。https://www.kiyoshimachine.com

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