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特集 | おすすめのホステル

いつまでも、いくらでも白河に戻ってこられるように。『Guest House blanc』。

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コミュニティ・カフェ『EMANON』で白河の魅力を知った高校生。大学生になり、今度は自分たちが高校生にアドバイスする番。都会から白河に戻ったとき、実家ではなくみんなで泊まって語り合える場として誕生したのが『Guest House blanc』だ。

目次

カフェからの展開で誕生したゲストハウス。

福島県白河市のJR白河駅前にある『Guest House blanc』(以下、『blanc』)。都会へ出た大学生が地元・白河へ戻ってきたときに泊まる場所を提供したいという、『未来の準備室』理事長の青砥和希さんの思いから2020年2月にオープンした。『blanc』のことを語るには、先にコミュニティ・カフェ『EMANON』について説明する必要がある。ここは『blanc』から歩いて5分ほどの旧・奥州街道沿いにあるカフェだ。高校生は何も注文しなくても、何時間でも自由に過ごしていいという「高校生びいき」のカフェ。その理由を、運営する青砥さんに尋ねると、「白河市には高校が3校ありますが大学や短大、専門学校はありません。進学する高校生は卒業したら白河を出て東京など都会へ行きます。だから、白河には大学生や若い社会人がほとんどおらず、高校生が兄・姉的な先輩と交流する機会が少ないのです」。そこで、白河出身の大学生や地域で仕事をする大人たちと日常的に交流できる場をつくることで、地元を離れる前に自分が育ったまちの魅力を知ってほしいと考えた首都大学東京(現・東京都立大学)大学院生だった青砥さんは、16年に『EMANON』をオープンさせた。

EMANON
築94年の古民家を改修した、高校生のためのコミュニティ・カフェ『EMANON』。
高校生
「高校生びいき」のカフェなので、『EMANON』では、スマートフォンで打ち合わせをする高校生もちらほら。

『EMANON』に通う高校生は、福島や白河を取材して発信する『裏庭』編集部に所属し、青砥さんや大学生、地域の大人たちとコミュニケーションを取りながら過ごした。『EMANON』を始めて3年が経つと、最初の高校生たちは大学へ進学することに。青砥さんは、「白河を巣立った彼ら、彼女らに3つの期待を抱きました」と話す。「今度は彼ら、彼女らが白河の高校生を支えてほしいという期待、大学でできた友達を白河に連れて来てほしいという期待、白河のまちが元気になるプロジェクトを立ち上げてほしいという期待です」。期待を実現するためにも、白河に戻ってきた大学生やその友達が実家ではなく賑やかに泊まれる施設があればと感じた青砥さんは、駅前にゲストハウスをつくろうと決意。それが『blanc』だ。

『blanc』のリノベーション費用はクラウドファンディングで募った。420万円以上も集まったのは、『EMANON』での活動によって地域の人との関わりを築き、信頼を深めてきた証しでもある。実際の改修費用は約1000万円で、残りは『EMANON』の利益を充て、県や市の補助金も活用した。業者に依頼しつつ、できるところは、『EMANON』育ちの大学生と地元の高校生が一緒にDIYでつくりあげた。「白河出身の大学生はもちろん、一般の旅行者も大歓迎です。『blanc』に泊まって、白河の素敵な店やユニークな人に会ってほしいです」と呼びかける。

部屋3
A~Fまで6台もあるベッドルームも白河にゆかりのある人たちと一緒につくった。部屋には窓があり、換気もできる。

やりたいことに挑戦!背中を押す『blanc』。

『blanc』のコンセプトは、「何度でも戻ってくるためのゲストハウス」だ。白河出身の大学生は、そのオープンを心待ちにしていた。

須藤初音さんは『EMANON』に通い、『裏庭』編集部の高校生ライターとしてフリーペーパー『ヨリミチ』の制作に関わっていた。取材するたびに白河が好きになり、元々は物理が好きだったが観光に興味を持ち始め、東京都立大学の観光科学科へ進学。今、観光まちづくりについて学んでいる。演劇サークルにも所属する須藤さんは高校時代に通った『白河演劇塾』の講師に指導を依頼し、白河でサークルの合宿を開こうと計画。宿泊は『blanc』と考えていた矢先、新型コロナウィルスの感染拡大で計画は中止に。「残念です。サークルの仲間に白河を見せたかった。コロナが収束したら再度、計画したいです」と心に決めている。

東京大学3年の小林友里恵さんは、「白河市で地方創生をテーマにシンポジウムを開催したときにご協力いただいた方が、白河市や福島県にゆかりのある人たちと集まりたいと、青砥さんも含めて10人ほどで『blanc』に泊まりました。一緒にご飯を食べたり、夢を語り合ったり。楽しかった」と宿泊したときのことを思い出す。

「そんなふうに大学生が白河に戻ってきて、ここに泊まってくれるのはとてもうれしいこと」と青砥さんは言う。「ただ、白河の大人全員が若い人たちに『戻ってきて』と言うかというと、そうでもないです。大人たち自身が地域を信じ切れていないところがあるから。大人たちが心の底から『戻ってこいって!』と言えるようになることが、白河のまちづくりのゴールだと僕は考えています」。

部屋
3人まで泊まれる和室。畳もきれいなものに張り替えられ、大学生や高校生が塗った壁には市内の花屋さんがつくったスワッグが飾られている。
部屋2
談話室。市民が「昔、家で使っていたもの」と寄贈してくるえたちゃぶ台を囲んで、話が弾む。

「戻ってこい」と言えるまちになるための手段の一つに『blanc』がある。若い人たちが、白河のまちや人を信じることができ、白河でやりたいことに挑戦することを青砥さんは願っている。自らも東京からUターンし、白河の魅力を多くの人に伝えようとしている。「挑戦に背中を押してくれる大人が白河にはいます。僕もその一人でありたいし、『blanc』もそんなゲストハウスでありたいと考えています。さらに、そこに泊まる白河出身の大学生やその友達、一般の旅行者もワイワイ
と交わってくれたら最高ですね」と、『blanc』の屋上からまちを見渡した。

青砥さん
「高校生は自分の興味と世の中に飛び交う情報がマッチングできない。その機会や知識を白河の先輩大学生が与える場を設けたかった」と、『blanc』の屋上で話す青砥さん。

Guest House blanc
住所/福島県白河市中町24-2 新駒ビル3階
www.guesthouse-blanc.jp

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