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移住・定住

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人、仕事、食と酒。個性と魅力あふれる3地域の可能性とは。

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東北のことを知り、東北ファンを増やすための取り組み「Fw:東北 Fan Meeting」(フォワード東北ファンミーティング)。この一環として、東北への移住をテーマにしたオンラインイベント「東北暮らし発見塾」が行われています。その第2回「東松島・⽯巻・⼥川で知る町の個性と移住⽣活」が、2023年11月9日に開催されました。

目次

移住者、地元出身者、インターン。それぞれの視点からまちを語る。

今回の「東北暮らし発見塾」は、宮城県沿岸部で隣接する3つの地域、東松島市、石巻市、女川町が舞台。東松島市は、豊かな自然と便利な都市機能を備えた暮らしやすいまち。持続可能なまちづくりに力を入れており、2018年に「SDGs未来都市」に選定されました。石巻市は水産業と水産加工業が盛んな都市で、風光明媚なところ。震災後に多くのボランティアが入ったことで新しいエネルギーが生まれ、映画館跡にビール醸造所ができたり、空き家を改修して劇場がオープンしたりと、さまざまな取り組みが行われています。そして女川町は、豊かな海、山、川に囲まれた美しい港町。「あたらしいスタートが世界一生まれる町へ。START! ONAGAWA」をスローガンに掲げ、震災による人口流出や少子高齢化が進む中、「活動人口」の創出にも積極的に取り組んでいます。

この日のイベントは、石巻市にある「IRORI 石巻」で開催され、関口雅代さん(東松島市 移住・定住コーディネーター)、松村豪太さん(一般社団法人 ISHINOMAKI2.0 代表理事)、鶴田真唯さん(NPO法人アスヘノキボウ インターン生)の3人が登壇。弊誌編集長の指出一正は、オンラインで参加しました。

左から、ファシリテーターを務めた『エイチタス』代表の原亮さん、鶴田真唯さん、松村豪太さん、関口雅代さん。

最初に登壇者がそれぞれ自己紹介を行いました。

関口さんは地域おこし協力隊として東京から東松島に移住し、現在8年目。「東松島でいちばん東松島を愛している人間だと自負しています! 素敵な“人”が自慢です」と力を込めます。「8年の間、復興が進んで日々変化する町の様子を目の当たりにし、感動しっぱなしです。“被災地”ではなく、人々がいきいきと暮らすまちとして東松島市を見てもらいたいですね」と話しました。

石巻出身の松村さんは、東日本大震災で被災し、新しい石巻をつくるため2011年6月に『ISHINOMAKI2.0』を設立しました。「僕は関口さんと逆で、石巻のことが大嫌いだったんですよ(笑)。でも、震災後にローカルの可能性に気づき、単に元に戻す“復興”ではなく、たくさんの人とつながって、新しいまちをつくりたいなと思っています」と松村さん。「動いてみると、ちゃんとできる」ということを実感しているそうです。

福岡県出身の鶴田()()さんは、大学で地域創生について学んでおり、授業の一環でNPO法人『アスヘノキボウ』でインターンを行っています。「アスヘノキボウは女川町で活動人口増加やにぎわい創出に取り組んでいますが、NPO法人がまちづくりを担うというのがめずらしいため、どういった活動をしているのか身をもって知りたいと、インターンを希望しました」と話しました。

挑戦できる土壌があり、新しいアクションが次々と生まれている。

続いては、「東松島市、石巻市、女川町の個性を知る」と題したトークセッション。3つのお題について登壇者によるトークが繰り広げられました。

一つ目のお題は「仕事と人づくり」。移住×仕事というと地域おこし協力隊がありますが、東松島市は地域おこし協力隊の定住率が高く、これまでに延べ32名の地域おこし協力隊が活動してきて、その90%以上が定着しているとのことです。「パーマカルチャーの手法で野菜をつくっていたり、児童福祉施設をつくろうとしていたり、それぞれ自分なりのミッションを持って活動しています。地域おこし協力隊だと地域に入りやすいため、まず協力隊として活動し、それから起業する人が多いですね。地域の信頼を得て漁業権を獲得した移住者もいます。東松島にはチャレンジするフィールドが多く、伸びしろがまだまだありますね」と関口さんは話します。

次に石巻について、松村さんは「漁業のイメージが強いまちですが、豊かな平野が広がっていて実は農業も盛んなのです」と強調します。「イシノマキファーム」というソーシャルファームがあったり、一流の料理人と近い距離でやり取りする農家さんがいたりと、農業でもおもしろいプレーヤーがいるそうです。また松村さんは、「震災で甚大な被害を受けた雄勝地区が、今とってもキラキラしているんですよ。最近では、『みちのく潮風トレイル』が整備されたことをきっかけに、有名なハイカーが雄勝に移住してきて、DIYでゲストハウスをつくりました。雄勝に限らず、まだ私たちが気づいていない価値がたくさん眠っています。チャンスしかないですね」と目を輝かせました。

雄勝にオープンしたハイカー民泊『m.s.s.books』。

女川町でも起業をサポートする体制が整っています。鶴田さんは「女川にはチャレンジできる環境があります。アスヘノキボウでも起業に必要な知識を学ぶ『創業本気プログラム』を実施しており、卒業生が起業したトレーラーホテルやカレー屋さんがおもしろいですね」と話します。鶴田さん自身も、お試し移住者受け入れの面談やオリエンテーション、広報業務などを行うかたわら、東北の企業が抱える課題の解決を図るゼミのようなものに参加し、勉強しているそうです。

それぞれの話を受けて、松村さんは「女川は町長も自ら動く方ですし、どんどんアクションが起こせるのがうらやましい」とコメント。また関口さんは、石巻に対して、「東松島ではできないことが全部できる。ずっと追いかけている憧れのまちです」と話しました。

3人の話を聞いていた指出は、「3地域とも、ポップなみなさんが前に出ているから、まちを訪ねやすい・まちに入りやすいですね。人と出会い、まちのことが好きになる。その経路のようなものを、みなさんがていねいにつくられてきたんだと感じました」とコメントしました。

ローカルにこそ可能性がある。だから東北がおもしろい。

二つ目のお題は「食とお酒」です。「女川では飲み屋での付き合いが大事ですね。そこで地元の人と出会いますし、町長と初めて会ったのも『ガル屋』というクラフトビール屋さんでした」と鶴田さん。石巻はというと、人口に対してスナックの数が多いのが特徴だとか。「スナックは風俗的な印象もありますが、個性的な名物ママさんがいたりして、実は入ると家庭的なんです。安い値段で長い時間楽しむことができる、コミュニケーションの場ですね。スナックは東北ならではの大事な文化で、石巻のプライド、アイデンティティともいえます」と松村さんは話します。

東松島にもスナックが多いそうです。さらに、女性たちで「バーババー」というバーイベントをやるなど、お酒を自由に楽しめる雰囲気があるとのこと。関口さんが「まちの未来を酒の肴に飲んでいる人が多い印象です」と話すと、原さんは「まちの未来が酒の肴になるとは、非常にポジティブですね!」とコメントしました。

東松島で開催されたバーイベント「バーババー」。たくさんの人が訪れた。

「食」については、「何といっても新鮮な魚が食べられるのが魅力です。サンマの刺身は女川に来て初めて食べましたが、とてもおいしかったです!」と鶴田さん。松村さんは「寒い時期はおいしいものがさらに増えますね。たとえばタラ。実は肝がフォアグラ級においしいんですよ。そしてこれからは牡蠣ですね」と付け加えました。関口さんは「以前は牡蠣が苦手でしたが、今ではたくさん食べられます! 東松島は海苔もおいしいですよ」とコメントしました。

「食とお酒」にまつわる話を受けて、指出は「3地域とも酒場が似合うまちですね。スナックが多いのは、人が集まりたいと思えるようなまちだからです」と述べました。そして、「気候風土と人の営み」を表す「テロワール」と、「食とお酒のペアリング」を意味する「マリアージュ」を掛け合わせた造語、「テロワージュ」に言及。仙台市にある『秋保ワイナリー』の代表・毛利親房さんが提唱している概念で、地域のお酒と食を、その土地の風景や文化、人々も含めて表現・アピールすることを目指したもの。テロワージュを楽しめる場づくりが東北各地で進んでおり、女川でも「テロワージュ女川」というワインマルシェが開催されるなど、地域のお酒と食を文化として発信する動きが出てきています。

ワインマルシェ「テロワージュ女川」では、地元で獲れた牡蠣も提供された。

そして三つ目のお題は「お試し移住」ということで、東松島、石巻、女川それぞれのお試し移住プログラムについて紹介がありました。どこも充実したプログラムや制度を用意しており、移住者を温かく迎えてくれます。指出も「3地域ともお試し移住が充実していてよいですね」と述べ、「お試し移住は、地域の日常を見て、まちの雰囲気を知るために大切です。地域と関わると“ウェルビーイング度”が高まります。この3人のような素敵な関係案内人がいるので、お試し移住をされる方は、ぜひ楽しんでください」と視聴者にメッセージを送りました。

さらに指出は次のようにコメントしました。「今、都市で人々が求めているものが実はローカルにあったという逆転現象が起こっています。都市は経済的に飽和状態ですが、ローカルでは新しい仕事をつくっていく余地がある。身の丈に合ったカッコイイものをつくることができるんです。都市の人がローカルに憧れ始めていますよね。だから、今この3地域をはじめとした東北に行くことはすごくおもしろいと思います」。

トークセッションの後は、東松島・石巻・女川の3ルームに分かれてのブレイクアウトセッションが行われ、トークを聞いての感想や、参加者自身の移住に対する関心、東松島・石巻・女川の印象などについて、話が弾みました。最後は、復興庁復興知見班参事官の後藤隆昭さんが次のように挨拶しました。

「女川は防潮堤で遮らない海が見えるまちづくりを行っており、石巻は震災後に多くの人が集まってきたホットな場所として知られ、東松島は航空自衛隊のアクロバットチーム『ブルーインパルス』が復興のシンボルとなっているなど、それぞれ特徴ある地域です。登壇したみなさんのお話から各地域の魅力が伝わってきました。お三方とも、移住される方への応援の気持ちがあふれています。やはり地域の魅力は人がつくるんだなと実感しました。復興庁では、単に復興するだけではなく、さまざまな地域課題を全国に先駆けて解決していく取り組みを『新しい東北』と呼んでいますが、3地域はそれを十分に進めています。3地域をはじめとする東北に対し、多くの方々に関心を持ってもらいたいですね」と述べて、イベントは無事に終了しました。

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photographs by H-tus Co., Ltd.
text by Makiko Kojima

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