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場づくり・コミュニティ

特集 | 新・地域の編集術

『シェアアトリエつなぐば』の編集力。

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多様な使い方ができる場には、多彩な人たちが集まる。『シェアアトリエつなぐば』もそう。ただ、多様だからこそ課題も持ち上がる。どう解決して今に至ったか、運営する皆さんに尋ねました!

目次

きっかけは女性たちの月3万円ビジネス。

 目の前に公園が広がる築33年の鉄骨2階建てアパートをリノベーションした、埼玉県草加市にある『シェアアトリエつなぐば』は、カフェやシェアスペース、ワークスペース、託児所や美容室も入居するにぎやかな空間だ。カフェでは地域の女性たちが飲食関連のショップを出店し、お客さんがランチを食べたり、スイーツを注文したり、楽しいひとときを過ごしている。中央には畳のスペースが設けられ、小さな子どもを連れた家族がちゃぶ台を囲み、今日の出店である『じゅんちゃんちの曲げわっぱ弁当』の弁当を味わっている。シェアスペースではヨガやアロマなどのワークショップが開催され、ワークスペースではフリーランスのクリエイターがノートパソコンを開いて仕事をする姿も見られる。

 
『つなぐば家守舎』の事務所。松村さんの娘・あかりちゃんも一緒。

 そんな多彩な人々が集う場を運営しているのは、『つなぐば家守舎』の代表取締役で建築家の小嶋さんと、取締役でデザイナーの松村美乃里さんと、「パートナー」と呼ばれる10名ほどのメンバーたちだ。草加市が主催する『わたしたちの月3万円ビジネス(「3ビズ」)』という、自分の得意なことや趣味を生かして月に3万円を稼ぐ女性創業スタートアップ事業に参加した女性たちが、自分たちがやりたいビジネスを実践する場を設けようと集まったことから場づくりを構想。さらに草加市が開催した『リノベーションスクール@そうか』にサブユニットマスターとして参加していた小嶋さんと「3ビズ」2期生の松村さんが出会い、「子連れで働けるシェアアトリエ」というテーマで事業提案を行ったことで、『シェアアトリエつなぐば』が生まれることになったのだ。

 
『つなぐば家守舎』の小嶋さんと松村さん。

3つの出会いによって、場づくりが実現。

『シェアアトリエつなぐば』の誕生までには、3つの出会いがあった。1つは、大家さんとの出会い。『リノベーションスクール』で事業提案した相手は、地域に物件を所有する大家・中村美雪さんだ。「中村さんはお父さまが市に寄付された八幡西公園に、後に『シェアアトリエつなぐば』となるアパートを壊し、その敷地と合わせて大きな公園にできないかと市に相談されていたようです」と小嶋さん。目の前に公園や駐車場のある立地を気に入った小嶋さんと松村さんは中村さんに会い、「子連れで働けるシェアアトリエ」をつくりたいという思いを伝えた。「その思いを聞くうちに再び地域に愛着がわき、貢献したくなりました」と中村さんは理解を示し、『つなぐば家守舎』にリノベーションを任せた。

 2つ目は、行政との出合いだ。『リノベーションスクール』を主催する草加市の産業振興課は中村さんをはじめ地域のキーマンを紹介したり、有用な情報を提供したりして『つなぐば家守舎』をサポートした。2018年6月の『シェアアトリエつなぐば』のオープン後には、みどり公園課が、『つなぐば家守舎』に八幡西公園の管理を試験的に委託。小嶋さんは、「遊具の安全性や芝生の状態などを連絡する程度の管理を任されました。その際に、子どもたちに危険だった錆びて破れた金網のフェンスを撤去してもらい、生け垣も一部を切ってもらいました。建物と公園の行き来がスムーズになり、お客さんが公園でくつろぐ姿が見られるようになりました」と市のサポートを喜んだ。

 
『シェアアトリエつなぐば』の前には木が植えられた八幡西公園が。

「DIO(Do it ourselves)=ほしい暮らしは私たちでつくる」というコンセプトを掲げ、みんなで建物を解体し、壁や床を張ってつくっていったが、中身が有機的に機能するには3つ目の出会いも不可欠だった。メンバー同士の出会いだ。

『シェアアトリエつなぐば』は、『つなぐば家守舎』と「パートナー」が一緒に運営するというコンセプトで始まった場だ。「パートナー」とは、場を利用するための月額契約を交わし、月1回のミーティングにも出席する主要メンバーのことで、場をシェアするためのルールづくりも一緒に行ってきた。「……はずでした」と、小嶋さんはオープン後に浮かび上がった課題を話す。「やりたいビジネスを実践するには主体性が重要。場づくりにおいてもそう。しかし、いざオープンすると、場を貸す側(『つなぐば家守舎』)と利用する側(「パートナー」)、との間に距離が生まれてしまったのです」。

 例えば、「Aさんの要望は通るのにBさんの要望は通らない」「利用者を選んでいる」といった不公平感を指摘する声が上がった。「オープン直後で忙しく、イベントを企画しても利用者に頼りきることができなかったため、『自分ごと』として取り組んでもらえず、距離ができてしまったのかもしれません。一緒に運営するはずだったのに」と小嶋さんは頭を抱えた。

 そんな状況を打破したのが、『じゅんちゃんちの曲げわっぱ弁当』の代表・山﨑淳子さんだった。「夏の夜のつなぐBar」というイベントを自ら企画して開催。地域の人たちも参加するにぎやかなイベントとなった。その盛り上がりを体験したほかの「パートナー」の間には、「やりたいことをやっていいんだ」という空気が伝播した。『nunoitolab』の古谷光恵さんは種から育てたコットンの糸を紡ぐワークショップを開催した。「DIOを掲げ、みんなで一緒に場づくりしようとしてきましたが、実は僕らが任せきれていなかった。スペースの使用料も決めていましたが、それよりもみんなに使ってもらうことが先決だと思い直し、1年間は使用料を下げ、利用しやすくするよう努めました」と小嶋さん。松村さんも、「みんながやりたいことを『自分ごと』として活動してくれるようになり、泣いちゃうくらいうれしかったです」と振り返る。本当の意味で、メンバー同士が出会えたことで、『シェアアトリエつなぐば』は大きく前進できたのだ。

 
山﨑さんが企画した「夏の夜のつなぐBar」。

 メンバー同士でコラボレーション企画も展開し、人気を博しているお菓子屋『gris─グリ─』の代表の橋浦仁美さんは、「いつかは、お菓子づくりの工房を持ちたいです」と開店して3年が経つ今、夢を語る。松村さんも、「ここで働き、出会い、交流する大人の日常風景を見て、憧れや尊敬を抱きながら子どもたちが育つことで、ここが世代を超えた”思いをつなぐ場“になれば」と、夢を語った。

 それは、4つ目。自分の「夢」との出合いが、この場の未来をつくっていくのかもしれない。

▶ 『つなぐば家守舎』・小嶋 直さんが選ぶ 「地域を編集する本5冊」はこちら

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