『オキナワ サントス』は、沖縄とブラジルの間に埋もれていた移民史の暗部である、もう一つの「戦争」と「戦後」を生きた人々の物語。
7月31日(土)より沖縄・桜坂劇場にて先行上映、8月7日(土)より東京・渋谷のシアター・イメージフォーラム、大阪・第七藝術劇場にて公開(ほか全国順次公開)。
目次
戦後70年以上を経て明かされる、サントス「日系移民強制退去事件」の真実
第二次世界大戦前夜から戦中のブラジル。高まるナショナリズムを背景にヴァルガス独裁政権は、約20万人の日系移民に対し、日本語新聞の廃刊、日本語学校の閉鎖、公の場での日本語の使用禁止などを命じた。
そして1943年7月8日、事件は起きる。南東部の港町サントスで暮らす日系とドイツ系の移民に、24時間以内の退去命令が下された。家財や土地を残したまま、ある者は収容所へ送られ、ある者は家族と生き別れ、コミュニティは離散した。
しかし戦後70年以上にわたり、「日系移民強制退去事件」は長らくタブーとされ、この悲惨な出来事がブラジルの日系人社会で公に語られることはなかった。
なぜ人々は口を閉ざし続けてきたのか? いったい何が起きていたのか?
『花と兵隊』『祭の馬』松林要樹監督待望の最新作
この歴史の深い闇に挑むのは、『花と兵隊』で戦後もタイ・ビルマに留まった「未帰還兵」たちの今に迫ったドキュメンタリー映画監督の松林要樹。発見された「名簿」から、強制退去させられた日系585世帯の6割が沖縄からの移民だった事実に注目した松林は、ブラジル沖縄県人会の協力を得て、生存者たちを訪ね、日本とブラジル、大和と沖縄の間に埋もれた史実を明らかにしていく。
異国で知られざる「戦争」と「戦後」を生き抜き、晩年を迎えた人々の証言。彼らが自らの人生を語る言葉は、ヘイトクライムや難民問題など、今まさに共に生きることの難しさに直面している私たちに道しるべのように響く。
異国での暮らしの中で、何度も「分断」が目の前に現れる。
「枢軸国の日本人かドイツ人の中にスパイがいるに違いない。」
第二次世界大戦中の1943年、ブラジル側のそんな疑惑から、住んでいたブラジルの港町・サントスの街を24時間以内に退去するよう命じられた日本人たち。
事件の証言者は、当時子供だった方ばかりだ。今はすでにお年寄りと呼ばれる年齢に達している。彼ら一人ひとりに丁寧にインタビューを重ねることで、徐々に全体像が見えてくる。
ブラジルに関われば関わるほどに、「よそ者」であることを痛烈に自覚させられる。異国での彼らの生き様を丁寧に拾い上げた松林監督に敬意を表したい。
松林要樹監督 メッセージ
東京オリンピックが開催されようとしているが、今も世界各地で移民や難民の排除が起きている。具体例を挙げるまでもなく、日本政府はもちろん、一般のいわゆる日本人が難民や移民に対して決して寛容だとは思えない。この映画の撮影を開始した2016年には、今のようなパンデミックな世の中になっていることは予想すらできなかったが、不寛容な社会になっていることは想像できた。
戦時中、地球の裏側のブラジルで起きたことは、日本がアジアでとった軍事行動の裏返しだったと考えるようになった。時として戦争の加害者と被害者とが表裏一体になることがあると思う。だから戦時中に日系ブラジル人が経験したことは、遠い国の昔の話ではなくて、現代にも通じる普遍的な教訓になる出来事だと信じている。
戦時中、地球の裏側のブラジルで起きたことは、日本がアジアでとった軍事行動の裏返しだったと考えるようになった。時として戦争の加害者と被害者とが表裏一体になることがあると思う。だから戦時中に日系ブラジル人が経験したことは、遠い国の昔の話ではなくて、現代にも通じる普遍的な教訓になる出来事だと信じている。
映画『オキナワ サントス』
監督・撮影・編集:松林要樹
カラーコレクション:中谷駿吾(ムーリンプロダクション)
整音:川上拓也
取材協力:ブラジル沖縄県人会 サントス日本人会
製作:玄要社
配給:東風
日本/2020年/90分/(C)玄要社
英題:OKINAWA/SANTOS
公式HP:https://okinawa-santos.jp/
カラーコレクション:中谷駿吾(ムーリンプロダクション)
整音:川上拓也
取材協力:ブラジル沖縄県人会 サントス日本人会
製作:玄要社
配給:東風
日本/2020年/90分/(C)玄要社
英題:OKINAWA/SANTOS
公式HP:https://okinawa-santos.jp/