川端由美さんが選ぶ、道の駅をつくる本5冊
今回の特集が道の駅ということで、それをモビリティの視点でどう捉えるのか。まず思い浮かんだのが『ミシュラン 三つ星と世界戦略』。三ツ星のレストランなどを紹介することで有名なミシュランのガイドブックですが、もともとはタイヤメーカーであったフランスのミシュランが、タイヤの購入者向けに配布していたロードガイド。その原点は「車で遠出する人のためのホスピタリティとはなにか」というもので、つまり星付きのレストランやホテルは「移動の目的地」。ガイドブックでは三ツ星には「わざわざ行くべきレストラン」などと紹介されている。ついでに行くところではないんです。ミシュランは顧客の満足度を上げた先にタイヤが売れる、と考えている。このビジネスの発想は正しいなといつも思います。三つ星レストランも単においしいものを提供するだけでなく、最高のサービス、プレゼンテーションを体験できる場として位置付けられて、ホスピタリティのあり方も考えさせられる。ミシュランの歴史やビジネスへの考え方なども書かれていて、「ロードサービス」について改めて思いを深める内容になっていると思います。
2冊目は「『移動』の未来」。自動車社会のこれまでの歴史を繙きつつ、ライドシェアやフードデリバリーを手がける『Uber』の出現をはじめ、今の移動の話、さらには自動運転など、未来の移動について書かれています。道の駅は日本を代表する優れた道路行政施策の一つであり、地域や地方との結節点をうまくつくっていると思っています。
私が本書を読んで感じたのは、モビリティにおける「これからの目的地」としての道の駅の可能性です。
スマートフォンと車がリンクする日も間近で、カーナビゲーションを含め、車のIoT化が今後ますます進化を遂げていくとしたら──。例えば道の駅のアプリが登場し、そこで情報のプッシュ通知を受け取れると、近くにいる人たちは最新のイベントなどの情報を得ることが可能です。道の駅から積極的に働きかける時代が訪れると、道の駅の個性やサービスの質がより求められはじめるだろうと思っています。