詳しく聞いてみると、実生だと植物は無駄な根を張らないのだという。根が大きくならなければ、幹や枝は繊細さを保つ。さまざまな種類の樹木が、光を求めて細い幹を伸ばし合う姿は、自然のみがつくり得る健やかな命の強さと、繊細さの調和を感じさせる。
一体、どのように手入れをしてきたのかを聞いてみると、特別なことは何もしていないのだという。庭の命の循環をよく見つめ、日々ちょっとだけ整えていくことで絶妙なバランスを保っているのだろう。
土地の力、太陽の力、植物の生命力が織りなす循環に、人がていねいに寄り添い続けていくというこの庭の在り方は、ランドスケープデザインの一つの究極の姿ではないだろうか。
住所:愛知県稲沢市内 ※年1回の一般公開も実施。
施工年:1978年
ふじわら・てっぺい●建築家。1975年横浜生まれ。2009年より『フジワラテッペイアーキテクツラボ一級建築士事務所』主宰。2010年より『一般社団法人ドリフターズインターナショナル』理事。建築、地域計画、まちづくり、展覧会空間デザイン、芸術祭空間デザインと領域を越境していくプロジェクトを多数手がける。2012年より横浜国立大学大学院Y-GSA准教授。受賞に横浜文化賞 文化・芸術奨励賞など。
©Shigeo Ogawa