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サスティナビリティ

連載 | SUSTAINABLE DESIGN

実生の庭 変化を受け入れ続けることがつくる、循環の庭の姿。

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「実生の庭」という考え方がある。風や鳥が運んだ種から生える樹によってつくられる庭のことだ。自然がつくる偶然に身を任せることになるので、どんな姿になるのか予想もつかない。新しい命が生まれてくるだけでなく、病気になって朽ちたり、台風で倒れたりといった変化も起きてくる。実生の樹を40年間受け入れ続けた庭があるというので、実際に訪れてみることにした。
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この庭は、愛知県稲沢市にある庭づくりを営む会社『Landscipe』の溝口達也氏の父であり、その会社の創業者・溝口一三氏が若かりし頃に自分の家とアトリエの前庭として作庭し始めたものだ。初めに20本ほどの樹を植えて、それ以降はただひたすら実生を受け入れ続けてきている。自然の成り行きに任せ続けていたから、鬱蒼とした森のような姿をイメージしていたのだが、思っていた以上に空間が繊細なことに驚いた。

詳しく聞いてみると、実生だと植物は無駄な根を張らないのだという。根が大きくならなければ、幹や枝は繊細さを保つ。さまざまな種類の樹木が、光を求めて細い幹を伸ばし合う姿は、自然のみがつくり得る健やかな命の強さと、繊細さの調和を感じさせる。
 
一体、どのように手入れをしてきたのかを聞いてみると、特別なことは何もしていないのだという。庭の命の循環をよく見つめ、日々ちょっとだけ整えていくことで絶妙なバランスを保っているのだろう。

土地の力、太陽の力、植物の生命力が織りなす循環に、人がていねいに寄り添い続けていくというこの庭の在り方は、ランドスケープデザインの一つの究極の姿ではないだろうか。

『実生の庭』(『Landscipe』本社内)
住所:愛知県稲沢市内 ※年1回の一般公開も実施。
施工年:1978年
藤原徹平
ふじわら・てっぺい●建築家。1975年横浜生まれ。2009年より『フジワラテッペイアーキテクツラボ一級建築士事務所』主宰。2010年より『一般社団法人ドリフターズインターナショナル』理事。建築、地域計画、まちづくり、展覧会空間デザイン、芸術祭空間デザインと領域を越境していくプロジェクトを多数手がける。2012年より横浜国立大学大学院Y-GSA准教授。受賞に横浜文化賞 文化・芸術奨励賞など。

©Shigeo Ogawa

記事は雑誌ソトコト2022年3月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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