いのちをそっと支える。
江戸時代から仏具の産地として栄えてきた富山県高岡市。しかし、時代とともに仏壇・仏具の需要は激減し、仏具問屋『ハシモト清』の倉庫にはデッドストックの香炉が数千個眠っていた。溶かして金属資源として再利用していたが、あるとき3代目の橋本卓尚さんは知人のデザイナーが香炉に松を生けた写真を見て、その洗練された姿に衝撃を受けたという。今はもうつくれない職人の技や誇りが詰まった器に新たな価値を見出し、再び市場に戻せたら──そうして生まれたのが「わびさびポット」だ。植木鉢として使えるよう底に水抜き穴を開け、生地の状態で残されていた器には職人が現代の技法で着色や加工を施している。
「若い人から『今まで気にしていなかった実家の仏壇を見直した』と言われることがあります。『わびさびポット』を通して高岡仏具の魅力を伝え、伝統産業を盛り上げたい」と橋本さんは話す。今昔の技が交差して生まれた、“侘び寂び”の趣ある器。あなたはどんな植物と組み合わせる?
#SilenceLABの植木鉢「わびさびポット」
photographs by Jiro Matsushita text by Emiko Hida
記事は雑誌ソトコト2024年2月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。