分け合う気持ち。
先祖供養のことをアイヌ語で「イチャルパ」という。イナウ(木幣)と一緒に、果物やお菓子などの供物も捧げるのだが、皆一様に一口食べたり、半分に割ってから供えるという光景が印象的だった。その理由を聞くと、「半分に分け合うことで、カムイモシリ(神の国)へと供物を送るんだ」ということ。アイヌの死生観が分かりやすく表れている儀式で、故人をいつまでも思いやる精神のようにも見え、イチャルパを見学させてもらうときは、僕も偲ぶ想いになる。
道内を車で走り、あちこちでアイヌの人たちに会うと、お土産を貰うことが多い。昆布やトマト、山芋にジャガ芋。時には鹿肉を貰ったりすることもあり、そのまま1週間以上生活できるほどの食料になることもある。またそれを道中で出会う人に分けたり、東京の知人に分けたりすることで喜びのお裾分けをする。イチャルパにも、それに通じる何かがあるのかな、とぼんやりと思う。
真っ白なカールが特徴的なイナウは、「神様が喜ぶ捧げもの」といわれる。ミズキやヤナギを用い、さまざまな形状と役割があり、削り方一つをとっても厳格な方法に則っている。