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特集 | まちをワクワクさせるローカルプロジェクト

『アートフロントギャラリー』代表取締役会長|北川フラムさんが選ぶ、ローカルプロジェクトのアイデア本5冊

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土地の気候や気象状況、地形、景観の総称である風土の特色を理解し、長く地域と関わりながら芸術祭を総合ディレクターとして実施してきた北川フラムさんに、風土を学ぶことができる本をご紹介いただきました。

私美術を中心に仕事をしています。美術は古来、人間と風土の関係を表す技術であり、人間の親しき友であり続けています。
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(左から)1.『忘れられた日本人』/2.『調査されるという迷惑─フィールドに出る前に読んでおく本』/3.悲しき熱帯(Ⅰ・Ⅱ)/4.「日本」とは何か/5.探偵、暁に走る

北川フラムさんが選ぶ、ローカルプロジェクトのアイデア本5冊

現在、美術を用いた地域型の芸術祭をはじめとしたローカルプロジェクトが全国で実施されていますが、その土地の歴史や暮らす人々に目が向けられていないと感じています。地域の気候や気象状況、地形、景観といった風土を理解していないと、特別なものをつくれないのではないでしょうか。今回は、地域の風土や地域に暮らす人々との接し方を学ぶために有益な本をご紹介します。
 
宮本常一の『忘れられた日本人』は、日本各地で共同体コミュニティがどうつくられたのか、過去から伝わる習慣が子孫たちにどのように受け継がれたのかを、高齢者の語りをまじえながら書いています。私は、美術が高齢者を元気にするための有効な手段と考え、人口が減少している中山間地域や島嶼部で芸術祭を開催してきました。このような芸術祭をはじめとしたプロジェクトを進める場合、その地域の風土や人々の暮らしを理解することが重要なのです。
 
では、地域を訪れる人は、その土地に暮らす人々のことをどれほど考えているのでしょうか。土地には大勢の人々が生活し、いくら静かな家でも、中には誰かいるかもしれない。そんな相手の都合を考えずに住居の敷地内に入るなど、生活の場に土足で入っていく人がいます。彼らは無意識に人々の生活を覗き見し、相手の都合を考えずに話しかけるなど、「調査」をしてしまっているのです。無自覚な「調査」によって、地域に暮らす人々にストレスを与えないよう、訪れる側が備えるべきマナーや礼儀、心構えについて論じているのが、『調査されるという迷惑―フィールドに出る前に読んでおく本』です。初めての土地に赴き、知らない人と出会い、おつき合いをするとき、人間は本能として、新しいことや知らないことは怖いけれど、おもしろいと感じます。だとしても、相手を思いやることは必要です。
 
日本は観光立国で、経済のエンジンを観光に求めています。私は土地を人が訪ねるということは、その土地に暮らす人が幸せを感ずる「感光」が必要なのだと思っています。来訪者の存在が地域に暮らす人々の刺激となり、おもしろさと幸せをそれぞれで感じてもらいたいと私は思っています。そして「郷に入っては郷に従う」。人さまの土地であると認識して訪れたいものだと自戒を込めて、私が今でも読んでいる本です。
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きたがわ・ふらむ●1946年新潟県高田市(現・上越市)生まれ。東京芸術大学美術学部卒業。アートによる地域づくりの実践として「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」(2000年~)、「瀬戸内国際芸術祭」(2010年~)、などで総合ディレクターを務める。(写真:©Mao Yamamoto)
記事は雑誌ソトコト2022年3月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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