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和歌山県田辺市のまちづくり、これまでと これから

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「SDGs未来都市」として躍動する和歌山県田辺市。地域の人が自分たちのまちを誇りに思い、未来に向けた活動が広がっていく、その秘訣は何でしょうか。市内外で実施される関連プロジェクトの事例からひもといていきます。

2022年度の「SDGs未来都市」 「自治体SDGsモデル事業」に選定。

海や山などの自然条件が揃い、一年を通して温暖な気候で農産物にも恵まれた田辺市。「紀伊山地の霊場と参詣道」(通称・熊野古道)と「みなべ・田辺の梅システム」、2つの世界遺産に認定されている。市街地には個人商店や飲食店が立ち並び、古民家のリノベーション事業や商店街を活性化させるイベントなども活発に行われている。
目次

まちづくりの鍵となる、地域内外の人材育成。

紀伊半島の南西部に位置し、近畿地方随一の面積を誇る和歌山県田辺市。先人が残してきた歴史と文化を受け継ぎながら、近年、若手事業者が中心となって地域を盛り上げる動きが活発になっている。
CSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)をテーマとし、市内の事業者の”第二創業”を後押しする「たなべ未来創造塾」を軸に、首都圏在住の関係人口を生み出すプロジェクト「たなコトアカデミー」や、熊野の山から地域課題を考える「熊野REBORN PROJECT」、首都圏の企業人と「たなべ未来創造塾」の塾生とが協働で地域課題の解決をビジネス視点で考える「ことこらぼ」など、数多くの人材育成プロジェクトが実施されてきた。これらのプロジェクトから田辺の未来を思う人々の複層的な広がりが生まれてきたことが評価され、田辺市は2022年度の「SDGs未来都市」「自治体SDGsモデル事業」に選定された。
本記事では、田辺市のまちづくりの根幹とも言える「たなべ未来創造塾」の最新の状況や、塾生同士のコラボレーションから生まれたプロジェクトのほか、関係人口講座で田辺市と出合った首都圏の若者たちのその後の様子などをレポートしていく。田辺市が築いてきた人と人とのつながりが描く未来が、日本の地方創生を考える大きなヒントになるだろう。

第7期「たなべ未来創造塾」。塾生のビジネスプランを発表します!

「たなべ未来創造塾」修了式

2022年8月からスタートした第7期「たなべ未来創造塾」。塾生たちは、約半年間のプログラムを経て、各自の事業と地域の課題を同時に解決する新たなビジネスプランを創出。今年2月に修了式が行われた。
田辺と関係人口をツナグコミュニティの場
─コンシェルジュ居酒屋
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稲垣 基(はじめ)さん/『旬彩居酒屋 膳』
今年で創業12年目になる居酒屋で、コロナ禍で新しい取り組みにも挑戦した経験から、地域のお客様や関係人口、生産者をつなぐコンシェルジュの役割を目指す。紀南地域の生産者の声をお客様に届けるために、店内の壁一面に「関係人口マップ」を設置する予定。自身が手本となる働き方をすることで、若い人に飲食店の魅力も伝えていく。
実家の片付けサポートコミュニティ
─「手放すこと」からはじまる、世代を超えたつながり
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榎本けいこさん/『Re-base organize』
整理収納アドバイザーと個人の特性診断の資格を生かした、物であふれた実家の片付けをサポートする事業。実家の片付けは子どもが行うと親と衝突する可能性が高いことから、子育て世代の女性に整理収納を学んでもらい、その片付けを担う。不用品と体験を交換するイベントも開催してコミュニティづくりも行う。
樹の命を活かす“木のスプーン”
─健康な樹木があふれる森林を次の世代へ
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大谷栄徳(えいとく)さん/『中川』『はぐくみ幸房』
木を切らない林業ベンチャー『中川』で働きながら樹木や森林の健康診断などの事業を行っている。約40年前から手入れ不足が原因で和歌山県の森林が不健康な状態にあり、災害発生を招いていることに問題意識を持っていた。これを解決するために木への関心を持ってもらうための木のスプーンキットを開発。体験を通じて関心を呼び起こす。
アートでつなぐ地域のWA
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加藤 綾さん/『W.story』
アートを通じて和歌山県の魅力が伝われば地域に人材が再び集まると思い、個展の開催やイベント出店、絵画教室を運営するなどして活動中。コミュニティの形成と関係人口の増加を目指し、絵画鑑賞を通じてお互いの違いを楽しむ「対話型鑑賞会」と、絵を描いた人同士が交流できる「参加型展示会」を実施する。
大斎原(おおゆのはら)の景観を守る
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金 哲弘さん/『山里舎』
中学校で18年勤める中で、大人の生きづらさを解決することが必要だと気づいて起業。世界遺産・熊野本宮大社旧社地周辺の田んぼが担い手不足から耕作できず、若手で耕作するにも労働力や資金が不足する状況の解決方法として、「企業の森」ならぬ「企業の田んぼ」を提案。農業体験と人材育成、ワーケーションなども組み合わせたプランを提供する。
本宮のお茶畑を守りたい
─ なっちゃんの挑戦
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倉谷夏美さん/『Natsumi Chatsumi』
田辺市本宮町で4年前に祖父母の茶畑を引き継ぎ、釜炒り茶を製造・販売。自身の事業を収益化させて、地域で農家が2軒となった茶産業を盛り上げていくために、お茶体験付きの茶葉を販売したり、農家民宿を行ったりすることでファンを獲得する。自身がモデルケースとなることで新規就農者を増やし、茶産業の復活を目指す。
Salada bowl
─ 帰っておいで、遊びにおいでと言いたくなるマチに
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庄司 豊さん/『横田』
東京からUターンして内外装工事業を営む『横田』に入社。自社の「もっといろんなことができるのに」という問題と田辺市の人口減少の課題を解決する事業として、今ある空きスペースを人の集まる場所に生まれ変わらせる「Salada bowl」を提案。まずは自社に「使えるショールーム」をテーマにした「Salada bowl」を創る。
おうちでママ美容師
─ 前髪カットでコミュニティづくり
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田中謙吾さん/『Partida hair』
和歌山県内外で美容師の講師を務める技術力を生かした、 忙しくて美容院に頻繁に足を運べないお母さんやお父さんがお家で子どもの前髪をカットできるようになる事業。ハサミ1本でできる前髪カットを通じて新たなコミュニティをつくり、美容師が子どもの憧れの職業の一つになるなど、田辺を「前髪カットのまち」へ発展させていく。
変わらない山づくり
─ 紀州備長炭アラカシにもブランド力を秋津川を循環する里山のモデルへ
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堀部剛史(たけし)さん/『木ノ国製炭』
約7年前の退職を機に愛知県名古屋市から紀州備長炭の発祥地・田辺市秋津川に移住して、炭焼きを行う。高度成長期を境に備長炭の需要が低下し、原料のウバメガシが生産効率のために皆伐されて山が荒廃。ウバメガシの株を残す択伐の復活や、これに代わるアラカシで炭をつくることで持続可能な山づくりを目指す。
Magonote
─ 住み慣れた地域で自分らしい暮らし シニア世代に寄り添うサービス
 (177811)

枡谷由美さん
趣味のダイビングをきっかけに大阪府から田辺市に移住。地域の高齢者と穏やかに暮らしていきたいと思い、喫茶店で働きながらヒアリングしたところ、多様で身近な困りごとが存在することに気づいた。そこで、シニア世代に傾聴してニーズを拾い、寄り添いながら今後の歩みを一緒に考えていくサービスを考案。
紀南の人事部
─ 田舎には「シゴト」がないを変える!
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山田かな子さん/『TODAY』
若者が出ていきやすく、居やすく、入ってきたい和歌山県を創るため、学生インターンシップ事業などを展開中。その中で地域事業者が人材育成のさまざまな課題を抱えていることに気づき、若者の育成と事業者の課題解決を同時に行える提案をすべく、事業者向けの人材に関する相談窓口を設置。若者にとっておもしろい仕事ができる地域へ。
山本農園は飲食店の“推し農家”になります
─ オーダーメイド農家として田辺になくてはならない存在に!
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山本宗平さん/『山本農園』
35品目の野菜や果樹を栽培するが、自社のブランド力不足から生産物の単価が低いという課題がある。田辺市では人口減少に伴って後継者不足、耕作放棄地の増加が課題になってくることから、農家と飲食店がコラボレーションして田辺の認知度をアップ。具体的には飲食店が必要とする食材を農家が栽培することで、飲食店の“推し農家”になる。

地元を知り、キャリアを考えるきっかけを。大人と若者が共に学び、つくる地域の未来。

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山田かな子さん(手前左)と野村晃大さん(同右)らが中心となって高校生の探求プログラムを古民家で開催。
人口流出による人口減少は、日本のどこの地域も抱えている問題だ。若者がまちから出ていってしまう前に地域を知る機会があれば、就職や結婚を機に地域に戻ってくるかもしれない。そう考えた地域の企業人たちが、新しい取り組みを始めた。

高校生が地域の企業を知り、自分のキャリアを描く。

人口減少が全国平均よりも速いスピードで進んでいる和歌山県田辺市。進学や就職で市外、県外に出て行った若者が戻ってこない人口流出も大きく影響している。「『たなべ未来創造塾』の修了生たちの間で、地元の高校生たちがやりたいこと、やりたい仕事を発見できないから人口が流出するのではないかという仮説を立てました。そこで以前から、高校生と地域の企業が出合う場をつくりたいと心に秘めていました」。
そう話すのは、田辺市内で教育プログラムを提供する『TODAY』の山田かな子さんだ。山田さんは、『田辺自動車学校』の野村晃大さん、家具の販売や開発を行う『榎本家具店』の榎本将明さん、まちづくり事業を手がける『南紀みらい』の長戸千紘さんに声をかけて『若年層と地域産業の相互理解実行委員会』を結成。紀南地域で暮らす高校生が地元企業について知り、自分の将来を真剣に考える探求プログラム「スタートライン」を今年1月から2月にかけて実施した。
このプログラムのメインは、5回開催された「企業コラボ会」。高校生たちは地域の産業を支える企業の事業と経営者らのキャリアについて深掘りした後、企業から出される事業課題について話し合い、解決策を提案する。例えば、葬儀会社がイメージアップのためにお香・線香専門店をリニューアルオープンする際に何が必要か、約15年前にオープンしたファーマーズマーケットの看板を「行ってみたくなるもの」に改善するにはどうしたらいいかなど、それぞれの企業が本気で取り組みたい課題が提示された。
山田さんは、参加した高校生から大きな刺激を受けたそうだ。「経営者のこれまでのキャリアや経営への思いを直接聞いて、地域に対する思いや自身のやりがい、生き方を知り、今までは将来を一つに決めないといけないと思っていたけれど凝り固まる必要はないと、高校生たちは視野を広げることができました」と山田さんは手応えを感じた。
また、この取り組みは高校生だけでなく、参加する企業にも大きなメリットがあると野村さんは言う。「Z世代の感性について知りたいと思っている企業は多く、企業の課題に対する高校生たちの提案に勉強になったと経営者も感じています」。

学生から新しい視点を得て、企業の経営に生かす。

山田さんがこれとは別に手がける、学生が企業の新商品開発やマーケティングなどに1か月間取り組む実践型インターンシップで、『田辺自動車学校』は大学生と専門学校修了生2人を昨年8月から受け入れた。野村さんは大きな気づきがあったと振り返る。「観光体験を組み合わせた免許合宿づくりとして、若者視点での観光マップを作成しました。でもそれ以上に、自動車学校の教官は怖いイメージを若者は持っているというアンケート結果から、教官に親しみを覚えるようにダンス動画などを撮影してSNSにアップすることに。このような新しい視点を吹き込んでくれたことがとても重要で、今でもInstagramの更新は続けています」。
参加する学生にとっても企業にとっても大きな気づきをもたらすこれらのプログラム。互いに歩み寄ることで、地域を思う気持ちがさらに深くなりそうだ。
\ じっくり育まれる、地域と若者の絆 /
学生インターンシップ
山田さんが地域の企業に受け入れを働きかけ、また、自らも受け入れている学生が1か月かけて行う実践型インターンシップ。学生には地域や企業について学び、自分で考えて行動する力がつく。また、人材に余裕がない企業にとっては、将来的に重要だが取り組むのが難しい分野について学生に関わってもらえるメリットがある。
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民輪涼香(たみわ すずか)さん
兵庫県神戸市在住の関西学院大学2年生(当時)で、和歌山県は今回が初めて。自ら企画して実行できるようになれたらと思って参加しました。田辺市の中心地にある空き家をワークスペースとして改修した後、どう活用するかを考えるのが私の課題です。個人的に「スタートライン」にも参加して、地域に貢献する企業に魅力を感じました。
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髙岡 鈴さん
関西学院大学3年生(当時)です。出身は和歌山県紀の川市なので、地域の力になれたら、この経験が自分の成長にもつながるかもしれないと思って参加しました。課題は普大寺というお寺に2階建ての建物があり、そこをどう活用するかを考えることです。紀南地域で暮らす7人にインタビューも行ってアイデアを練っています。
インターンハウス
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空き家になっていた築約90年の古民家をみんなで蘇らせて活用するプロジェクトを現在進行中。漢詩人であった家主の名前が宕山であったことから「TOUZANSOU」と名付けた。高校生のワークスペースや学生の宿泊利用、若手社会人や地元経営者のイベント利用など、さまざまな利用方法を考案中。いつでも立ち寄れる場所を目指す。
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右上/「スタートライン」のチラシ。高校生に関心を持ってもらえるようなデザイン。左上/高校生に説明する山田さん。プログラムは事前学習、企業コラボ会、事後学習で構成されている。右下/集まった高校生は12人。これにサポート役のメンターも加わる。左下/企業の経営者と話しやすいよう、古民家を会場にした。

懐かしさと、再始動するワクワクと。田辺に、ただいま! ─ みかんシーズン編 ─

和歌山県田辺市との自分らしい関わり方を考える「たなコトアカデミー」修了生たちが、田辺を再訪。コロナ禍の3年のブランクはものともせず、関係人口としての新たなつながりを再構築した訪問となりました。
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田辺を再訪した「たなコトアカデミー」修了生と、講座でお世話になった事業者の方々が再集結。

同じ場所で時間を過ごし、地域の営みをともに行う。

2022年度で開講5年目を迎えた「たなコトアカデミー」では講座の修了生にも継続的に田辺との関わりをもってもらう取り組みとして、東京・渋谷区での『青山ファーマーズマーケット』の出店やフィールドワークを企画してきた。
昨年12月、4名の修了生による田辺への再訪が実現。2日間にわたって、田辺の事業者に再会したり、自然を楽しんだり、お手伝いをしたり。それぞれの形で田辺とのつながりを再構築した。
1日目、2期生の三谷賢さんは、虫食い材「あかね材」の普及啓発を行う『BokuMoku』の竹林陽子さんが開催したワークショップをお手伝い。ひのきの間伐材を使ってオーナメントをつくる子どもたちをサポートしながら、田辺の山やものづくりの楽しさをていねいに伝えた。
2期生の内田亜紀さん・阪本美季さんは『榎本家具店』で『BokuMoku』メンバーの榎本将明さんと再会。「あかね材」普及の現状を聞いた後、「田辺の自然を感じたい」と、観光地の「奇絶峡」や龍神村を訪れて自然を満喫。「海と山がこんなにも近い田辺の自然を楽しめて癒されました」と内田さん。夜は、3期生の吉﨑哲矢さんも合流して、飲食店が集まる「味光路」へ。そんな中、三谷さんは、田辺市役所たなべ営業室の鍋屋安則さんと”商談”をしていた。実は三谷さん、勤務先の教育機関で国際交流のための田辺でのスタディツアーを企画中。「今回の訪問の目玉はこの商談。ようやく実現できそうでうれしい」と微笑む。
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右上/「榎本家具店」ではあかね材を使った家具を見学。3年前より種類が増えている。左上/滝や磨崖仏(まがいぶつ)が見どころの「奇絶峡」で自然を満喫。下/『BokuMoku』ワークショップでは、子どもたちがひのきの間伐材でオーナメントを製作。それぞれに表情が違う木片を選んで雪だるまオーナメントをつくる。使用する木材や『BokuMoku』の活動を学んで、山を思う気持ちを育てることも忘れない。
2日目は2班に分かれて、市内の農家『十秋園』と『日向屋』のみかん畑へ。晴れやかな冬空の下、おしゃべりしながらも集中して手を動かす。「第一次産業に必要なのは人。忙しい時期にこうして手伝ってもらえるのは助かります」と『日向屋』代表の岡本和宜さんは言う。午後は機械を使って収穫したみかんの選果と箱詰め作業。「思った以上に共同作業ですね」。慣れない作業に最初は戸惑うも、どんどんこなしていった吉﨑さんは言う。
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右上/『十秋園』ではお正月飾りの紀州みかんを収穫。「食べてもいいし、お気に入りのみかんを見つけて持って帰ってください」と野久保太一郎さん(写真中央)。左上/機械を使った選果は作業者の一体感が大切。右下/『日向屋』では「たなコトアカデミー」2期生で、今は地域おこし協力隊隊員として田辺で暮らす田中和広さん(右)とも再会。左下/更井さんの特製弁当。イノシシやシカ肉をいただく。
最後はジビエ料理を提供する『Restaurant Caravansarai』で両チームが合流。3年前に訪れたときは開店準備中だったため「壁塗りを手伝った場所が、こんなにきれいになっていたなんて」と阪本さんはうれしそうだ。店主の更井亮介さんから、捨てられていた梅の種を利用して開発したデザート「梅仁豆腐」や、開店当初から導入していたコンポストの話を聞いて盛り上がる。「次回は営業時間中に来たいね」と再訪を約束。それぞれが田辺の好きなところを再確認して、「また帰ってきたい」と感じた2日間となった。
\ようやく田辺に来られました! 受講生の声/
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吉﨑哲矢さん
みかんにこれだけの思いが込められている。ひとつひとつ収穫して磨いたからこそ、ぴかぴかになることを、『日向屋』のお手伝いをしたことで実感しました。地域の産業がいろいろな人の力によって循環しながら成り立っていることを体験できました。2年前、東京から神戸へと移住したのですが、田辺ともつながりをもち、二拠点を行き来しながら暮らすのもいいですね。
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阪本美季さん
3年ぶりに訪れた田辺では、地元の人たちが自分たちで高め合ってつながっていく感じが好きだと再認識しました。今後、すごく気合を入れて「田辺とつながろう」とすると逆に長続きしないので、今回の収穫体験のように「一緒の空間でなにかをやっていく」ことをしたい。そうして田辺とつながることで、自分の生き方やものの見方が豊かに変わる気がしました。
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右上/開店以来使い続けている『Restaurant Caravansarai』のコンポストを囲んで。右下/梅仁豆腐の材料は梅の種の中の白い仁。通常は福祉施設に委託している梅の種割りをみんなで体験する。左/『tanabe en+』で田辺のおみやげを購入する三谷さん。

田辺ファン約100人が集まる大規模ミーティングを開催!

プロジェクトの枠を超えた、新しいつながりが生まれる場。

田辺市のSDGsな取り組みをPRするイベント「田辺人100人ミートアップ〜私と田辺のネクストステージへ〜」が、2023年3月4日に東京・港区南青山で開催された。
「田辺人」とは、田辺で暮らす人、関係人口など地域内外を問わず田辺のまちづくりに関わる人々を指す。この日は、田辺市職員や「たなべ未来創造塾」の塾生など田辺市内からの参加者と、田辺市の取り組みに注目する行政関係者や関係人口講座「たなコトアカデミー」「熊野REBORN PROJECT」「ことこらぼ」の受講生など市外からの参加者を合わせ、総勢約100人の「田辺人」が集結。田辺という共通ワードで未来を熱く語り合う時間となった。
イベントは田辺市長・真砂充敏氏の挨拶に始まり、前半は「たなべ未来創造塾」や各関係人口講座の近況報告を聞くなど、これまでの田辺市のまちづくりの全体像を知る。
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右上/田辺のまちづくりに関わる人々が一堂に会するのは今回が初めての試み。左上/関係人口講座の担当者より、講座で生まれたプロジェクトの近況報告。左中/クロストークではユーモアを交えた賑やかな雰囲気の中、活発な意見交換がなされた。右下/「偏愛カード」を使うと、初めて会う人とも意気投合。下中央/田辺の季節を感じる柑橘がテーブルに並んだ。左下/田辺に通う写真家・永井克氏の作品を展示。
その後、『ソトコト』編集長の指出一正をコーディネーターに、真砂市長と「熊野REBORN PROJECT」のメンターを務める「低山トラベラー」の大内征氏、「ことこらぼ」の全体統括を行う『日本能率協会マネジメントセンター』の川村泰朗氏をゲストに迎え、イベント参加者を交えてクロストークを行った。ゲストからは、各講座を始めた思いや成果として実感していることを深掘り。田辺側、関係人口側、双方のコメントも寄せられ、田辺側の参加者からは「関係人口と出合えたことで、自分の仕事に誇りが持てるようになり、責任感も一段と上がった」などの感想が挙がった。
後半は、会場にいる全員が入り交じった交流会。「偏愛カード」と称した自己紹介カードを用いて、田辺について譲れないほど好きなものを発表していく。一人一人の力強いプレゼンテーションに、驚きや共感の声が寄せられた。
最後は、梅や柑橘類の食べ比べや梅酒、日本酒など田辺市の特産品を味わいながら、自由に交流を深めていった参加者たち。それぞれに新たな出会いとつながりを得て、次に田辺で挑戦したいことのイメージをつかんだ参加者も多くいる。このイベントを機に、田辺市のまちづくりは次のフェーズへ動き出していくことだろう。

3年ぶりに『青山ファーマーズマーケット』へ出店!

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田辺を知らない人にPRする場であることはもちろん、田辺の農家や「たなコトアカデミー」の過去の受講生、田辺ファンが集まる場にもなっている。
関係人口講座「たなコトアカデミー」の受講生と、田辺の柑橘、梅、米農家が協働で取り組んできたプロジェクトがコロナ禍を経て復活した。約3か月前から受講生有志が集まって準備を始め、2023年3月5日、春の陽気が感じられる東京・渋谷区で『青山ファーマーズマーケット』に出店。この季節ならではの柑橘や梅干し、米、ブロッコリー、平飼い卵などを販売した。売れ行きは好調で黒字を達成。今後の継続的な出店に向けても弾みがついたようだ。

SDGs実践集『わたしたちの、たなべ』を刊行

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「SDGs未来都市」「自治体SDGsモデル事業」に選定されたことを記念した冊子『わたしたちの、たなべ』が刊行された。田辺市の概要や、「たなべ未来創造塾」の塾生が実践してきたプロジェクト、田辺市で展開する関連の人材育成事業をまとめて紹介する充実した内容だ。下記の応募フォームに登録すると無料で読むことができるので、「自分サイズ」で取り組める地域活動の事例として、お手に取って参考にしてもらいたい。(在庫がなくなり次第、配布終了)
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無料で配布中! お申し込みはこちらから。https://form.run/qrcode/id/9ft0x5781lfmmqwx6xfpb0dl

WEBサイトがオープンしました!

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『わたしたちの、たなべ』の刊行に合わせて、田辺市で行っている人材育成事業の情報を凝縮したWEBサイトがオープン。各事業のホームページや関連のSNSにアクセスできる。田辺市がどのようなまちで、どのようなことに取り組んできたのかなど概要を知りたい方や、「自分も講座を受けてみたいので、詳しい情報が欲しい」という方におすすめだ。下記のQRコードからアクセスできるので、まずは気軽に覗いてみてほしい。
photographs by Katsu Nagai, Shinya Uchiyama & SOTOKOTO   text by Mari Kubota, Kaya Okada & SOTOKOTO
記事は雑誌ソトコト2023年5月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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