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サスティナビリティ

特集 | SDGs入門~買い物から地球環境を考える!~

『まほうのだがしやチロル堂』共同代表/ミュージシャン・吉田田タカシさんの「買い方」

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支援や寄付という行為は「上から目線」になってしまうことが往々にしてある。買い物を通じた社会貢献においては「支援する側、される側」を意識することなく、自然に誰かの役に立つ買い方があるのではと語る吉田田さんに話を伺いました。

目次

買い方の3つのPOINT

つくり手の哲学や思いが込められたものが欲しい。自分もつくり手なので、そういうものを感じ取ることができる。

世界中の蛇口を取り寄せて吟味したくなるほど、暮らしにこだわる。そうすれば、哲学の有無を嗅ぎ分けられる。

「地球の水の循環」のように、さりげなく工夫や仕組みがデザインされたものを選ぶ。

「誰かのためになる商品A」と、「安い商品B」。どっちを買う?

僕の、ものを「買う、買わない」の基準は、シンプルに「欲しいか、欲しくないか」です。どんなものが欲しいかというと、つくり手の哲学や思いが感じられるものです。外で食事するときも気にします。僕も音楽のつくり手だからか、哲学や思いが「あるか、ないか」は店の雰囲気からなんとなく嗅ぎ分けられるのです。
嗅ぎ分ける力を身につけるために大事なのは、自分の暮らしにこだわること。人に聞くと、僕はどうやら無茶苦茶こだわって暮らしているようです。たしかに今、住んでいる家は自分でリノベーションしました。その作業は大好きな時間だったのですが、同時に地獄のような日々でもありました。すべてのものを、自分で選択しなければいけなかったから。水道の蛇口一つ付けるにしても、「なぜこんな形状にたどりついたのか?」「ひねる力に差はあるのか?」と蛇口のデザインについていろいろと考えてしまいます。世界中の蛇口を取り寄せて吟味したくなるくらい、こだわってしまうのです。それが楽しくもあり、地獄でもあり(苦笑)。でも、そんなふうに自分の暮らしを磨いていると、哲学があるものかどうかを見抜く力が養われるのです。
だから、買うと誰かのためになるけど、「値段が高い商品A」と単に「安くて欲しい商品B」があれば、迷わずBを買います。Aには人の善意につけこむような押し付けがましさを感じることが多いから。SDGsは心のありようのはずなのに、SDGsとさえ謳っておけば、「今どきでOK」という商品が巷にあふれていると思いませんか? そんな商品を、「社会貢献しなきゃ」と気張って買うのではなく、もっと買いたくなるデザイン、たとえば地球の水の循環のように、「自分も恩恵の中にいたんだ」と後から気づかされる工夫や仕組みがデザインされていたら気張らずに買えるし、「自分も誰かの役に立てた」と喜べそうです。
僕は『チロル堂』という、子どもが集まる駄菓子屋を営んでいます。100円ガチャで買う「チロル札」で駄菓子やカレーが食べられます。夜は酒場になり、大人の食事代の一部、あるいはサブスクなどで”チロって“(寄付して)もらったお金が、子どもの駄菓子代やカレー代の補助になります。ただ、僕も大人も、「子どもを助けなきゃ」という気持ちはなく、楽しい時間を過ごしていたら、うっかり子どものカレー代も支払っていたという仕組みをデザインしました。そんな、さりげないものの買い方が好きです。
 (203747)

よしだだ・たかし●1977年兵庫県生まれ。大阪芸術大学卒業。スカバンド『DOBERMAN』のボーカル、アートスクール『アトリエe.f.t.』主宰、『まほうのだがしやチロル堂』共同代表、登校拒否の子どもや大人が集まる『トーキョーコーヒー』代表を務めている。
text by Kentaro Matsui illustrations by Yuka Hashimoto
記事は雑誌ソトコト2023年8月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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