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環境問題に関心はある。でも何をすべき…? 30代会社員が「森の学び舎」で見つけた、自分らしい役割

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環境問題や、SDGsなどといったキーワードがトレンドになっている。きれいごとではなく、「人と自然との共生」が、私たちの身の回りやビジネスシーンでも重要になってきているからだろう。自然環境を壊さない持続可能な暮らしや、そのための取り組みにも興味はある。けれど、何をしていいか分からない。関心の高さと裏腹に、具体的なアクションに結びつかず、もやもやしている人も多いのではないだろうか。そんなもやもやを抱えながらも、3ヶ月間の「森の学び舎」での学びを通じて、自分らしく、ちょうどいい自然との関わりを見つけた30代の都内会社員の2人の小さなストーリーをご紹介したい。

目次

離れてしまった森と人を「つなげる」という役割

「様々な人との出会いの中で、やりたいことが生まれてきました」

清々しい表情でこう語るのは、シェアリングエコノミーサービス企業の株式会社ガイアックスに勤める黒岩さんだ。

黒岩さんは長野県白馬村で育ち、その後離島でのドルフィンスイムツアーのガイドや飲食店への勤務を経て、ガイアックスに入社。企業ブログの記事を制作するライターや社内コーチの卵として講座の運営に携わっている。そんな黒岩さんは、もともと20代の終わりに、人生の中で何をやりたいかを考えたとき、「人と自然が循環する暮らしをつくりたい」、「森に関わる仕事がしたい」という漠然とした夢を持ったと言う。

黒岩さん
受講を通じて得た学びなどを記録したメモ書きを見ながらインタビューに応える黒岩さん。楽しそうに話してくれる姿から講座の充実ぶりが伝わってきた。

「そうは言っても壮大すぎるし、何をしていいかはずっと分からずにいました」

そんな中で見つけたのが森の学び舎、「INA VALLEY FOREST COLLEGE」(以下、FOREST COLLEGE)だった。

FOREST COLLEGEは、「業界を超えて、森に関わる100の仕事をつくる」をコンセプトにした長野県の伊那谷発の官民連携スクールだ。
林業・建築、教育、デザイン、まちづくりなど多様な業界の人々とともに森の価値を再発見・再編集し、森が抱える様々な課題解決を通じて、持続可能な森づくりを目指している。約50人の受講生と、各分野のプロフェッショナル20人の講師が、森や地域をフィールドに、プロジェクトチーム型のワークショップ、レクチャー、トークセッションなどを行い、約3ヶ月間にわたって学びとアイデアを深めるプログラムになっている。(今回はコロナ対策のため、オンライン開催)

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1月23日に「森とまちづくり」をテーマに行われたゲストトークの様子。植原正太郎さん(グリーンズ)、岡野春樹さん(Deep Japan Lab)、田中聡子(伊那市地域おこし協力隊)の3人をゲストに人が森と関わるきっかけづくりについて対話を行なった。

黒岩さんはFOREST COLLEGEでの様々なワークを通じて、自身の中でこんな気づきがあったと言う。

「“森と、森と関わりがない人をつなぐ人材が足りない”という話に心が反応しているのを感じたんです。森に関わる仕事には関心はあったけれど、木こりなど林業のプロフェッショナルとして生きるイメージは全く浮かばなくて。でも、人と人、人とものをブリッジする役割にはすごくしっくりきたんです」

黒岩さんがそう思うようになった講座の中での印象的な会話がある。

「講座の中で、森づくりと家具づくりに取り組む地域家具屋さんが、“うちはただの家具屋ではなくて、森や自然が持続可能になるような環境保全にも取り組んでいるが、消費者にはどうしても高いと思われてしまう”という悩みを聞いて、こんなに社会的な価値がある取り組みをしているのに伝わっていないのがもったいないと思ったんです」

そこで黒岩さんは、森から距離のある消費者が、無理なく森に愛着を持ってもらうきっかけとして、「森と人をつなげる定期便」を考案。アイデアは、生産者の思いやストーリーが詰まった雑誌とともに地域の食材が届く、「東北食べる通信」から着想した。伊那谷の森を香りや手触りで感じられるように、伊那谷産の木材や木の葉っぱ、木材商品とそれらのストーリーが載った冊子がセットになって届くことで、関係のなかった伊那谷の森に関心、愛着を持ってもらう狙いがある。

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FOREST COLLEGEの中で事務局から受講生に送られた「森の詰め合わせ」も黒岩さんの企画の着想になった。(Photo by 吉川和志)

「森が大変だっていう危機感を伝えるよりも、 “森って気持ちいいな”という風に森の良さをポジティブに五感で感じてもらえば、森と暮らしは自然と近づいていくんじゃないかなと思っています。どんなモノが森から届いたらいいか、中身はまさに考え中なので、アイデアをみんなに聞いているところです」

黒岩さんは人と森をつなげるために、「まずは小さなことから始めていきたい」と前を向いている。

必ず見つかる!
森とあなたのちょうどいい関係って?

「森ビギナー」だからこそできることがある

黒岩さんと同じく30代で、広告会社のクリエイティブ・ディレクターをしている根岸さんは、子育て環境を考えて東京都から長野県に移住したばかりの2020年9月ごろ、ちょうどFOREST COLLEGEに出会った。そこでの約3ヶ月間の体験を根岸さんは「人生の中でそうそうないターニングポイントになった」と表現する。

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「森について詳しくない人も一緒に学べる居心地の良いコミュニティだった」とFOREST COLLEGEの印象について語る根岸さん。

「FOREST COLLEGEを通じて、森との出会いはもちろん、受講生のコピーライターの方や、伊那谷の森づくりに関わるプレイヤーの方々との出会いが何より大きい。カレッジは終わったけど、みんなでこれから何をしようかとワクワクしながら色々企画しています」

そんな根岸さんはFOREST COLLEGEを通じて、「森ビギナー」ならではの役割を見つけたと言う。

「広告やデザインといったスキルが森側には、まだまだ足りていないことを講座から感じました。今後は、仕事で培ったスキルを活かして、森の課題や魅力を知らない都市側に向けて伝えていく仕事をしたいなと思っています。“森ビギナー”という今の自分だからこそできる役割を見つけたと思っています」

参加を経て、上記のような役割を見出した根岸さん。講座の最終回では、FOREST COLLEGEのコンセプトムービー『山と、森と、木と暮らす』を同じ受講生でコピーライターの吉川さんと共同制作した。

「森と暮らすことは、生きるチカラと生かされている感覚を取り戻すこと」といった印象的な言葉と美しい伊那谷の自然が織りなす約5分間のストーリーが描かれている。30代で見つけた
「自分らしいやりたいこと」
探す方法は?

FOREST COLLEGEで「森の玄関口」を作りたかった

講座を通じて、森と関係のなかった2人が自分なりの関わりを見出した2人。FOREST COLLEGEを企画した奥田さんは企画に込めた思いをこう語る。

奥田さん 「FOREST COLLEGEはいわば森の玄関口なんです。森って本来は入り口がたくさんあるんだけど、どう関わっていいか分かりづらい。だからこそ、FOREST COLLEGEでは木こりや家具職人、製材所、デザイナーなど、様々な切り口で森に関わる先輩から話を聞いたり、全国各地の森づくりの取り組みを聞くことで、多様な人に森を開いて、生業をつくる“きっかけ”をつくりたかった。一度森に入ってもらえば、できることはたくさんあります。木こりでもいいし、家具づくりでもいいし、森をフィールドにした教育サービスでもいい。森に関わる多様な仕事を集積させることで、伊那谷に森林産業が生まれ、森も守られる。そんな森と人が共に生きられる社会をここで作りたかったんです」

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INA VALLEY FOREST COLLEGE 運営事務局(株式会社やまとわ取締役/企画室長)奥田 悠史さん(右)と、同じく運営事務局メンバーの榎本浩実さん(左)。(Photo by 北埜航太)

FOREST COLLEGEの開催地である伊那市は、まさに森と人が共生して価値を生み出す地域経済エコシステムの創造を目指している。

伊藤さん 「もともと、森林率が80%を超える伊那市は、市民参加によって森林産業を創造して、持続可能な森づくりとまちづくりの両立を目指す“ソーシャルフォレストリー(社会林業)都市宣言”と、50年の森林ビジョンという計画を掲げていました。しかし、林業関係者の高齢化も進み、森づくりや森を生かしたビジネス創出のための人材が不足していたんです」

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伊那市農林部50年の森林推進室 室長補佐・係長 (Photo by 北埜航太)

そんなときに、森づくりと地域材を生かした家具づくりを行う「やまとわ」の奥田さんから伊那市にFOREST COLLEGEの提案があった。
伊藤さん 「市民参加を目標に掲げているように、行政だけでも、伊那市の中だけで完結させる限界がありました。だから、提案を受けて一緒にやりましょうということになったんです」

募集を開始すると、全国・世界から200人を超える応募があり、最終的にはデザイナーや教育関係者、I T、コピーライター、僧侶まで約50人の多様なメンバーが参加した。

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受講生は、林業関係者、デザイナー、コピーライター、僧侶、大学教授、大学生、人材育成企業、I T企業など50人を超える参加者が全国から参加。

「森×◯◯」。コラボレーションの可能性を秘めた森

プログラム自体は3月で終了したが、受講生主体で様々な動きが生まれている。

黒岩さんや根岸さんだけでなく、多数の受講生から自主企画が生まれつつあり、受講生がリアルでも集まれる場所をつくろう、と地域材を使ったDIY構想も動きはじめそうだ。さらに、マウンテンバイクを使った森林アクティビティを手がける講師の名取さん(TRAIL CUTTER)の元で4月から受講生が働き始めるなど、森を生かすプレイヤーも生まれ始めている。

FOREST COLLEGEは、来年度以降も実施する予定という。今後の構想について奥田さんは笑顔でこう話す。

奥田さん 「今回だけでも、森に関わる生業の種が生まれつつあるので今後はFOREST COLLEGEで学ぶ中で、興味を持ったことを深めるような実践型の学び舎づくりもすすめたいです。例えば、木こりや製材所、家具屋などで1泊2日、仕事を一緒にやってみるようなものをつくって、学びと実践のコミュニティにしていけたら面白そうです」

「自然環境を守る」と言うと壮大すぎるし、ちょっぴり窮屈かもしれない。

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(Photo by 北埜航太)

「自然環境を守る」と言うと壮大すぎるし、ちょっぴり窮屈かもしれない。
でも、身近にある森をきっかけにまずは小さく、具体的なアクションを起こすことならできそうだ。そして何よりみなさんの話を聞いていると森に関わるのは面白そうだと感じた。森には課題もあるが、様々な「関わりしろ」もあるから。
あなたも、森の学び舎FOREST COLLEGEから自分らしい自然との関わり方を見つけてみませんか?

INA VALLEY FOREST COLLEGE

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