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移住先での孤独感を克服するには?実体験から生まれたコミュニティに取材

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知り合いが全くいない土地へ移住した場合、最初に直面しがちなのが“孤独感”だろう。新しい暮らしは刺激的で楽しい反面、地域についての素朴な疑問、ちょっとした悩みなどを話せる相手がいないのは辛いもの。岡山市で活動する「cococara okayama(ココカラ オカヤマ)」は、そんな孤独感に悩む移住者をサポートし地域と繋がる様々な活動をしているコミュニティ。代表で自らも横浜から岡山へ移住してきた、うめたになみさんに話を聞いた。

目次

日ごとに増す“取り残され感”

cococara okayama」の代表・うめたになみさんは横浜市出身。再婚がきっかけで2018年6月に岡山市へ移住した。うめたにさんは横浜の子育てNPO「こまちぷらす」に在籍しており、その活動を通して撮り始めた子どもや家族の写真が好評で、フォトグラファーとしても活躍。そこで岡山に生活基盤をおきつつ、横浜との二拠点生活をスタートさせた。岡山で新しい人との出会いやコミュニティの広がりを期待していたが…。

うめたにさん「岡山は夫の地元ですが、私の知り合いは全くいませんでした。もちろん移住前にも来てからも、情報収集しようと色々検索していましたがこれがなかなか難しくて。横浜と同じようなNPO団体を探してアプローチしたりもしたんですが、人材募集のタイミングではなかったりしてなかなかご縁がなく…」

岡山で人とのつながりはなかなか生まれず、それゆえに地域や街の生きた情報収集も難しい。移住前に思い描いていた穏やかな生活は送れていたものの、焦燥感が募っていった。

うめたにさん「ときどき横浜の仲間のSNSを覗くと新しい情報がアップデートされていて、自分だけが取り残されているような気持ちになったりしましたね」

岡山 旭川
自宅近くには岡山三大河川のひとつ・旭川が流れる。穏やかな毎日も好きだが…。(c)うめたになみ

「人に会うしかない」と自ら「岡山初心者の会」を発足

それでも「とにかく人に会うしかない!」と、岡山の地元紙が募集していたWEBライターとして街の情報を取材したり、移住者が開いているカフェ「DESIGN & COFFEE」があるのを見つけて会いに行ったりもしたという。そうして少しずつ人と出会う中で、自ら人が集まる場を作ろうと決心。

うめたにさん「私と同じように移住してきたけど知り合いがいなくて困っている方はもちろん、移住者の先輩で経験談を話してくれる方、移住者とつながりたい地元の方も一緒に集まれたらいいなと、『岡山初心者の会』を開くことにしました」

うめたにさんが岡山に来て半年が過ぎた頃だった。しかし、会のスタートを決めたものの共に立ち上げる仲間はいないので、最初はうめたにさん1人でSNSを使って告知した。

うめたにさん「するとフォロワー以外の方からも『岡山初心者の会って何ですか?』と反響があったり、知らない方も告知記事をシェアしてくれたりして、1回目は15名で開催することができました」

2019年2月に行われた第1回目の会場を提供してくれたのは、先述したカフェ「DESIGN & COFFEE」。オーナーの須田亮平さん自身も東京からの移住者で、うめたにさんの企画に賛同し、当日は自らも参加して経験談を語ってくれたという。

DESIGN & COFFEE
「DESIGN & COFFEE」須田亮平さん。(c)うめたになみ

経験者からの生きた情報と初心者同士の共感が不安を和らげる

「岡山初心者の会」は回を重ねるごとに参加者が増え、今では募集開始からすぐに満席になることも多い。時には岡山への移住を予定している人から問い合わせがくることもあるという。好評の理由は、参加者同士が悩みを共有し、経験者や地元の方から生きた情報を得られることはもちろんだが、“岡山初心者”というキーワードが移住者にとっては安心感があるのではないかと、うめたにさんは話す。

うめたにさん「特に結婚や転勤などで移住してきた場合、私もそうでしたが“移住者”という意識ではなく“引っ越してきた”という意識の方が多いんです。そうすると、移住者という目線での情報収集が上手くできず、人とのつながりや生きた情報を得ることが難しいんです。それで時間だけが過ぎていき孤独感を深めてしまう。だから参加者の方からはよく、『イベント名に“初心者”とついていたので参加しやすかった』と言われます。そんな方々の心のよりどころになれれば嬉しいですし、こうした初心者コミュニティが他県でも広がっていけばいいなと思います」

岡山初心者の会
2020年10月「第10回岡山初心者の会」の様子。岡山の地図を広げながら、美味しいフルーツが手に入る場所など、口コミ情報を交換。コロナ禍では状況をみながらオンラインで開催したことも。(c)cococara okayama

またスタート時は1人で始めた会だが、参加者からの申し出でスタッフも増え、現在はうめたにさんを含む全4名のサポートメンバーで運営している。まさに人が人を呼び、コミュニティが広がっている。

うめたにさん「私1人では現在のような多様な活動はできなかったと思います。サポートメンバーそれぞれの強みを活かしたチームプレーだからこそ、できているんです。本当に最高のチームですね」


移住者だけで集まらず地元の人とつながることも大事

コミュニティ「cococara okayama」として多彩なイベントも開催

「岡山初心者の会」がスタートして半年が過ぎた2019年8月、それまではうめたにさん個人の活動として開催していたが、改めて任意団体「cococara okayama(ココカラ オカヤマ)」を設立。これまで「岡山初心者の会」をはじめ、人と人をつなぎ様々な情報交換の場となるイベントやワークショップを開催している。

うめたにさん「cococara okayamaは、『人とつながれる楽しい生活をココカラ始めて、初めての土地で途方に暮れる不安はココカラ終わらせる』そんなスタート地点になれるようにと名付けました。岡山初心者の方も初心者“だった”方も、岡山への引越を予定されている方も、初心者とつながりたい生粋の岡山の方も、一つでも多くのつながりが生まれるように、いろんな活動をしています」

移住者だけで集まるコミュニティだと悩みの共感はできても、地域の生きた情報交換は難しく、また人間関係も広がらない。

うめたにさん「内輪だけで終わるのではなく、なにより地元の人とつながることが大事だと思います」

例えばイベント「STEP~誰でもみんなオンリーワン」は、岡山で自分らしく暮らす様々な人に話を聞く会だ。2020年10月に開催されたVol.3は、「おやこカフェumeno」の店主・ちえさんがゲスト。地元岡山で子育てしながらカフェを運営している彼女の生き方や暮らしぶりに、参加者は興味津々だったという。

STEP
2020年10月「STEP~誰でもみんなオンリーワンVol.3」の様子。「おやこカフェumeno」を会場に行われた。(c)cococara okayama

未来の“岡山初心者”もあたたかく迎えたい

うめたにさん自身が移住後の孤独感から抜け出すために始めた活動は、参加者同士だけでなく地元の人たちとのコミュニティに広がっている。しかし「自分の悩みが解決したら終わり」ではなく、関係性を持続させ、未来へとつなぐことが大切だとうめたにさんは言う。

うめたにさん「岡山に来たばかりの時はみんな初心者で孤独。だけど数年経つと生活にも慣れ、人のつながりもできて悩みはなくなっているかもしれません。でもそれで終わりにしてほしくない。元初心者として、次に移住してきた初心者の悩みに耳を傾け、地域の情報を提供する。cococara okayamaは、そういう“心のつながりが持続し循環していく場所”になれたらと思います」

岡山だけでなく全国的にも地方移住が増えている今。地域は移住者をあたたかく迎え、移住者は新しく生まれた関係性を持続させる努力をする。お互いの思いやりとウエルカムな姿勢が大切だ。

cococaraokayama
(c)cococara okayama

cococara okayama

●うめたになみさんの移住ストーリー「町のこと、地域のこと。どこで知る?調べる? 意外に難しい移住後の情報収集」はこちらから

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