私にとって修行の場であり、癒しの場である奈良県天川村にある洞川温泉をご紹介します。
ソトコトペンクラブのみなさん、はじめまして。
フルーティストの横田美穂です。コンサートでこれまで様々な場所を訪れてきました。加えて私の趣味は旅行です。
どこへでも訪れて、見たい、感じたい、心が動く体験をそのまま音楽にすることができたら。
息子が生まれてからは、子連れでの旅が私の挑戦であり、何よりの楽しみになっています。
奈良県天川村洞川温泉(どろがわおんせん)
奈良県天川村。2015年に始まった「えんがわ音楽祭」がきっかけで洞川温泉を訪れました。それからのご縁で私は洞川温泉の皆さんにとても親しみを感じています。
洞川温泉の方は「ようまいり」と迎えてくれます。(ようこそお参り下さいました、の意味)
そう、ここは大峯山で修行をする修験道の方の宿場として栄えてきた街です。団体(講という)ごとに泊まるお宿が決まっていて、〇〇講と書かれた提灯がそれぞれ旅館の「えんがわ」にかかっています。夕方、提灯に明かりが灯ると幻想的でとっても綺麗です。
「えんがわ音楽祭」はまさに旅館のえんがわをステージにして演奏するのですが、こんなステージは他にありません。すぐそばに川が流れていて、水の音とフルートの音色が重なり響くのも演奏していて気持ちが良いものです。浴衣と下駄でリラックスしたお客さまの表情も良く見えますし、お宿で働く人たちも束の間手を休めて聴きに来てくれる、この距離の近さも魅力です。毎回出演の機会をいただき、参加する度にこの音楽祭を大切にしたいという想いが強くなります。昨年、350年続く老舗宿「角甚」さんのえんがわで演奏した時は歴史の重みに圧倒されてしまいそうでした。外の暗闇に、まるで鬼も息をひそめて聴いているのではないかと。
実は、洞川温泉には鬼から作り方を伝授されたという陀羅尼助(だらにすけ)があります。これは和漢の胃腸薬で、山に入るときの必需品、二日酔いにもテキメンなんだとか。奈良に伝わる鬼は尊いものとして語られています。全国的に厄介者扱いの鬼の話が多い中、ここにはどんなものも受け入れる懐の深さがあるのでしょうね。
陀羅尼助を扱う花谷神変堂の店主・花谷さんは洞川温泉のことをよく教えてくれます。コーヒーのおいしさの秘訣は洞川温泉の水だという話から、興味深い昔話まで。私が出産を控えた大きなお腹で訪れた時は母子堂(役行者の母が祀られている)の御守りを授けてくださり、温泉街のみんなで応援してくれました。角甚の大将は産後に効くからと強力な薬草の入浴剤を持たせてくださったり、さすが修験道の方をサポートしているだけあって、皆さまの優しさが沁みました。
一度、訪れることが叶ったら、それからはとても近く感じる郷、奈良県天川村洞川温泉。
きっと今年も「ようまいり」と迎えてくれるでしょう。
会いたい洞川温泉の皆さまの顔を思い浮かべて、いま、旅の準備を進めているところです。
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