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連載 | 田舎と田舎の二拠点生活

二拠点生活×子育て×遠方取材=?

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 取材仕事は、この2年間ほとんどなかったが、令和3年10月に入ると途端に流れ込んできた。寒くなったらまた感染者数が増えるかもと、11月のうちに全国各地を飛び回ることに(感染拡大防止対策は徹底して実施)。仕事内容はとてもありがたいが、私には3歳の娘がいる。娘を含む家族の負担を減らすために、いかに出発から帰宅までの時間を短くできるか検討を重ねた。この時に役立ったのが、まさに二つの拠点があるということだった。

家族の負担を極力減らした出張方法を模索。

 振り返ること産前。この頃は何の心配もなく全国各地を飛び回っていたが、産後は乳幼児である娘とセットになるため、途端に外出しにくくなる。それでも娘も連れて蔵元などに行き、苦難の末になんとか用事を終えたこともあったが、3歳になって運動能力と器用さが増していくと危険が増えた。かつてのように抱っこ紐などに収まってくれるわけもないため、蔵元に連れていくのは極力控えた。

 家族みんなが、今回の取材仕事を応援してくれたが、娘はまだ3歳。手がかかるうえに、娘も私を求めている。なるべく一時保育の時間内に収めたいが、北は秋田県、南は福岡県と「泊まり」が必須な取材先もある。1か月に1回くらいであれば比較的家族の負担が少ないが、1か月の内に10本も取材することになった。これでもだいぶ減らしたのだが、さて……。

 そこで、納期を守り、取材先の都合も尊重した上で、「一時保育の時間を超す場合、せめて娘の寝かしつけはできるか(当時の最大の難関は寝かしつけ)」を基準に移動手段を調べた。
 結果、兵庫県を境に、東のエリアなら幡豆を拠点に、西なら小豆島を拠点にしたほうがいいことがわかった。そのうえで、取材先や家族の予定をすり合わせて取材日を決め、家族に娘を託しながら取材を実施。家族内の負担も分散させることができた。

 多拠点生活をしなくとも、実家に子どもを預けて仕事をするお母さんもよくいる。頻繁に預け、お泊まりも慣れているなら問題ないと思うが、慣れていないと子どもにとっても預かる側にとっても、心身ともに負担が大きくなりやすい。夜間保育を利用するお母さんもいるが、それも利用時間内に収めるのが難しかったり、田舎には夜間保育がないことも多い。慣れた家、慣れた家族が複数あるからこそ、家族みんなの負担を最小限にとどめることができた。

 こんなに娘を家族に預けるのは産後初。でも、だからこそ私以外との家族の思い出が増え、絆も深まったと思う。
 娘と離れていた時間が多かった分、一緒にいる時はいっぱい愛情を注ぎ、家族も大切にしていく。

ある日の夫婦

多様な体験プログラムを実施する「大ナゴヤツアーズ」内で、白醤油の蔵元を巡るツアーを行った。もともとはツアーの一つとして、夫が味噌仕込み教室を行い、夫が運営者に提案したことがきっかけ。平日にもかかわらず、11人も参加。参加者は熱心で質問も飛び交い、後に記事を書いてくれた人もいた。さらに次回の醤油蔵ツアーも決定。夫に感謝!
 (63025)

黒島慶子(くろしま・けいこ)●醤油とオリーブオイルのソムリエ&Webとグラフィックのデザイナー。小豆島の醤油のまちに生まれ、蔵人たちと共に育つ。20歳のときから小豆島を拠点に全国の蔵人を訪ね続けては、さまざまな人やコトを結びつけ続ける。2017年7月に、愛知県の幡豆で無農薬で大豆と米を育て、米・豆・麦の麹を造る『宮本農園・みやもと糀店』の宮本貴史と結婚し、2018年7月に娘を出産。高橋万太郎との共著『醤油本』を出版。
記事は雑誌ソトコト2022年1月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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