アジア初の「星空保護区®️・コミュニティ部門」に昨年認定された岡山県井原市美星町。

アジア初の「星空保護区®️・コミュニティ部門」に昨年認定された岡山県井原市美星町。 星空を中心に据えた活動を通じて、まちが大きく変わろうとしている。

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2022.03.28

アジア初の認定を機にまちに変化が。

岡山県西南部に位置する井原市(いばらし)には、美星町(びせいちょう)と呼ばれるまちがあり、その高台には国内有数の口径101センチメートルの望遠鏡を備えた「美星天文台」がある。「美星」という名前の通り、美しい星空を堪能できる場所。2021年、国際ダークスカイ協会(IDA)により日本で3番目の星空保護区®️に認定され、地域が対象となる「ダークスカイ・コミュニティ」のカテゴリーでアジア初の認定という快挙を成し遂げた。

美しい星空を守る取り組みは、今から30年以上前に始まった。人工的な光は神秘的な星空を望む機会を妨げるだけでなく、資源エネルギーの浪費や動植物の生態系への影響を招く恐れがあることから、井原市は「光害防止条例」を全国に先駆けて制定。夜間の屋外照明の消灯を推奨したり、サーチライトなどの投光機を使用する際の方向を水平以下に限定したりと、地域が一体となって美しい星空が見える環境を守り続けてきた。

しかし、時代の変化とともに別の問題も発生。蛍光灯に代わって白色LEDの防犯灯が普及し始めたことより、水平よりも上方に向かう光が問題になってきた。そこで井原市は、電機メーカーの『パナソニック』に協力を依頼して、光害対策型のLED照明器具を開発。美星町内の屋外照明に導入したことも星空保護区の認定を後押しした。

星空をまもるあかり

これまでの星空にまつわる取り組みについて、井原市出身で同市のプロモーション事業に携わる『ビザビ』の佐藤勢一郎さんは次のように話す。

「この『ダークスカイ・コミュニティ』のカテゴリーでの認定は、一朝一夕では成し得ないもの。官民が一体となった30年以上にわたる継続的な活動と、未来のまちづくりを見据えた発展性があったからこその認定でした。これまで井原市は“星空”の一点突破で観光誘致に力を入れてきたのですが、元々観光地ではなく、宿泊施設等も少なかったことが課題でした。しかし、この認定に向けた一連の活動をきっかけに移住者が農泊を始めたり、新しいホテルが誕生したり、またペンションを大規模改修するなどして、市外からの人を呼び込む態勢が少しずつ整い始めました。星を中心としたまちづくりを通じて、その可能性に気づき、地域の意識が変わり始めたんです。」

『ビザビ』コミュニケーション局 地方創生G グループマネージャー・課長 佐藤勢一郎さん

星空観光を起点とした市内外の方々との関係人口創出への取り組みが加速していくなか、地域住民に大きなインパクトを残した出来事があった。井原市未来創造部定住観光課(現:観光交流課)が昨年3月に開催した野外ダイニングイベント「星降るレストラン」だ。満天の星の下で井原市の食材を使った地元シェフによるコース料理やワイン、地域に古くから伝わる備中神楽を楽しむ内容で、井原市外の在住者50人の定員に対して全国から6200人以上の応募があった。

非日常空間で五感を刺激されるような体験を通じて、井原市の魅力を実感してもらったこのイベントの成功を受けて、今後は「地域の稼ぐ力」を育成するために、行政主体の事業から民間主体の取り組みにつなげていく。すでに多くの市外事業者から「星降るレストラン」の事業化とそれへの協力提案が来ており、翌年度からの実施に向けて、官民が連携して準備を進めているとのこと。

星降るレストラン

「井原市では星空の魅力を発信する人を増やそうと『星の郷 美星マイスター養成講座』の開催をはじめたり、地域からさまざまな体験型コンテンツを生み出す、官民共創型のワークショップを継続して行っており、外国人の集客やグランピングなど今までにない取り組みのアイディアが地元住民から自発的に生まれるようになりました。また、商店街活性化を目的としたアートフェスを主催する団体『いばらアートループ商店街』の事務所が、週末に一般の人々に開放されるようになったことで、小・中学生から大人までが集まるスペースとなり、地域づくりについて話し合う機会が増えてきました」と佐藤さん。星空保護区の認定を機に、地域が主体となった取り組みが誕生しようとしているのを感じるそうだ。

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