地域に根ざし、地域に還元されるIT教室。

連載 | NEXTSTAGE まちのプロデューサーズ2.0 | 17 地域に根ざし、地域に還元されるIT教室。

今月のまちのプロデューサー


古山隆幸さん


 今回紹介するのは、宮城県石巻市を拠点にIT教育を展開する一般社団法人『イトナブ石巻』代表の古山隆幸さんだ。地元の若者にプログラミングやアプリケーション開発などを学べる場を提供し、石巻から世界に誇れるIT技術者を排出しようと日々奔走している。震災から10年後の2021年までに、1000人のIT技術者を育成することが目標だ。
 高校時代までを石巻で過ごした古山さんは、大学進学を機に上京すると、ひたすら大好きなサッカーに明け暮れる日々を送っていた。ところが、あるとき友人からパソコンを買うことになってからは一変。ウェブ制作の面白さに引き込まれていった。様々な人と出会い、チャレンジする大人の姿に刺激を受け、就職するよりも自分でウェブの会社を立ち上げることを選んだ。そして順調に会社を大きくしていた最中、東日本大震災が起きた。
 古山さんは、震災を機に、地元から東京への人口流出がさらに進んでしまうのではないかと感じた。そこで得意のITを使い、地元にこれからの地域を担う若者を育てる場をつくることに。「若者がどんどん上京してしまうのは、地域に魅力的な大人がいないこと、それにワクワクできる環境がないから。自分がそんな環境をつくれたら、若者が定着し、僕が好きなまちに人が戻ってくると考えたんです」 。


教室
小学生へのIT教室の様子。

 地元に戻った古山さんは社団法人を立ち上げ、子どもたち向けにIT教室を開講。事業で得た利益を元手にすべて無料で提供し、瞬く間に人気の講座となった。成功の秘訣は、地域の学生ボランティアを集め、彼らに授業を担ってもらっていること。近所に住むお兄さんという斜め上の関係に教えてもらうことで、子どもたちは親近感を持って学ぶことができる。大学生に教えてもらった高校生は、今度は中学生に教える側になる。教わる側から教える側に回ることで、より一層学びが深まり、何より地元に知識が還元されていくのがいい。地域に根ざしたIT技術者をみんなの力で育んでいけば、まちは自立して発展できるという。
 今では高校の授業の講師や、自治体との取り組みも始めている古山さん。石巻以外にも複数の拠点を持ち、魅力的な人に出会ったら講師として石巻に招聘したり、移住を呼び掛けたりもする。来月もシリコンバレーから学生が訪れるのだという。 「石巻に世界からIT技術者が集まり、育ち、得た知識を持って帰ってもらう。そしていつか、石巻が世界のみんなが知る地名になったらいい」。


イトナブ
毎年年末に行われる「イトナブ Groove Day」の様子。若者たちが1年間開発した成果を発表する。

 3月には東京でイベントも企画しているという古山さん。まちづくりについて「考えてばかりではなく、自分なりに動いてみてほしい」と語る眼差しは、とてつもなく熱い。
 

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