美しい田園風景が広がり、日本初となる世界農業遺産にも登録された石川県・能登半島。そんな能登半島には、里山暮らしを体験できる「里山まるごとホテル」がある。オーナーの山本亮さんに、「里山まるごとホテル」が生まれるまでの経緯、ホテルや地域にかける思いをお話いただいた。
癒しにあふれたステイが期待できるホテル
昔ながらの田園風景が広がる、輪島市・三井地区。この三井地区で2018年4月にお目見えした「里山まるごとホテル」は、一般的なホテルと一線を画す、ユニークなホテルだ。「たべる、くつろぐ、ほっとする」というコンセプトのもと、ゲストが思い思いに里山暮らしが楽しめるよう、さまざまな配慮がなされている。「里山まるごとホテル」を運営する「株式会社 百笑の暮らし」の代表・山本亮さんが、こう説明してくれた。
「『里山まるごとホテル』の大きな特徴が、地域全体をホテルに見立てていることです。例えば、食事やお茶のみは、『里山まるごとホテル』の拠点である『茅葺庵』で楽しみ、宿泊は地域内の農家民宿で、といった過ごし方が叶います。農家民宿の家主さんと一緒に、地域ならではの料理を作ったり、農作業を体験したり、リアルな里山暮らしを満喫できますよ。なお、その一方で、『茅葺庵』と一棟貸しの宿『中右衛門(なかよも)』で食事と宿泊を楽しむ、というスタイルも用意しています。前者においては、地域の人々とたっぷりと交流できる点、後者においては、誰にも気兼ねすることなく存分にのんびりできる点が、持ち味ですね」
2018年4月に開業してからおよそ2年間、宿泊に関しては農家民宿に頼る形態を続けていたが、2020年7月末に「中右衛門」がオープン。これをきっかけに、ゲストに提供できる滞在スタイルが、さらに幅広くなったという。
また、「中右衛門」の構えにも、ぜひ注目したい。「中右衛門」は、築150年の古民家をリノベーションし、つくられた宿。地元の大工さんや設計士、スタッフや仲間たちによって愛情をもって仕上げられた「中右衛門」は、どこかほっとする佇まい。古民家ならではの趣も残されており、非日常的で癒しにあふれたステイが期待できる。
「里山まるごとホテル」を、里山の魅力を知るきっかけに
山本さん自身も、能登半島・輪島の風景や、そこでの暮らしに魅了された一人だ。
「初めて能登半島・輪島に訪れたのは、おもに農村景観について学んでいた大学時代のこと。合宿の開催地が輪島だったのですが、当時、目にした田園風景にとても癒され、感動したのを覚えています。また、輪島の人々の暮らしが、東京での暮らしと比べて豊かなことに驚かされました。山に入って山菜をとってくるなど、“知恵”に基づいた暮らしをしているじいちゃん、ばあちゃんは、とてもカッコいいと思いました」
里山での豊かな暮らしを自分自身ができるようになり、その魅力を伝える人になりたい。そんな思いのもと、「里山の暮らしに関わる人を増やす」、「人々の幸福度を上げる」といったミッションを掲げる「株式会社 百笑の暮らし」を立ち上げ、「里山まるごとホテル」をオープンさせた山本さん。現在、「里山まるごとホテル」を運営するかたわら、東京・墨田区を拠点に市場を開催する「すみだ青空市ヤッチャバ」と連携し、里山の魅力を広めている。“里山の魅力”に注目する人は、今後さらに増えていきそうだ。