北海道産の蕎麦は香りがいい。寒暖差の激しい気候と広大な土地がそばの栽培に適していることから、生産量を増やしてきました。そんな蕎麦産地でマニアックな人気を誇る黒い蕎麦を作っているのが、「音威子府村(おといねっぷ村)」だ。全国最北の地で作られるちょっと変わった黒い蕎麦は一度食べると病み付きになるほどコシのある地元民が愛する味。今回は見た目も味もパンチがある「音威子府そば」をお取り寄せしてみました。
黒さだけじゃない。太く四角い麺の音威子府そば
以前、本サイトで読めない地名クイズ記事でもご紹介した、音威子府村の「音威子府そば」は、80年続く北海道の老舗メーカー畠山製麺が作り続ける伝統のそばです。その年の北海道産の最高の玄そばを、その日に使う分だけ自家製粉し、秘伝の配合比率で打ち上げるこだわりの麺。
初めて見た時、茹で上がりの真っ黒い麺の色に驚きました。黒い理由は、通常は捨ててしまうそばの実の殻(甘皮)を、そのまま入れて挽く「挽きぐるみ」という製法を採用しているからです。そのため、一般的なそばより栄養価が高く、とくに毛細血管を強くする効果がある「ルチン」が多く含まれています。一般的なそばより、そば本来の香りや風味が強く、こしがあり、太めで断面が四角いのもこのそばの特徴です。
非常に個性的な音威子府そばは大量生産はされていません。理由は、北海道一小さな村である音威子府村では、そば生産の労働力の確保が難しいということがあげられるそう。需要のある限り提供できる量のそばを作り続ける。そんなそば作りへの情熱も本品の魅力のひとつになっています。
黒いそばはどこで買える?
「音威子府そば」は道内ではいくつかの店舗で取り扱いされています。今回自宅で食べたものは、音威子府の人気蕎麦店一路食堂のオンラインストアで購入しました。専用の蕎麦つゆも濃いめで、カツオと昆布の出汁が効いた醤油ベースで絶品でした。地元民にも絶大な人気の音威子府そばの最大の魅力とはなんでしょう。
ただ固いということではなくて歯応えがあるのにスルスルと喉を通っていく感じ……
「一度食べると病みつきになる」という人も多いこの蕎麦について、音威子府村役産業振興室の森さんにお話を伺いました。
森さん この蕎麦は音威子府村民のソウルフードで、年越しはもちろん、夏の暑いとき、寒くなった冬、食べたくなった時に食べています。村内では、一路食堂、道の駅おといねっぷで食べることができて店ごとの味わいが楽しめます。
森さん 夏の暑いときは冷やしで、冬は温かくして食べることが多いですが、個人的には弾力がより感じられる冷やしが好みです。色が黒いが故に、「イカ墨が練り込まれているんですか?」と初めて音威子府を訪れる人によく聞かれますが、そう言ったものは一切入っていませんよ。(談笑)
黒いそばのある村としても地名度をあげた音威子府村ですが、他にどんな魅力があるのでしょうか?引き続き、森さんに伺いました。
音威子府村にある美術工芸高校
森さん 全国の皆さんに知って頂きたい学校が音威子府にはあります。『おといねっぷ美術工芸高等学校』といって、北海道で唯一の「工芸科」の高校です。生徒たちは村に住みながら、木工芸を中心としたものづくり通して、素材と向き合うとともに自分自身とも向き合っています。毎年、道内に限らず全国からの入学希望者がいます。1年生では美術・工芸の基礎を、2年生で美術・工芸それぞれのコースに分かれ専門的な授業を展開しており、3年生では3年間の集大成として卒業制作に取り組んでいます。完成した作品は1年間玄関ホールで展示されます。
普段は静かな村ですが、学生と村民(人口700名余り※令和3年現在)が協力しあって豊かに暮らしています。伝統と工芸の村、音威子府村で直接おそばを食べるのもよしですが、まずはご自宅で……伝統の味をぜひ味わってみてください。
その噛みごたえと味の深みで、心の奥がほっこりと和らぐことでしょう。
お取り寄せ店舗情報 一路食堂