「曖昧な若者」という意味で生まれた造語がタイトルとなった雑誌『ヤングマンベイグ』。発行や活動を重ねていくうちに、自分たちのやりたいことは「みんなの一歩を応援すること」へと変わっていきました。
同世代同士だからこそできる、
エンパワーメントしあう場をつくりたい。
何かをしたいけど、何をすればいいかわからない。当時19歳の佐藤美優さんはそんなモヤモヤを解消すべくInstagramのストーリーで呼びかけてみた。「20歳になるまでに何か一緒につくらない?」。
この投稿に共鳴して行動を起こした小倉巳奈さんら2000年生まれの女性たちが出会ったことで、みんなの情熱が爆発。「まだ何者でもないからこそ、なんでもできる。自分たちと同じく20年生まれの夢ともがきを集めたら、ものすごい一つのパワーになるのではないか」──今しかないこの気持ちを形にすべく「曖昧な若者」という名の雑誌『ヤングマンベイグ』を創刊すべく活動が始まった。その後、クラウドファンディングでの資金集めを経て、佐藤さんがInstagramで呼びかけた19年9月からおよそ1年後、20年9月にvol.1が発行された。
さらに1年後の21年9月にはvol.2を、22年3月にはvol.2.5を発行。たまにつまずき、落ち込むことがあっても、そこで得たものをぐんぐん吸収して、やわらかに、しなやかに形を変えてきた『ヤングマンベイグ』。自分たちのやるべきこと、自分たちだからできることを考えてきた結果、「何かを始める人の背中を押したい」「人知れずがんばっている人に光を当てたい」。そうした思いへの行動が自分たちの役割ではと考えるようになった。
22年7月には新しく編集担当の髙窪英里子さんをコアメンバーとして迎え、大学の卒業と就職を直前に控えた今まさに、vol.3を準備中だ。
目次
コアメンバー談議。 『ヤングマンベイグ』の 先にあるもの。
コアメンバーの佐藤美優さん、小倉巳奈さん、髙窪英里子さんによる、『ヤングマンベイグ』の舞台裏。雑誌をつくるごとに気づきや発見があった4年間。今とこれから、彼女たちが目指しているものは。
同世代をエンパワーメントしたい。
佐藤美優(愛称・みゆ) 20歳を前に何かを残したい。そんな気持ちがあふれて、呼応してくれたメンバーと初めて出会ったのが渋谷のドトール。おぐ(小倉巳奈)とは初めて会ったけど、そのときに抱えていた思いが爆発したね。
小倉巳奈(愛称・おぐ) 爆発したね。大学の友達と「将来の夢」の話をするのは恥ずかしいけれど、「モヤモヤ」があることを前提で集まったので、最初から「私たちって何者でもないからこそ、なんでもできるよね」と話が加速して。このときは初期メンバーでモデルのなおもいて、自分たちの思いをぶつけ合った結果、共通点が「雑誌をつくりたい」だった。
みゆ vol.1は思いのままに制作を始めて、つくっていく中で中身が決まっていった感じ。クラウドファンディングで資金集めをした12月に大筋の企画がフィックス。当時は編集会議の存在も知らなかったな。
おぐ しかも、vol.1を発行した20年8月はコロナ禍で外にも出られなくて、リリースイベントもなし。
みゆ 出来上がったときはめちゃくちゃうれしかったけど、その先のことは何も考えていなかったね。
おぐ やっぱり最初は”自己満“だった。誰かに届けたいというより、私たちの葛藤を晴らしたいというものづくりだったよね。
髙窪英里子(愛称・ぼえ) 私はまだ二人とは面識がなかったけどクラファンをしていたので、雑誌が手元に届いた。私自身もやっぱりモヤモヤしたものがあって、そんな中、自分と同い年の子たちが思いを形にしていて、すごいパワーを感じたんだ。だけど同時に焦りも生まれた。じゃあ自分は何しようって。
みゆ その言葉、いろいろな人からもらったなあ。「『ヤングマンベイグ』は行動できてうらましい」「こういうことをやってみたいけど……」というような。
おぐ だらかこそ、次は自己満でなく、「同性代が同世代をエンパワーメントする媒体」として動いていきたいという思いが生まれたんだよね。
みんなでつくる「場」を提供する。
おぐ vol.2では、読者が一からページをつくる「MILLENNIUM’S CREATION」を企画したよね。モデル、カメラマン、スタイリスト、ヘアメイクをやりたい人が集まって、企画会議を経てビジュアルをつくってもらった。今考えると、この企画が今の私たちの活動の「種」かな。みんなの情熱を共有するとか、活動を知ってもらうための場をつくる方向性になっていった気がする。
みゆ 誰かに任せたほうがうまくいくとわかったのもこの号で。自分がやりたいことではなく、みんながおもしろいと感じるものを、『ヤングマンベイグ』に向かってつくってもらえたら、それはもうみんなの『ヤングマンベイグ』になるなと。
ぼえ わたしはこのときから、『ヤングマンベイグ』との距離感が変わったかも。Instagramを見て応援はしてたけれど、「何かをやりたいけど、まだやってないんです」って私はいつまで言い続けるんだろうと。踏み出さないと「1」は生まれないと痛感して、大学内でZINEみたいなものをつくってみたり。
おぐ vol.1との違いは、リリースイベントができたこともあるよね。同世代の子たちのライブやパフォーマンスを組み込んだりして、雑誌の中以外でもやってみたい人の機会をつくることができた。
みゆ 確かに次に発行するvol.2.5の発行のきっかけもイベントだよね。私のバイト先の人から「何かおもしろいことやってよ」と頼まれ、『ラフォーレ原宿』にできたコミュニティスペース『BE AT STUDIO HARAJUKU」で1週間イベントをやることが先に決定して。vol.2までの取材対象はミュージシャンや表現者など、すでに光が当たっている人たちだったけど、有名でなくても夢に向かってがんばっている子ってたくさんいるよな、私たちが取り上げるのはそういう子たちじゃないかなと。こうして友達の友達とか、身近でがんばっている2000年生まれ45人を紹介する「スポットライト」という企画が生まれた。
おぐ 東京だけでなく、全国でがんばっている同世代を見つけることを意識したよね。アートや音楽をやっている子が多かったので、ギャラリースペースでは、そうした作品の展示や販売もしたり。1週間で300人くらいの人に来ていただいて、みんなとゆっくり話ができたのもよかった。「自分はこういうことをやっている」という子も出てきたり。こういうダイレクトに自分たちの思いや活動を伝えられる場というのが、私たちには向いているのかなと。そこから私たちは『ヤングマンベイグ』という「場」をつくり、がんばっている人を応援したいという方向にシフトしていくようになったね。
スタッフ募集とこれから。
ぼえ スタッフ募集がかかったときは、「まじか!」と。同時期に憧れている編集プロダクションがインターン募集していて迷ったけど、お金ではなく同世代でつくる経験をしたいと思い、応募したんだ。一緒に活動できると分かった時は本当にうれしかった!
みゆ ぼえちゃんから長いラブレターをもらい、めちゃくちゃ愛を感じたので、一緒にやるならこの子だよねと。ちょうど私たち自身も就職活動で迷っていた時期で、こうして愛を伝えれば心は動くんだという参考にもなった(笑)。
おぐ ぼえも加わって、そのほか一緒に動いてくれる同世代のメンバーもたくさんできて。さらにこれからは多世代とも関わっていけたらとも思っているところ。今考えているvol.3の企画は、雑誌というカタチにこだわらずどんなものがいいか模索していて、「スナックヤングマン」という少人数で語り合う企画や、YouTubeを始めたりもしてる。
みゆ 私たちはこの先就職をし、学生ではなくなるけど、やっぱりいろいろな悩みを抱えながらも一緒に成長していく、その時々の気持ちを共有していく存在として『ヤングマンベイク』を続けていきたいな。
『ヤングマンベイグ』のメンバーが今、気になるコンテンツ。
TV:二十歳の挑戦|テレビ朝日
まだ何者でもない20歳の人たちがどういう夢を見ているのかという内容に、興味がそそられます。私たちもアーティストの作品を紹介するだけでなく、製作の過程や込められた思いを伝えられるようになりたいです。(おぐ)
Website:日本仕事百貨
将来『ヤングマンベイグ』を仕事にするための参考に。『日本仕事百貨』は大人目線で、人や場所の物語を掬い取っていますが、私たちは若者と大人をつなぐ役割となり、両者を効率よく結びつけていきたいです。(みゆ)https://shigoto100.com
Website:me and you
インタビュー記事や、同じ日の日記、映画の紹介もありますが、いちばんいいのは自分だけでは辿り着けないサイトが網羅されているリンク集。アクセスしやすく、かつみんなを救っているのが好きです。(ぼえ)
『ヤングマンベイグ』の製作物を大解剖!
雑誌『ヤングマンベイグ』vol.1からvol2.5まで、そしてグッズやイベント、vol.3の構想など、企画ごとの思いや舞台裏、プロダクションノートを聞きました。
vol.1
テーマは、2000年生まれの夢と葛藤。「2000年生まれの2000人の夢ともがきを集めて形にしたい」というアイデアから雑誌づくりがスタート。大学の学祭に突撃して直接アンケートを取ったりオンラインで集めたりしながら、2000人分のアンケート収集に苦労しつつ、およそ1年間の製作期間を必要とした一冊。企画会議などはなく、当時のコアメンバーと14名の仲間とともにやりたいことをどんどん詰め込んでいったもの。
Instagram
グッズ
イベント
vol.2
テーマは「おとな一年生」。衝動的に走り抜けた10代から、自分自身の生き方に向き合い始めた時期に入り、やりたいことや働くこと、結婚のことなどを取り入れたvol.2。企画会議、取材の依頼、ロケ場所選びなどに奮闘するなど製作チーム自身もたくさんのことを学んだ号でもある。前号はフリーだったが、さらに価値のあるものしたいと価格を500円に設定し、書店営業も行う。取扱書店募集中。
vol.2.5
全国の2000 年生まれにスポットライトを当て、映像やファッション、アートに音楽など、自分と向き合い挑戦し続ける45人を紹介。『BE AT STUDIO HARAJUKU 』で開催したイベントでは、彼らの作品やプロダクトを展示販売した。
vol.3?
photographs by Masaya Tanaka text by Kaya Okada
記事は雑誌ソトコト2023年1月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。