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特集 | ローカルヒーロー、ローカルヒロインU30

千葉桃子さんは、ローカルコミュニケーター!

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移住した岩手県・洋野町(ひろのちょう)で「ローカルコミュニケーター」を名乗り、仕事に、遊びに、全力で取り組み、地域の魅力を発見している千葉桃子さん。「総合的な探究の時間」では高校生と一緒に課題を掘り下げます!

目次

埼玉県から洋野町へ。 地域づくりや教育に従事。

埼玉県さいたま市で育ち、高校2年生までは美容師になろうと思っていた千葉桃子さん。ただ、両親からは「大学へ行ってからでも遅くない」と将来についてのアドバイスを受け、「大学で何を学びたいのか」と考えていたとき、テレビドラマ『あまちゃん』がきっかけで地域活性化やまちづくりに興味を持った。両親が岩手県出身だったこともあり、「将来は岩手県の地域活性化に携わりたい」と、大学進学を決意。教育にも興味があったので教職課程を履修し、社会科の教員免許を取得。また、フリースクールでボランティアを行い、生徒と一緒に訪れた東北地方の関係人口としても活動した。
卒業論文のテーマは、「新しい地域のありかた」。関係人口やオンラインを用いた地域との関わり方について調べた。「多くの地域を訪れ、プレイヤーと知り合うなかで『地方で働きたい』という思いが芽生えました。でも、両親からは『地方で働くなら公務員になりなさい』と勧められ、そのための勉強をすることに。ただ、公務員とは違う仕事に就きたい気持ちも強く、モヤモヤしていました」と千葉さん。そんなとき、前の職場である『fumoto』に出合い、洋野町と関わるようになった。
就職活動で地方自治体の公務員試験を受けた千葉さんだったが、残念ながら不合格。『fumoto』の代表理事の大原圭太郎さんに誘われて就職し、「ひろのの栞」という洋野町の人や産業、文化を紹介するウェブサイトの制作など関係人口に関する業務に携わり、1年半ほど勤めた。同時に、町内にある岩手県立種市高校の『総合的な探究の時間』のコーディネーターも務め、教育の知識や経験を生かして高校生と地域をつなぎ、高校生のチャレンジの伴走を行った。
高校で活動するなかで、「もっと教育に関わりたい」と感じた千葉さんは、2022年の秋、『いわて圏』という洋野町から約250キロメートルも離れた県南の一関市にあるまちづくり会社に転職した。「今の仕事も続けつつ、県北での仕事を増やしたかったから」と洋野町に残り、リモートワークで仕事に打ち込んでいる。
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今日は『ヒロノット』でリモートワーク。
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右/コワーキングスペース。中央/『いわて圏』のスタッフと打ち合わせ。左/『ヒロノット』は、閉校になった中学校をリノベーションしてコワーキングスペースや簡易宿泊室などを設けた複合施設。
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右/洋野町の山側、大野地区には牧場も広がる。左/こちらは海側。「初めて見た洋野の風景がここ、宿戸大浜。初心に戻りたいときに来ます」と千葉さん。

いくつもの肩書で、 自分の可能性を広げる!

いろいろな肩書で仕事にチャレンジしている千葉さん。『いわて圏』ではディレクターとして、主に教育関連の仕事に力を入れている。高校の「総合的な探究の時間」のコーディネーターや、探究学習やマイプロジェクトを発表する「全国高校生マイプロジェクトアワード」の「岩手県Summit」の事務局の運営、関係人口の創出事業にも携わっている。
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ローカルコミュニケーター、ローカルクリエイター、高校魅力化コーディネーターなどいろいろな肩書を持つ。
「ローカルクリエイター」の肩書で、イラストの仕事も複業として請け負っている。「複業講座『わたしたちの月3万円ビジネス』を受け、チャレンジしています。町役場の方が私のSNSを見て、『ビーサン跳ばし選手権inひろの』の参加賞のビーチサンダルのデザイン業務を発注してくださったり、オンラインで地域と関わる『さとのば大学』の仲間がチラシ制作を依頼してくれたり」と言う。
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洋野町の「ビーサン跳ばし選手権inひろの」の参加賞のビーチサンダルのデザインや、「ひろのびより」というかわら版の制作など、複業も行う。

「桃子さんがいるから」と、 洋野町に戻りたくなる存在に。

千葉さんの仕事に、岩手県立種市高校と大野高校の「総合的な探究の時間」のコーディネートがある。「総合的な探究の時間」とは、生徒それぞれが課題を発見し、解決していく能力を育むための授業で、千葉さんは、課題を探究する生徒の興味や関心を高める地域のプレイヤーや、地域おこし協力隊隊員に学校に来てもらって、講演会や対話の時間を設け、生徒にアドバイスを行うなど、探究を深掘りできるよう導いている。
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「総合的な探究の時間」で千葉さんと一緒に学習した岩手県立種市高校の3年生。防災ゲームをつくった。
防災をテーマにゲームを制作した宮澤桃依子さんは「地震や津波の怖さについて考えることができました」と、野中優妃さんは「命は自分で守らなければと改めて意識させられました」と、下沢月乃さんは「もしもまた地震や津波が襲ってきたときの備えを学ぶことができました」と話す。そして、千葉さんについて伺うと、「地域をよくしようと貢献してくださっていて、尊敬しています」「いろんなところへ行って、地域の魅力を発信してくださり、すごいと思います」「何もないと思っていた田舎に楽しいところがたくさんあると教えてくれる、憧れの存在です!」と答えた。
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右/潜水士になる「海洋開発科」があり、NHK朝ドラ『あまちゃん』のロケも行われた種市高校。玄関には南部もぐりのヘルメットが。左上/種市高校の校舎。左下/「総合的な探究の時間」で学んだ生徒たちと。
千葉さんはうれしそうに聞きながら、「『総合的な探究の時間』は、3年生の文化祭での成果発表でいったん終わってしまいますが、探究すればするほど課題の深さや大きさが見えてきたはずですから、卒業してからもずっと探究し続けてほしいです。そのための視野を広げることが授業の目的です。地域の魅力と課題を知り、いろいろな人と会い、話したことを将来に生かしてほしいです」と生徒たちにエールを送った。
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千葉さんを応援する地域の先輩・大原さん(右)と眞下さん(左)。
「総合的な探究の時間」の仕事を千葉さんに勧めたのは、オンラインインターンで知り合った水産加工会社『北三陸ファクトリー』取締役で、自身もコーディネーターを務める眞下美紀子さんだ。「千葉さんはフラットな立場で地域に飛び込み、人と人を結びつけたり、風穴を開けたりできる存在。そんなIターン者や関係人口が増え、多様で賑わいのある地域になればうれしいです」と話す。元・地域おこし協力隊隊員だった経験を生かして事業を展開している大原さんも、「洋野町には新しく何かを始められる余白が多く、可能性に満ちています。千葉さんのように洋野に来て、やりたいことにチャレンジしてほしい」と期待する。
常に明るく、元気な千葉さんだが、仕事に悩んだり、頑張りすぎて疲れたりすることもある。そんなときには走るそうだ。「朝や仕事終わりにランニングをすると気分転換になり、メンタルが整うので、私には欠かせない習慣です」と言う。町役場の職員に誘われてランニングサークルに入り、2022年10月に行われた洋野町駅伝大会に出場して区間賞も獲った。「自信にもなりましたし、仕事以外のつながりもできました。ランニングとアイスクリームが私の原動力です」と喜ぶ。
今、24歳。その強みを尋ねると、「高校生との距離が近いので、”お姉さん的“な立場になれること。学校の勉強以外にも楽しいことをシェアしたり、悩み事を相談してもらえたり。そんな信頼しあえる関係になれたら」と答えた。さらに、「卒業して洋野町を出たとしても、『洋野には桃子さんがいるから』と戻ってくるきっかけになるような存在になりたいです」と。
地域の魅力は、何よりも人。洋野町がそんな地域になるように、千葉さんは走り続けている。
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右上/「総合的な探究の時間」で岩手県立大野高校を訪れた後、よく立ち寄って食べるそう。右下/複合施設『おおのキャンパス』で販売されている、大野地区の牧場の乳牛のミルクを使ってつくられたソフトクリーム。左上/千葉さんのお気に入り、『旬魚旬菜かめふく』の刺身定食。左下/『いわて圏』のメンバーが一関市から洋野町を訪問。
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右上/『いわて圏』代表の佐藤柊平さん(左)と。右は大原さん。中央上/種市高校の「総合的な探究の時間」から始まったビーチクリーンプロジェクト。左上/複業講座の仲間の畑で農作業体験。右中央/洋野町駅伝大会で町長から表彰状を受け取る。右下/イラストのワークショップを実施。中央下/初参加で区間賞を獲得。すごい! 左下/「ひろのマリンフェスタ2022」の「ビーサン跳ばし選手権inひろの」の様子。

「ローカルコミュニケーター」・千葉桃子さんが今、気になるコンテンツ。

Twitter:淡路ファームパーク イングランドの丘

最近の癒しは動物を見ること。『淡路ファームパーク』の羊の「ひまりちゃん」が推しです。おとぼけな顔をしていて、かわいいんです。「ひまりちゃん」以外にも、個性豊かな動物がいるので、癒されたい方におすすめします。https://twitter.com/englandhill_zoo

YouTube:=LOVE(イコールラブ)公式チャンネル

小学生の頃から無類の女性アイドル好き。これまでたくさんのアイドルにハマりましたが、今一番アツいのが『=LOVE』。歌やダンスはもちろん、さまざまなことに挑戦し続けるメンバーに、元気と勇気をもらっています。https://www.youtube.com/channel/UCv7VutirxDn3RWIJXI68n_A

Book:メアリー・アリス いまなんじ?

ジェフリー・アレン著、ジェームズ・マーシャル著、小沢 正訳、童話館出版刊
転職したてのとき、絵本を取り扱う知人がきっかけで出合いました。「とにかく仕事が好き」な主人公のメアリー・アリスが自分と重なり、誰にも代わられないような存在になりたいと思いました。
photographs by Hiroshi Takaoka  text by Kentaro Matsui

記事は雑誌ソトコト2023年1月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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