2011年3月11日に東日本大震災があった東北の“いま”を伝えるコーナーです。東北で生まれているソーシャルグッドなプロジェクトや地域で活動する人々を紹介します。
新しい自治会や「みんなの居場所」が孤立を防ぐ“つながり”をつくる。
東日本大震災後、おもに宮城県仙台市内の仮設住宅や災害公営住宅で自治会運営やコミュニティ形成などの支援活動を行ってきた認定NPO法人『つながりデザインセンター』(通称:『つなセン』)。活動の原点は、仙台市太白区あすと長町地区の仮設住宅における、さまざまな被災地から集まってきた入居者同士のコミュニティづくりにある。そこで育まれたコミュニティを災害公営住宅に移ってからも継承していくため、居住者のほか、支援を行っていた団体や大学研究室などが連携し、コミュニティ形成・居場所づくりのプラットフォームとしてNPO法人を設立した。
活動の中心となるコミュニティ形成支援事業では、住民主体による自治組織の立ち上げや、自治組織の役員会・総会運営などのサポートを行う。『つなセン』副代表理事で、東北工業大学で住まいやまちづくりの研究を行う新井信幸さんは、次のように話す。「自治組織をうまく機能させるポイントは、共用部の掃除や草むしりなど、最低限やらないといけないことに注力し、お祭りやイベントなど任意の部分を切り離すことです。マンションの管理組合のイメージですね」。実際、『つなセン』が支援を行っていた宮城県塩竈市内の災害公営住宅では、自治会発足前のアンケート調査では42.1パーセントが「入会したくない」と回答していたが、自治会の義務を減らして役割をスリム化したことで、ほぼ全世帯が入会したという。
『つなセン』ではまた、利用が滞りがちな公営住宅の集会所が“みんなの居場所”となるよう、イベント企画や運営の支援も行う。「居場所づくりで大事なのは、外部の多様な団体が主体となってさまざまな活動を行うことです。そうすると参加者はイベント・活動を選べるので、より多くの人が集会所を利用することになり、多様なつながりが生まれます」と新井さん。
最近は特に、「孤立を防ぐ居場所づくり」に力を入れている。交流を目的としたイベントには出てこない人もいるため、ある市営住宅の集会所でスマホの使い方を教える「スマホサロン」を開いたところ、これまで集会所を利用したことのない人も参加してくれた。多くの人にアプローチするためには、運営主体の多様化に加えて企画の多様化が必要だ。
『つなセン』は今後も、「孤立を防ぐコミュニティ支援」として、公営住宅における住民自治運営支援や集会所の居場所化支援を行っていく。そして、そのような実践だけでなく、活動実績の効果検証や情報発信にも力を入れていこうとしている。
東日本大震災の被災地だけでなく、各地で高齢化と孤立が進む日本社会において、「孤立を防ぐ新たな地域運営」に取り組む『つなセン』の知見は、必要不可欠なものだろう。
photographs by Tsunagari Design Center text by Makiko Kojima
記事は雑誌ソトコト2023年11月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。