ソーシャルでエシカルな関心をもつ人を惹きつける、街の中に広がる学びの場「ソーシャル系大学」。年に一度、全国のソーシャル系大学の運営スタッフが集まる会議が開催されている。2018年6月に開催された「コミュニティカレッジ・バックステージ」(CCB)Vol.4は、開校3年目を迎える『信州アルプス大学』の主催で開催された。学長の中村剣さんのリードのもと、大学運営の「虎の巻」をつくるべく、全国で大学運営に携わる人たちによる、インテンシブなセッションが始まった。
ソーシャル系大学運営の基本に立ち返り、志を確かめ合った3日間。
「CCB」は、2015年『神戸モトマチ大学』、『ハマのトウダイ』、『柏まちなかカレッジ』の呼びかけで始まった、全国のソーシャル系大学の運営スタッフによる裏方の会議体である。第1回は神戸市で、第2回は柏市で、第3回は高知市で開催されてきた。今回、ホストを務めるのは、開校前から「CCB」に参加してきたワインのまち、塩尻市を拠点とする『信州アルプス大学』。今回は、全国のソーシャル系大学9校から約40名が集まった。
ワークショップ当日のオープニングを飾るのは、『信州アルプス大学』と塩尻市市民交流センター・市民活動支援係が制作したという楽しい動画。会場となった「塩尻市市民交流センター えんぱーく」に、日頃集まる老若男女が、曲に合わせて4小節ずつ踊り、多様な活動の一端を見せてくれた。その後は参加者全員が4つのテーブルに分かれて、組織運営のノウハウ、授業立案の方法論、集客や広報の工夫、将来の構想について話し合った。短い時間でアイデアを出し合う緊張感漂うプログラムだったが、専門家の集まりだけあって、どのグループもあっという間に課題をまとめあげる。小口利幸市長の講演を聞いたあとは、グループで話し合った成果が、カラフルな和紙に彩られた巻物に仕上げられ、大学運営「虎の巻」が完成した。
「虎の巻」に盛り込まれたアイデアには、組織運営については「固定費をゼロに近づけるべし」、授業立案については「次はどうしよう?と言いだすべし」、広報については「入りやすさをデザインすべし」といったありがたい提言が並ぶ。そして将来的には、各地のソーシャル系大学が「地域の課題に誰もが取り組める存在」となること、「自発性のある『お節介文化』を生み出す」ことが提案され、「にせもの」の大学という場がつくり出すオルタナティブな取り組みの大切さが明記された。
晴天が続いたプログラム最終日も、「塩尻市市民交流センター えんぱーく」の裏側までを解説つきで見学するコースや塩尻市に点在するワイナリーをめぐるコースなどのオプショナルツアーが用意され、塩尻の町を立体的に理解する機会となった。柏市、川崎市、奈良市、大阪市、尼崎市、広島市、高知市で活動を続ける各大学はそれぞれに独自のプログラムを展開しながら、地域の課題に向き合い、人材を発掘し、他の組織と連携し、自由な公共圏をつくり出している。ソーシャル系大学運営の基本に立ち返り、志を確かめ合った3日間だった。
信州アルプス大学
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