エネルギーと聞くと、「自分にはどうにもならないもの」と感じるかもしれない。でも、本当は暮らしに密接に関わっているし、選ぶことだってできるんだ──。『ハチドリ電力』の田口一成さんが勧めるのは、エネルギーに向き合うための考え方を教えてくれる5冊。
田口一成さんが選ぶ、SDGsと地球環境に触れる本5冊

日本のCO2の約4割は、発電によって排出されています。そして、電力供給の約8割は火力発電によるもの。これを自然エネルギーに切り替えれば大きなCO2の削減効果があると考え、2020年春に自然エネルギー100パーセントの電力取次事業『ハチドリ電力』を立ち上げました。お客様からいただく電気代の1パーセントを自然エネルギー発電所の新設費用に、もう1パーセントを社会貢献活動への寄付に充て、そのうえで大手電力会社よりも安いか同等の料金設定にしています。地球の未来を守るには、2030年までにCO2を半減させなければいけない。早急に行動する必要があるんです。
事業名は、『ハチドリのひとしずく─いま、私にできること』に掲載されている、南アフリカの先住民に伝わる物語からいただきました。山火事が起こり森の動物たちが逃げるなか、ハチドリという小さな鳥だけは、クチバシで水を運んで1滴ずつ火に落とします。動物たちから「そんなことをして何になるんだ」と問われたハチドリは、「私は、私にできることをしているだけ」と答えるのです。この話がとても好きで、著者の辻信一さんに「名前を使わせてください」とお願いしました。エネルギーにおいても、「自分ひとりが電気を変えたところで何も変わらない」と考えるのではなく、「微力だけど無力じゃない」という心持ちで、一人ひとりにアクションを起こしてほしいと願っています。
それはビジネスにおいても同じです。『ビジネスの未来─エコノミーにヒューマニティを取り戻す』は、これまでの資本主義社会の歴史と性質をひもときながら、もはや経済成長が豊かさや幸福につながっていないことをわかりやすく伝えてくれる本。「便利で快適な社会」を「真に豊かで生きるに値する社会」に変えていくために、ビジネスには何ができるのか。僕も山口さんと同じ未来を見つめています。
『あるものでまかなう生活』には、日常生活のなかで具体的にできることが紹介されています。ものを最後まで使い切る方法、これまで捨てていたものや家に眠っているものを活用する方法。ゴミ処理には多大なエネルギーを必要とするので、一人ひとりがゴミを減らしていくことが大切です。もちろん、電力の切り替えの話も出てきます。
エネルギーについて考えることは、遠い世界のことではけっしてありません。まずは暮らしの中から、「いまできること」を考えていただけるとうれしいです。

photographs by Yuichi Maruya text by Emiko Hida
記事は雑誌ソトコト2021年9月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。