SDGsの17の目標はさらに169のターゲットに分かれています。まずは17の目標がそれぞれ何を目指しているのか、具体的なターゲットのエッセンスも入れて紹介していきます。また、それぞれの目標に対し、「世界の現状」がどうなっているのかを知ることで、今日からできることは何か、考えるための入り口にしてみてください。
目標1 貧困をなくそう
あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ。
貧困とは、生計を確保する所得と資源がないことだけに限らない。飢餓や栄養不良、教育や基本的サービスへのアクセスの制約、差別と排除などさまざまな形で表れる。各国の定義による、あらゆる次元の貧困状態にあるすべての人々の割合を半減させることなどを目標にする。
世界の現状
全世界で7億8300万人、開発途上国では10人に1人が一日1ドル90セントという国際貧困ライン未満で家族と暮らしている。2016年の時点で、なんらかの社会保障現金給付を受給できる人は世界人口の45%にとどまっている。
目標2 飢餓をゼロに
飢餓をゼロにし、食料の安定確保と栄養状態の改善、持続可能な農業を推進する。
農林水産業が適切に機能すれば、すべての人に栄養豊富な食料を提供し、適正な所得を創出しつつ、環境を守ることができる。しかし生物多様性の劣化や気候変動などで実現されていない。すべての人々が常に安全で栄養のある食事を得られるようにすることを目指す。
世界の現状
全世界で8億1500万人、世界人口の9人に1人が栄養不良に陥っている。とくに開発途上国では栄養不良率が人口の12.9%にのぼる。栄養不良が原因で死亡する5歳未満の子どもは年間310万人で、子どもの死者数の45%を占める。
目標3 すべての人に健康と福祉を
あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する。
幅広い疾病を全面的に根絶させ、新旧の多種多様な健康問題に取り組む。妊婦の安全な分娩やHIV、マラリア、結核などの伝染病の根絶のほか、薬物乱用やアルコールの有害な摂取の防止・治療の強化、道路交通事故による死傷者の半減、たばこの規制等も視野に入れる。
世界の現状
1990年以来、一日あたりの子どもの死亡数は1万7000人減少しているが、今も毎年500万人以上の子どもが5歳の誕生日以前に命を落としている。2017年には新たに180万人がHIVに感染し、エイズ関連の疾病で94万人が死亡している。
目標4 質の高い教育をみんなに
すべての人々に包摂的、公平で質の高い教育を提供。生涯学習の機会を促進する。
包摂的な教育へのアクセスは生活の質を改善し、世界の大きな課題への革新的な解決策を考案するのに必要なツールを、各地の人々に与えることにもつながる。初等教育、中等教育にとどまらず、就学前教育や技術教育、高等教育への平等なアクセスを提供できるようにする。
世界の現状
開発途上国の初等教育就学率は91%に達したが、まだ5700万人の子どもが学校に通えていない。その半数以上はサハラ以南のアフリカで暮らす。小学校就学年齢で学校に通えない子どもの約50%は紛争地域に住んでいるものとみられる。
目標5 ジェンダー平等を実現しよう
ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る。
差別と暴力に苦しむ女性と女児は多い。未成年者の結婚など有害な慣行を全廃し、女性と女児に教育、医療、働きがいのある仕事へのアクセスを提供するとともに、政治的・経済的意思決定への参画を可能にする。適正な政策および拘束力のある法規を導入・強化する。
世界の現状
世界の18か国では妻が働くことを夫が合法的に禁止できる。39か国では、息子と娘の相続権が平等ではない。49か国には女性を家庭内暴力から守る法律がない。女性の政界進出は全世界で進むが、女性国会議員の割合は23.7%に過ぎない。
目標6 安全な水とトイレを世界中に
すべての人々に水と衛生へのアクセスを確保する。
劣悪な経済情勢やインフラの不備で、数百万人が不適切な給水、衛生状態に関連する病気などで命を落としていることから、安全で安価な飲料水の普及と公平なアクセスを達成する。汚染の減少、有害な化学物・物質の放出の最小化、未処理排水の割合半減なども目指す。
世界の現状
人口の10人に3人は安全に管理された飲料水サービスを、10人に6人は安全に管理された衛生施設を利用できない。40%以上は水不足の影響を受け、この割合は今後さらに上昇する(2050年までに4人に1人以上)と予測される。
目標7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに
手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する
エネルギーへの普遍的なアクセス、エネルギー効率の改善、再生可能エネルギーの利用拡大に注力する。各々の支援プログラムに沿って、開発途上国をはじめとするすべての人々に現代的で持続可能なエネルギーサービスを供給できるよう、インフラ拡大と技術向上を行う。
世界の現状
2015年、最終エネルギー消費に再生可能エネルギーが占める割合は17.5%に達した。一方で人口の13%は依然として現代的な電力を利用できない。世帯エネルギーとしての可燃燃料使用による屋内空気汚染で、2012年には430万人が命を失った。
目標8 働きがいも経済成長も
包摂的かつ持続可能な経済成長、雇用とディーセント・ワークを推進する。
ディーセント・ワークとは、「働きがいのある人間らしい仕事」のこと。持続可能な経済成長のため、経済を刺激し、環境に害を及ぼさない、質の高い仕事に人々が就ける条件を整備していく。多様化、技術向上、またイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成することなどを目標にする。
世界の現状
2016年時点で全世界の労働者の61%がインフォーマル・セクターで雇用されている。女性の無償の育児・家事労働は男性の2.6倍にあたる。2016年から30年にかけ、全世界で新たに労働市場に参入する4億7000万人に雇用を提供する必要がある。
目標9 産業と技術革新の基盤をつくろう
レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進、イノベーションの拡大を図る。
質が高く、信頼できる持続可能かつレジリエント(強靭)な地域・越境インフラなどのインフラを開発し、すべての人々の安価で公平なアクセスに重点を置いた経済発展と福祉を支援する。各国の状況に応じ、雇用及びGDPに占める産業セクターの割合を大幅に増加させるなどする。
世界の現状
多くの開発途上国では、道路や情報通信技術、衛生施設、電力、水道といった基礎インフラが整備されていない。低所得国をはじめ、多くのアフリカ諸国では、インフラの未整備により企業の生産性が約40%損なわれている。
目標10 人や国の不平等をなくそう
国内および国家間の不平等を是正する。
このゴール達成のためには、社会的弱者や阻害された人々のニーズに配慮しつつ、普遍的な政策を採用する必要がある。税制、賃金、社会保障政策などで平等の拡大を図り、各国の所得下位40%の所得成長率について、国内平均を上回る数値を漸進的に達成し、持続させる。
世界の現状
20%の最貧民層世帯の子どもは、20%の最富裕層の子どもに比べ、5歳未満で死亡する確率が3倍高い。社会保障は大幅に拡大しているが、障害のある人々が高度な医療費を支払わなければならない可能性は上がっている。
目標11 住み続けられるまちづくりを
都市を包摂的、安全、レジリエントかつ持続可能にする。
雇用と豊かさを生み出しながらアイデア、商取引、文化、科学、生産性、社会開発など多くの活動の拠点になり、土地や資源に負担をかけない都市を維持する。適切、安全かつ安価な住宅及び、交通機関など基本的サービスへのアクセスを確保し、スラム化などの課題を解決する。
世界の現状
2030年までに都市住民の数は現在の35億人から50億人に達する見込みである。急速な都市化は水道供給や下水、生活環境、公衆衛生に圧力を加える。今後数十年の都市膨張の95%は、開発途上国で起きると見られている。
目標12 つくる責任つかう責任
持続可能な消費と生産のパターンを確保する。
資源効率化と省エネの促進、持続可能なインフラの整備、基本的サービスと、環境にやさしく働きがいのある人間らしい仕事の提供、すべての人々の生活の質的改善とその持続を目指し、天然資源の管理やフードロスの減少、廃棄物の大幅な削減などをゴールとする。
世界の現状
開発途上国の1人あたりのマテリアル・フットプリント(国内最終需要を満たすために消費された天然資源量)は2000年の5メートル/トンから17年には9メートル/トンに増大。経済成長で大量生産・消費が進んだためと考えられる。
目標13 気候変動に具体的な対策を
気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る。
2016年に発効された「パリ協定」。気温上昇を抑え、温室効果ガスの削減にすべての国が取り組む温暖化対策のための国際ルールに基づき、気候変動対策を政策、戦略及び計画に盛り込む。また、気候変動に起因する危険や自然災害に対するレジリエンス、適応力を強化する。
世界の現状
1880年から2012年にかけて地球の平均気温は摂氏0.85度上昇した。平均気温が1度上昇するごとに、穀物の収穫量は約5%ずつ減少する。海水温の上昇で雪氷の量が減少し、1901年から2010年にかけ世界の平均海水面は19センチ上昇した。
目標14 海の豊かさを守ろう
海洋と海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する。
現在、汚染による沿岸水域の劣化や海洋の酸性化が進み、生態系と生物多様性の機能に悪影響を与えている。そのため海洋保護区を管理し、乱獲や海洋汚染、酸性化を抑える規制の導入が必要だ。さらにその対策を通し、海洋資源の持続的利用、経済的便益を増大させる。
世界の現状
海洋は人間がつくったCO₂の約30%を吸収し、地球温暖化の影響をやわらげている。海洋と沿岸部の生物多様性に依存して生計を立てる人々は30億人超。資源と産業の市場価値は年間30兆ドルで、全世界のGDPの約5%に相当する。
目標15 陸の豊かさも守ろう
森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止と逆転、生物多様性損失の阻止。
森林保護と砂漠化対策を進めることで、天然資源の管理を強化し、土地生産性を高める。多様性の損失を阻止するため、絶滅危惧種を保護し、絶滅防止のための対策を講じる。また、動植物の密猟や違法取引の撲滅を目指し、違法な野生生物製品の需要・供給に対処する。
世界の現状
26億人が農業に直接依存しているが、農地の52%は土壌荒廃による中程度、または深刻な影響を受けている。毎年干魃と砂漠化によって1200万ヘクタールの土地が失われ、それは1年間で2000万トンの穀物が栽培できる面積にあたる。
目標16 平和と公正をすべての人に
公正、平和かつ包摂的な社会を推進する。
殺人、人身取引、性的暴力の脅威を取り除き、平和で包摂的な社会づくりに取り組むため、すべての人に司法へのアクセスを提供し、実効的で責任ある制度を構築する。組織犯罪を根絶、グローバル・ガバナンス機関への開発途上国の参加を拡大、強化することなどを目指す。
世界の現状
贈収賄、横領、窃盗、脱税は開発途上国に年間およそ1兆2600億ドルの被害を及ぼす。これは1日1ドル25セント未満で暮らす人々が少なくとも6年間、その額以上で生活できる金額に相当する。腐敗は司法や警察にも広がっている。
目標17 パートナーシップで目標を達成しよう
持続可能な開発に向けてグローバル・パートナーシップを活性化する。
すべての人々が人間と地球を中心に据え、グローバル、地域、国内、地方など、各レベルで得意分野を生かして協力することで、単独では実現させづらいゴール達成を目指す。資金面でも、複数の財源から開発途上国のための追加的資金源を動員し、投資促進枠組みを導入、実施する。
世界の現状
2014年のODA総額は1352億ドルと過去最高の水準を記録。世界の若者の30%はオンライン歴5年以上のデジタルネイティブで、立場や国籍の異なる人とつながることもできる。しかし世界で40億人以上はインターネットを利用できていない。
\ここもポイント!/
・ノーベル平和賞受賞のマララ・ユスフザイさんは今年3月の初来日の際、女子教育の推進を安倍総理に強く要請した。
・日本では企業によるSDGsへの取り組みが増えてきた。得意分野が17の項目のどれに当てはまりそうかマッピングする会社も。
・統計では女性のほうがSDGsへの認知度が低いが、マイバッグを持ち歩くなど、意識せずに実際の行動を起こしている。
参考:国連広報センターのホームページ(www.unic.or.jp)内、SDGsに関する各種広報資料等を参考に作成しました。