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サスティナビリティ

特集 | 続・ウェルビーイング入門

福島 徹さんが選ぶ「食事・共食×ウェルビーイングを感じるアイデア本5冊」

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「食の原点は家庭にある」という考えのもと、産地食材とそれらを材料につくられる、おいしい惣菜を提供するスーパーマーケット『福島屋』。なぜ福島屋で売られている食品が、消費者に豊かで楽しい食卓・団欒をもたらすのか? その背景や理由をひもとく本を、会長の福島徹さんに教えてもらいました。

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(左から)1. シン・ニホン ─AI×データ時代における日本の再生と人材育成 / 2. 生命科学の原点と未来 ─現代科学への呈言とパイウォーター理論
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(左から)5. 美しいもの / 3. シューマンズ バー ブック ─ファンと共に歩んだ企業10 / 4. 魯山人の料理王国
スーパーマーケットのオーナーという立場上、第一次産業に従事されている方々の苦労は常日頃から感じています。私たちの命、ひいては豊かな時間・食卓を支える食べ物を生産しているにもかかわらず、誰からもリスペクトされ、職業として人気が高いかというとそうでもなく、収入的に恵まれているとも言えません。『シン・ニホン』の著者は、そんな状況に陥っている第一次産業のあり方を根本から考え直さなければ、たとえAIを導入したとしても、まもなく訪れるかもしれない世界的な食の問題に対応することは難しいと警告します。

同時に、地方で限界集落や過疎といった人口減少に端を発する問題が深刻化していくなか、「風の谷」という、『風の谷のナウシカ』にインスパイアされた、自然とともに豊かに生きる未来をつくることの大切さを呼びかけます。「人は何のために生きているのだろうか」、「何を大事にしなければいけないのだろうか」という問いには、食を消費者へ届けることを生業にする私たちが考えるべき「ウェルビーイングとは何なのか?」という無視できない課題も多分に含まれているでしょう。第一次産業従事者の仕事を由縁とする家族や仲間とともに過ごす時間、そして食を共有するという日常茶飯事の光景、その”当たり前の尊さ“を再確認させられる一冊でもあります。

『生命科学の原点と未来』は、名古屋大学の山下昭治さんが研究されていた「パイウォーター」について書かれた本です。詳しい話は割愛しますが、簡単に言えば、植物の枝を切ると水が滲み出てきますが、そういう生体水のなかでもっともコンディションのいいものがパイウォーターです。『福島屋』でもパイウォーターをつくるための浄水器を設置し、その水でサラダに使う野菜を洗ったり、惣菜を煮たり、切り花を浸けたりしていて、鮮度が長持ちすることを実感しています。私は毎朝、オーガニックのお茶やコーヒーをこの水で淹れて飲んでいて、ひと口飲んだ瞬間からよりよい状態に生まれ変わる感覚を得ています。これで一日のスタートをいいテンションで切ることができるんです。

私の場合は水を深掘りすることで豊かな状態を得ているわけですが、口にするものの中に、ひとつでもこだわれるものがあると、これをタネにして食卓で話に花を咲かせることもできますし、自分なりのウェルビーイングなひと時を誰かと共有することもできると感じています。

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ふくしま・とおる●1951年東京都生まれ。酒屋、コンビニエンスストアを経て、食品スーパー『福島屋』を開業。レストランや生花店など東京都羽村市を中心に六本木や秋葉原にも店舗を展開。著書に『福島屋 毎日通いたくなるスーパーの秘密』(日本実業出版社)。
photographs by Yuichi Maruya text by Kentaro Matsui

記事は雑誌ソトコト2022年7月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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