「公民館は本来、住民が自発的に地域づくりを実践する場所でした」と話す、沖縄県那覇市の公民館館長・南信乃介さん。公民館の使い方をコーディネートする役割も担ううち、地域づくりの場として復活しつつある。南さんの公民館運営に影響を与えた5冊とは?
今回選んだのは、どんな状況の中にあっても、人がつながって相互理解に努め、不条理を団結する力に変え、未来につなげていくにはどうしたらいいのかを考える際にヒントが得られる本です。
『学生よ』は、フランス革命直前という混乱した時代に書かれた、民主主義的な大学教授の講義録です。この本の中で印象に残っているのは「思想の共通性」という言葉。「お互いが理解しあって、力を合わせられること」にその言葉を当てはめています。私が他人との関係性をつくるときに意識したいと考えているのがこの思想の共通性で、相手がどういう背景を持ち、どう感じて、どうしてここにいるのかということと常に向き合いたいと心がけています。
『公民館はどう語られてきたのか』は、公民館の成り立ちや歴史を語っている本です。公民館は「文化の向上のため市町村が設置した社会教育施設」ですが、もともとは荒廃した戦後社会、自分たちに必要なものは何か話し合い、行動するために誕生した地域づくり拠点でした。今では、公民館というと講師を呼んで講演をしてもらったり、趣味や教養のサークルなど楽しいことをしたりする場所という認識を持たれがちですが、もともとは住民がお互いの経験や知識を交換したり、必要なものを求め合ったり──つまり自分たちで社会をつくる機能と可能性がある場所だったのです。
現在、日本には約1万4000館の公民館があります。それだけの数があるということは、公民館の歴史を振り返り、捉えなおしが進めば、日本自体ももっと変わっていくと思うのです。公民館を運営する側だけでなく、利用する方たちの意識にもきっとウェルビーイングに近づく変化があるでしょう。
記事は雑誌ソトコト2022年7月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。