馬上敦子さんが選ぶ「就業×海と食とSDGsに触れる本5冊」

特集 | SDGs入門〜海と食編〜 | 馬上敦子さんが選ぶ「就業×海と食とSDGsに触れる本5冊」

2022.09.15

漁師さんになりたい人と、人材不足に直面している漁業の現場の人たちの声。その両方に向き合い続けている馬上敦子さんがセレクトしたのは、漁業への就業に向けたはじめの一歩として読んでおきたい本でした。

(左上から)1. 3時間でわかる漁業権 / 2. 漁 海と生きる
(左から)3. 奥の細道カヌー膝栗毛 ─鎌倉〜青森間1200キロ中年カヌーイスト単独航海記 / 4. 会社人生で必要な知恵は すべてマグロ船で学んだ / 5. Boys & Girls Be 漁師

長年『全国漁業就業者確保育成センター』が開催している就業セミナーやフェアを通じて、漁師さんをはじめ漁業に関する仕事に就きたい方に、全国の就業に関する情報を提供したり、アドバイスを行ったりしています。「漁師」と言っても、自ら船を所有する独立型と、大規模な漁を行う会社で働く雇用型でも違います。さらに漁を行う地域、魚種、漁法もさまざまなため、一人ひとりに合わせた対応が大切です。

漁師として独立したいという相談者からの質問で多くいただくのが「漁業権」にまつわるものです。漁業権とは、簡単に言ってしまうとその場所で漁を行う権利のことで、特例があるものの原則としてこれがないと漁ができません。ですが、同じ漁業権でも地域ごとの慣行に合わせて適用の仕方は異なっているため、取得方法や権利の内容についてこういうものとは断言できないのです。複雑で説明がしにくい漁業権について、歴史から仕組み、運用の実態など基本的な部分を理解しやすい表現で解説しているのが『3時間でわかる漁業権』です。最終的には、漁業をしたいと思っている地域の漁業協同組合に問い合わせるのが一番ですが、その前に漁業権について理解しておくのに適した一冊です。

先日、水産高校に伺った際、漁師さんになりたいという生徒に理由を聞くと、「漁師だったおじいちゃんが、かっこよくて憧れた」というような声が多くありました。そんなふうに漁師さんは歳を重ねてもかっこいい職業だと多くの人に知ってもらいたいと願っているのですが、その姿を見られるのが『漁 海と生きる』です。自らを「船上カメマン」と呼ぶ北海道釧路市出身の写真家・神野東子さんの写真集で、漁師さんと一緒に船に乗り込み撮影したさまざまなシーンが収められています。私がいいなと思うところは、若くてキラキラした漁師さんだけでなく、ベテランの漁師さんのありのままの姿を撮っている点。漁師さんが好きで、彼らのために撮り続けているという思いが写真を見ているだけで伝わってきます。自費出版のものなので、神野さんのSNSなどから問い合わせれば購入が可能です。

漁業の現場での人材不足は長年の課題ですが、近年、高校生や大学生がフェアに参加してくれています。「漁師の日」には毎年フェアを開催するなど、漁師さんになる夢を持った方が思い叶えられるように、そして漁業界で輝き続けられるように、活動を続けていきたいです。

まがみ・あつこ●漁業人材デザイナー。『全国漁業就業者確保育成センター』の事務局長をはじめ、漁業における職場環境の改善に取り組む。また「漁師の日(7月第3週月曜日)」を記念日として登録するための一翼を担う。9月19日開催の漁師フェアにも参加予定。

photographs by Yuichi Maruya
text by Kentaro Matsui, Maho Ise, Ikumi Tsubone, Reiko Hisashima, Sumika Hayakawa & Yoshino Kokubo

記事は雑誌ソトコト2022年9月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。