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サスティナビリティ

特集 | SDGs入門〜海と食編〜

河端雄毅さんが選ぶ「生物多様性×海と食とSDGsに触れる本5冊」

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魚類や甲殻類が捕食者からどんなふうに回避するかを研究している河端さん。その研究や発見から、魚たちのユニークな行動や謎多き生態が浮き彫りになります。魚をはじめとする海洋生物を深い目線で見つめる河端さんに、多様性が感じられる生き物について書かれた本をセレクトしてもらいました。

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(左から)1. 魚 ─講談社の動く図鑑MOVE / 2. うなぎのうーちゃん だいぼうけん
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(左から)3. 山中伸弥先生に、 人生とiPS細胞について聞いてみた / 4. 孤独なバッタが群れるとき ─サバクトビバッタの相変異と大発生 / 5. 右利きのヘビ仮説 ─追うヘビ、逃げるカタツムリの右と左の共進化
フィリピン沖で生まれた「うなぎのうーちゃん」は、黒潮に乗り、半年ほどかけて日本近海へ。たどり着いた海岸で見つけた川を上っていくとともに大きく成長する物語が、『うなぎのうーちゃん だいぼうけん』です。身近な魚であるウナギの稚魚がこんな長旅に出て、危ないことや楽しいことに遭遇し生きているなんて。これはその冒険をわかりやすく描いた絵本で、娘に読み聞かせたり、魚好きの甥っ子に贈ったりしたらとても喜んでくれました。

ところで、ウナギといえば、私たち長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科の研究グループが、ユニークな回避行動(捕食者から逃れるための行動)を発見しました。うーちゃんと同じニホンウナギの稚魚が、川の捕食者であるドンコから逃れるのですが、その逃げ方に一瞬、目を疑いました。ドンコにパクッと食べられたウナギの稚魚が、しばらくするとドンコのエラの隙間から後ろ向きにニョロニョロッと逃げ出してきたのです。それも1匹や2匹ではなく、ドンコに食べられた54匹中28匹が逃げ出すことに成功したのです。世界初の大発見でした。

回避行動についてはもちろん、ほかの魚類や甲殻類でも見られます。カタクチイワシが大群で泳ぎ、旋回するのもその一つ。ある程度捕食されるのを覚悟したような回避行動ですが、さまざまな回避の方法があることによって、魚類や甲殻類に多様性をもたらしていると言えそうです。

『魚』は、迫力ある写真が大きく掲載された、写真集のような魚図鑑。魚の生態についても詳しく説明され、魚好きならページをめくっているだけでワクワクするでしょう。

私は生き物の形に何のメリットがあるのかという「機能形態学」の研究も行っていますが、この図鑑を眺めていると、魚には本当にいろいろな形があることが見て取れます。ウナギの細長い体には、生き残るためにどんな仕掛けがあるのか、ヒレの形はどんなふうに役立っているのか、あるいは、この図鑑には「変顔」をした魚も紹介され、例としてシュモクザメが登場しますが、彼らの右と左の目はなぜこんなに離れていて、どんなメリットがあるのかなど、想像すればおもしろい仮説が見つかるかもしれません。さらに、水族館へ足を運んで本物の魚を観察すれば、誰も知らない発見をすることも十分にあり得ます。それくらい魚の形についてはわかっていないことが多いです。形の違いに焦点を当てて多様性を感じるのもおもしろいでしょう。

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かわばた・ゆうき●1983年、熊本県生まれ。京都大学農学部卒業、同情報学研究科社会情報学専攻修了。長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科准教授。専門は魚類行動学、生態学、機能形態学。魚類や甲殻類を対象にした捕食者からの回避行動を研究。
photographs by Yuichi Maruya text by Kentaro Matsui

記事は雑誌ソトコト2022年9月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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