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サスティナビリティ

特集 | SDGs入門〜海と食編〜

森信人さんが選ぶ「防災×海と食とSDGsに触れる本5冊」

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海に関する災害に対応しつつ、海の環境を保全することが求められています。「海の仕組みを理解しながら関心を持つことが、防災・減災と環境保全を両立させるための意識を育むことにつながる」と話す森信人さん。そのための5冊を選んでいただきました。

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(左から)1. ハワイの波は南極から ─海の波の不思議 / 2. 砂浜海岸の自然と保全
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(左から)3. 羊をめぐる冒険 / 4. 消えゆく砂浜を守る ─海岸防災をめぐる波との闘い / 5. SURF SCIENCE ─AN INTRODUCTION TO WAVES FOR SURFING
海についての防災を突き詰めると、極端にいえば「危ないので海に近づかないでください」になってしまいます。ですが、日本は海に囲まれ、海に親しむ文化が昔から当たり前に育まれてきました。バランスを取るのは難しいですが、環境がきちんと保全され、楽しく利活用できる海にしていくことが、防災、減災につながる場合も多くあります。今回は海の環境やおもしろさに思いを馳せることができ、まずはそれらに関心を持ってもらうことを通して、防災へ視野を広げていくための本を選びました。

『ハワイの波は南極から―海の波の不思議』は、科学者がサーファーに向けて書いた本です。海の波はどこで生まれて、どう大きくなって、どうやって沿岸にやって来るのかということを科学の面から説明しています。謎解きのような要素がちりばめられており読み物としておもしろく、教科書的な詳しさもあって、地形など沿岸の物理を学ぶことができる稀有な一冊です。サーフィンを例に高潮、津波、波浪などの仕組みを理解することで、より実感に基づいた防災への関心を持つことにもつなげられます。今回のテーマに沿った入門書としては最適でしょう。

『砂浜海岸の自然と保全』は、もう少し科学的・専門的な視点の本ですが、砂浜海岸の水質環境、海側・陸側それぞれの生態系、防災などの関係をバランスよく説明しています。海の利活用を考えた際、砂浜は海水浴などで「一般の方にいちばん近いところにある海」であり、海の環境について間近で見て、触れて、そして考えられる場所でもあります。防災の面では、特に砂丘や海岸林が防波堤のような役割を果たすことで、「自然に基づく解決策」と訳されるNature-based solutionsの一つとして有用です。こういった要素を複合的に俯瞰し、海への理解度を上げることが、砂浜保全の意識を高めるなど、一人ひとりの次の一歩につながっていけばいいと願っています。

国土交通省は、今後の海岸の目指すべき姿を「美しく、安全で、いきいきとしたもの」と表現しています。見て美しく、遊んで楽しい海岸、風景や水質、色や地形など地域それぞれの魅力がある海岸が全国にあり、それらを地域内外の人が愛する未来が訪れるのが、私も理想的だと考えています。今回紹介した本が、そんな海の可能性に触れるきっかけになってほしいです。それが、海の環境から考えられる防災意識を育てることになるのではないでしょうか。

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もり・のぶと●岐阜県出身。京都大学防災研究所副所長。気象・水象災害研究部門教授。津波、高潮、高波など、海の災害を引き起こす「ハザード」のほか、地球温暖化の影響などを研究。海の環境の保全や利活用から防災、減災に取り組む活動にも関心を持つ。
photographs by Yuichi Maruya text by Sumika Hayakawa

記事は雑誌ソトコト2022年9月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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