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サスティナビリティ

特集 | ローカルヒーロー、ローカルヒロインU30

『やまとわ』取締役/森林ディレクター・奥田悠史さんが選ぶ「自分を見つける本5冊」

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森林の川上から川下までをつなぎ直すさまざまな活動を行う、森林ディレクターの奥田悠史さん。「森づくりをまちづくりの視点から、まちづくりを自然資源の視点から考える」と話します。森林のおもしろさや現状、森林に関わる姿勢を学ぶことができる5冊を選んでもらいました。

*30代の先輩からU30の皆さんへ。今回は先輩たちの選書を通して、U30の皆さんに、自分たちにもこれからやってくる30代をより豊かに、気持ちいい生き方をしてもらえたらと思い、11名の方に本を選んでいただいています。
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21世紀の楕円幻想論─その日暮らしの哲学/平川克美著、ミシマ社刊
猟師生活が描かれた漫画で、何度も読み直しています。生きものを獲り、命を頂く生活。決して命を軽んじているのではなく、そこには喜びがあり人間味にあふれています。自然界とのバランスを考えさせられます。

樹木たちの知られざる生活─森林管理官が聴いた森の声/ペーター・ヴォールレーベン著、長谷川 圭訳、早川書房刊
ドイツで長年森林管理をしてきた著者が、豊かな経験と科学的事実を基に、樹木には驚くべき能力と社会性があることを紹介しています。37篇のエッセイからなる、樹木への愛に満ちた世界的ベストセラー。

森林の環境を健全にしたり、林業を盛り上げたりするための活動をしていると、「儲からないのになぜやっているの?」「地域の木を使うことで世の中が変わるのですか」といった声が聞こえてくることがあります。誰がやるべきかを考えたとき、森林は公共性が高いゆえに、経済的なものさしでは選ばれないものと思われているのかもしれません。

そうしたなかで僕が大切にしている本が、『21世紀の楕円幻想論』です。貨幣経済に重きを置いた世の中を「正円」にたとえ、それに対して目指すべきは貨幣経済と贈与経済という2つの中心点を持った「楕円」で、それらが両立している社会が重要だと説いています。貨幣経済の社会では、いろいろなものが排除されやすく、僕たちは貨幣経済のなかでお金を失ったら生きていけませんが、物々交換を含めた贈与経済のなかでは生きられるのです。両方を行ったり来たりし、その間にあるちょうどいい未来を見つめたいです。

森林に話を戻すと、過去に植えられた木について僕らに責任があるのかどうかは、分かりません。でも、誰かがそれを引き受けていかないと、”収奪社会“からは離脱できないのです。SNSなどではときに自己責任論が叫ばれますが、この社会で、誰かが責任をとれることなんてあるのでしょうか。著者は「誰の責任か分からないことを引き受けて生きている人がいる」という考え方が重要だと説きます。今僕らには頑張れるチャンスがあるということ。もし頑張れるなら、信念に基づいて頑張ったほうがいいと考えています。

森のおもしろさや豊かさを知ることができる読みやすい本が『樹木たちの知られざる生活』です。ドイツの森で森林管理官として働いていた著者が、観察に紐づいて森のおもしろさを綴っています。例えば「人間の知らないところで樹木たちは会話をしている」など、視点がおもしろいのです。いろいろな事実を通じて、森や木々が意志をもって生きていることがよく分かります。しかも、観察日記のようになっていて生き生きと語られ、そこに喜びがあるのがいいなと感じました。樹木は環境保全の道具ではなく、共に地球で生きていく仲間なのだということが文章から伝わってくるのです。
 森林にとっての幸せな状態に向かう道はたくさんあります。森林の課題ではなく、それを解決した先の未来を愛していれば、柔軟に考えることができます。今回紹介する5冊が、そのヒントになればうれしいです。

山賊ダイアリー
岡本健太郎著、講談社刊
 (162323)

猟師生活が描かれた漫画で、何度も読み直しています。生きものを獲り、命を頂く生活。決して命を軽んじているのではなく、そこには喜びがあり人間味にあふれています。自然界とのバランスを考えさせられます。
マツタケ─不確定な時代を生きる術
アナ・チン著、赤嶺 淳訳、みすず書房刊
 (162325)

輸入されるマツタケのサプライチェーンの発達史を、多角的に叙述した本。木材も日本は一時期輸入材に依存していました。僕はマツタケの物語に日本の森の荒廃を見ています。つながりを知ってもらえるとうれしいです。
森の探偵─無人カメラがとらえた日本の自然
宮崎 学著、小原真史著、亜紀書房刊
 (162327)

独自に開発した無人カメラのシステムを用いて野生動物や自然を撮り続けてきた著者が、自然の発する声なきメッセージを語ります。野生の世界に対する認識を改めさせてくれる一冊。宮崎さんの著書はどれも好きです。
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おくだ・ゆうじ●1988年、三重県生まれ。信州大学農学部森林科学科で年輪を研究。2015年にデザイン事務所を設立。2016年に「森をつくる暮らしをつくる」を理念に掲げる『やまとわ』の立ち上げに参加。現在は、長野県と三重県の二地域暮らしを実践中。
photographs by Yuichi Maruya text by Yoshino Kokubo
記事は雑誌ソトコト2023年1月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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