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サスティナビリティ

特集 | 人が集まるプレイスメイキング術

北池智一郎さんが選ぶ「シェアキッチン×プレイスメイキングを楽しむ本5冊」

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シェアキッチンの特徴は、複数の利用者で調理場を共有していること。朝にパン屋さんを開く人や、夜にキッチンカーの仕込みをする人など、利用時間や利用形態はさまざまです。キッチンをシェアするからこそ生まれることとは。10年以上シェアキッチン事業を営む北池智一郎さんの選書です。

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(左から)1. 古本屋台 / 2. 一汁一菜でよいという提案
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(左から)3. ソーシャルデザイン ─社会をつくるグッドアイデア集 / 4. 無縁社会 ─“無縁死”三万二千人の衝撃 / 5. そうだ、葉っぱを売ろう! ─過疎の町、どん底からの再生
僕が経営する『タウンキッチン』という会社は、その名のとおり、まちの暮らしに解け込むようなサービスを目指しています。『タウンキッチン』で運営しているシェアキッチン事業は『8K』という名前で、最大8人が契約して共同利用するもの。お店として利用したいという人ばかりなので、希望者がすぐに開店できるように、営業許可の取得条件もクリアしています。

今はコンビニや宅配サービスを使えば、他人と関わらなくても生きていける時代ですが、ご近所に顔見知りがいれば、やっぱりうれしいものです。誰しも毎日何か食べるのだから、つくり手の日常の食事やお菓子をちょっとおすそわけするように販売する気軽さと、買い手のお気に入りの店を見つけるような感覚の先に、誰かと誰かのつながりが生まれたらと思って、まちでシェアキッチンを始めました。

土井善晴さんの『一汁一菜でよいという提案』には、キッチンという場所の持つ力が書かれています。「台所が作る安心」という節では、「台所の安心は、心の底にある揺るぎない平和です」とあって、まさにそうだと思いました。顔がわかるあの人がつくったものは、おいしいだけでなくほっと安心するものだと思います。実際、シェアキッチンに足を運ぶお客さんは「店主は元気かな」など、食べ物を手に入れる以外にも何かしらの理由がある人が多いはずです。空腹を満たすだけなら、便利な手段はほかにあるからです。『8K』利用者のとある店主は「あのおばちゃん、最近来てないな、と気づくパン屋さんになりたい」と話していましたが、キッチンの特色は、誰かが誰かのためにつくる場所ということなんだと思います。

『8K』の場合は8人の店主がいて、それぞれの店や店主の個性を気に入ったお客さんが足を運びますが、個性はつくるものではなく、一人ひとりに備わっているもの。それがしみじみ伝わるのが『古本屋台』です。夜になったら店主のオヤジさんが屋台を引いて本を売るのですが、一風変わった店と愛想があるとは言えない店主を心待ちにしている人たちが登場し、どんな個性が誰に響くかわからないという極端な例です。

こんな風に店主の個性が活きたシェアキッチンがどのまちにもあって、その中に、まちに住む一人ひとりに気に入る店があれば、通ううちに近所に顔見知りができる。そうすれば、シェアキッチンは人と人をつなぐ場所になれるかもしれません。

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きたいけ・ともいちろう●大阪大学を卒業後、コンサルティングファーム、人材ベンチャーを経て、2010年に『タウンキッチン』を設立。東京、神奈川、京都を中心にシェアキッチンやシェアオフィスを10拠点運営しており、創業支援を通じたまちづくりを行っている。
photographs by Hiroshi Takaoka & Yuichi Maruya text by Maho Ise

記事は雑誌ソトコト2022年11月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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