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サスティナビリティ

特集 | 人が集まるプレイスメイキング術

大久保勝仁さんが選ぶ「銭湯×プレイスメイキングを楽しむ本5冊」

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東京・墨田区京島で100年以上の歴史をもつ『電気湯』の4代目店主を務める大久保勝仁さん。地元の人たちにとっての居場所となるような生活空間を目指す大久保さんが選んだのは、プレイスメイキングをはじめ、地域に関わる際に必要な心構えを教えてくれる本でした。

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(左から)1. 団地のはなし ─彼女と団地の8つの物語 / 2. サバルタンは語ることができるのか
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(左から)3. 住む ─〈ふるさと〉の環境学 / 4. 手話を生きる ─少数言語が多数派日本語と出会うところで / 5. 空間のために ─偏在化するスラム的世界のなかで
東京・墨田区京島にある『電気湯』で4代目店主をしています。2019年に祖母から継いだばかりの頃から『電気湯』で意識しているのは、お客さんをはじめこの地域で暮らす人たちと、みんなで共有できる居場所をつくるということ。今回、選書の依頼をいただき、そのとき初めて『電気湯』がしていることもプレイスメインキングなのだと気づきました。「銭湯」がテーマでありながら、選んだのはそこに直接関係する本ではありません(笑)。ですが、いまの『電気湯』の本質を語る本ばかりです。

『サバルタンは語ることができるのか』は、僕の思想の一部になっている本です。サバルタンとは、端的にいうと社会的に従属的な立場にいる人たちのことを指します。本書では、寡婦殉死の風習のもとサバルタンの立場にあるインドの女性について、エリートと呼ばれる知識人たちが理解したように語ることを懐疑的に批評しています。この本を読んで他者を語ることの難しさや、他者が発する声に誠実であることの大切さを学びました。プレイスメイキングもそうですが、地域で何か新しいことを始めるときに重要なのは、その地域の人たちが、どういう生活をして、どういう文化のなかで活動をしているのかをまず知ることです。そのためには自分の目で見て、体で感じるしか方法はありません。こうした学びが、お客さんたちとともにこの場所をつくっていく『電気湯』のスタンスにもつながっています。この本はおすすめというよりも、地域に入って何かしたいと思っているなら必読の一冊です。
 
僕は『電気湯』でコミュニティが生まれたらいいと思いつつ、実際にどのように生まれるものなのかがわからなかったんです。そんなときに、『電気湯』のバイトメンバーが貸してくれたのが、『団地のはなし』です。団地をひとつのテーマに、短編小説や漫画、対談などが収められています。同じ建物でともに住み、ご近所付き合いがほどほどにある点など、団地ってよく考えてみると、銭湯に似ているんですよね。等間隔にある部屋も銭湯の洗い場みたい。僕はコミュニティを生むために何か仕掛けなくてはと思っていたのですが、この本を読んでその必要はないんだといい意味で”諦め“がつきました。そんなことをしなくても適した場所があればコミュニティは自然に発生する。その具体的なイメージが、この本を読み進めていくうちに湧いてくるはずです。

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おおくぼ・かつひと●東京・墨田区京島にある大正11年創業の『電気湯』4代目店主。2019年、3代目だった祖母の「『電気湯』、閉めるで」の言葉が契機となり、前職を辞めて家業を継ぐ。共同の生活空間としての『電気湯』をまちに残すため奔走中。
photographs by Hiroshi Takaoka & Yuichi Maruya text by Ikumi Tsubone

記事は雑誌ソトコト2022年11月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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