住民・行政・企業を巻き込んだ対話にヒントがありました。
横尾 フリーマーケットアプリ「メルカリ」を展開する株式会社『メルカリ』は、循環型社会の実現に向けて、繰り返し利用可能な梱包材「メルカリエコパック」を開発しました。『グリーンバード』も協力して配布しています。その開発に携わった深見和樹さんにお話を伺うと、企業、社員とまちのサスティナブルな関わり方のヒントが見えてきました。
そもそも、深見さんはなぜこの会社に入社したんですか。
深見 新卒では調査会社に入社し、新規事業開発などを行っていました。他社の事業開発はどのように行われているのかに関心があり、たまたま『メルカリ』が主催していた座談会に参加したのがきっかけです。セクターを超えて、より多くの人々を巻き込みながら、世の中にインパクトを与える仕事ができると思い、入社しました。
横尾 そこで最初に取り組んだのがシェアサイクルの「メルチャリ」事業なんですよね。
深見 そうですね。弊社として初めてのオフラインかつハードウェアのサービスであり、初めて自治体と協定を締結するという事業でした。リアルの場でのシェアリングエコノミーを目指しました。いくつかの都市と話をする中で、行政や街の方々と思いが共有できたことから、福岡市で始めることになりました。
事業には市のみならず、地元企業や商店などとの連携が必要です。まちをよくするという目的を遂げるために、地元の人たちが本当に欲しいものは何かを一つずつ考えたり、アイデア出しをしたりするという作業を繰り返しました。地域のさまざまなステークホルダーとひたすら対話を重ねる日々でしたね。
横尾 始める前に、まちやそこに住む人々と思いや実現方法を共有するというのがサスティナブルな事業の秘訣なんですね。最近では、リサイクル、起業家支援など、多様なテーマで自治体と協定を結んでいますが、その背景を教えてください。
深見 私たちは、自治体との連携を通じて、個人や地元企業とともに、地域の方々が自ら地域の課題を解決できる仕組みの構築をしていきたいと考えています。最近では、民間出身の市長も増えて、企業連携を積極的に進めてくださるので、今後もどんどん提携を深化させていきたいと考えています。まずは一つ一つの成功事例をつくることで、将来的にどの自治体でも展開できるよう、スキーム化していきたいと考えています。
横尾 「メルカリエコパック」はどのような経緯で生まれたサービスなのでしょうか。
深見 メルカリ」というサービスを通じて、誰かにとっては価値がなくなったものが、ほかの必要な誰かに届けられる「捨てるをなくす」社会を実現してきました。しかし、実際には、物流や梱包材の消費において課題があるのもまた事実でした。『グリーンバード』さんとご一緒させていただいたのは、同じ志を持った方々とともにこのエコパックを届けることで、循環型社会の実現に向けたストーリーがより伝わると思ったからです。リリースした後、想像を超えるポジティブな意見をいただきました。この取り組みだけではすべての梱包材の課題を解決することは難しいけれど、エコパックを受け取った人のマインドに少しでも変化が生まれていったらうれしいですね。
取材後記
『メルカリ』がユーザー向けに行った調査では、ECなどで利用・廃棄する梱包材について、利用者の8割が「もったいない」と感じていることが判明したそうです。会社の理念も、そこで働く人、そして顧客もみんながその思いを共有している状態、またそうした状態を生み出している企業のしっかりとした理念には驚きました。こうした企業や社員がまちづくりに積極的に関わっていけば、「住民参加型」にとどまらず、住民が企業(社員)と手を取り合いながら自分たちの理想のまちを考える「住民=企業参加型」のまちづくりの可能性も広がっていくのではないかと思いました。このような流れの中で、「メルカリエコパック」がこれからどのように広がっていくかに注目したいと思います。(横尾)