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サスティナビリティ

連載 | NEXTSTAGE まちのプロデューサーズ2.0

「社会課題をデザインで解決する」という方法。

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目次

約10年前から、デザインで社会を変えようと世の中に投げかけている人たちがいます。

お話を聞いた人

筧 裕介さん 『issue+design』代表

横尾 今回お話を伺うのは、社会課題をデザインの力で解決する『issue+design』代表の筧裕介さんです。同社は「社会の課題に、市民の創造力を。」を掲げ、2008年に阪神・淡路大震災の地、神戸で生まれました。設立10周年、おめでとうございます! そもそも、どのようなきっかけで会社をつくるに至ったのでしょうか?

 もともとは広告デザインの仕事をしていました。その仕事もおもしろかったのですが、一方でつくってもすぐ消費され、消えてなくなる世界で、それに対する虚しさもありました。そんな折、仕事で訪れたアメリカ・ニューヨークで起きた同時多発テロ事件に遭遇したんですよね。混乱と喧騒の中で過ごすうちに、あの事件は貧富の格差をつくり出す社会構造、宗教対立などといった、たくさんの社会課題から生まれたものだと知りました。日本社会が抱える課題にも興味を持ちはじめ、これまでの経験をもとに、デザインで社会を変えていくことに大きな可能性を感じました。

横尾 10年前は、「ソーシャル」や「デザイン思考」といった考え方はそれほど知られていなかったと思うのですが、時を経て変わったと思うことはありますか?

 この10年で賛同してくれる人や一緒に取り組んでくれる人がとても増えましたし、何かやろうと最初投げかけた時の「?」という感じも少なくなってきた気がします。設立当初から、災害をデザインの力でどう乗り越えていくかについては取り組んでいたんですよね。当時は、自治体からお声はかからずじまい。ですが、東日本大震災を機に、状況はどんどん変わっていった気がします。そうは言っても、日本では、企業が社会課題を解決することへの意欲がまだまだ低いと感じています。

横尾 なぜ進まないのでしょうか?

 企業はマーケット的な意識がどうしても強いので、リスクを負って変えていこうと思う気持ちが少ないこともあるのではないでしょうか。何か取り組みを始めたい時に、実証実験を行うことができる場所も少ないですしね。そこがシリコンバレーなどとの違いでもあります。

横尾 家庭内の問題が社会問題へと変化するなど、日本には多くの社会課題が山積しています。今どのようなことに注目していますか?

 認知症ですね。高齢者の5人に1人が認知症となる時代と言われています。今は予防ばかりで、実際に認知症と診断を受けた後の社会の取り組みが何もなされていないのが現状です。認知症の方がより暮らしやすい社会を実現するためのチャレンジには大きな意義があると思っています。そのための施策を今、行政や企業とともに具体的に進めているところです。

横尾 これからどのような社会をつくっていきたいですか?

 いろいろな場面で生きづらさを感じている人は、たくさんいるんですよね。それぞれみんな弱みや痛みを抱えていて、誰しもが実はマイノリティであったりします。そんなことをお互いに共有できて、個性にできるような社会をつくりたいですね。マイノリティの方の苦しみや痛みに寄り添えるデザインは、実はその他多くの人にとっても価値があるものだったりもします。そこから社会は変わるのかなと思っています 。

取材後記

 筧さんには以前にお世話になり、すごく久しぶりにお会いしました。「震災+design」の活動などは、僕も博報堂時代、とても驚いたし、こういう仕事をしてみたいと強く思ったのを覚えています。それから10年。自治体と企業、NPOの垣根を越え、みんなで一丸となって山積する社会課題に取り組まなければならない時代になりました。そういう時だからこそ、未来の理想の姿から考える「デザイン発想」がより大事になるはず。「儲けのことは最初から考えず、課題をどうしたら解決できるかから発想する」という筧さんの考え方にすごく心強く感じました。現在、「issue+design 10周年記念展示 Synergy」を開催中。名古屋会場はまだ間に合います。ぜひ、この10年の歩みを体感してみてください!(横尾)

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