本連載「毎日がサスティナブル!? —アムステルダムとニッポンのSDGs—」では、質問や相談、お悩みを受け付けています。アムステルダム在住の桑原姉妹がユーモアを交え、また、時には真剣に答えてくれます。今回は、ソトコトオンライン元編集長・北野さんらからの質問にズバッと回答します。
日本のSDGsに思うこと、日本人男性へのメッセージ
乾 随時募集中の桑原姉妹への質問コーナーに今回、ソトコトオンライン元編集長・北野さんから質問が届きました。「こんな感じで回答してくれますよー」といった例として、みなさんに提示できればと思います。
桑原真理子(以下、真理子) 質問、ぜんぜん来ないからさみしかったです(笑)。
乾 質問は「お二人から見た、日本のSDGsってどう思いますか?」というもの。「ウィットに富んだ質問でなくて恐縮です!」という申し送りもいただいています!(笑)
桑原果林(以下、果林) 一言で言えば、日本のSDGsはよく知らないです(笑)。なにをどうやっているのか、そんなに把握していないんです、正直。でも、このあいだ息子にNHKの子ども番組を見せようとしたら、小さい子に向けたSDGsを紹介するコンテンツがあって、こんなに一般化しているんだなあって思いました。
真理子 日本の方が「SDGs」という言葉を使っていますね。オランダではほとんど聞かない。SDGsって言っても伝わらないかもしれません。
果林 “サスティナビリティ”は使うけどね。SDGsより、パリ協定の内容とかのほうがニュースや話題に出る感じがしますね。
乾 日本はSDGsの認知度がめちゃくちゃ上がっているってニュースありますもんね。それになんでもかんでもSDGsに変換しているイメージもありますねー。
ありがとうございました。では、次の方の質問に。以前「Clubhouse」で公開トークをやったときに上がっていた「日本人男性に伝えたいことがあれば教えてほしいです」というもの……。
真理子 やっぱり、女性に対して「かわいい」って言わないことですかね。
乾 それだけ言ったら、褒めなくていいって聞こえますが、その真意は?
真理子 「かわいい」というのが必ずしも女性に対しての褒め言葉ではないということです。私が言われたら「かわいいってどういうこと?」と違和感しか感じないと思います。とにかく、女性も男性も自分らしく、自信を持って、頑張って!
乾 えーと……質問が抽象的だとマジでアバウトな回答しか返ってこないって伝えておきますね(笑)。
果林 体験に基づいたものだったら答えやすいかもです(笑)。
真理子 質問者がどこで悩んでいるかわからないから(笑)。ただ、どうなんでしょう。日本の男性も「こうあるべき!」ってしがらみに囚われ過ぎている気がするから、それがなくなったらいいかも。男性ももっと泣いてもいいと思います。日本では、男性は泣いちゃいけない、みたいのがありませんか? 自分を抑えないといけないっていう価値観、あるんだろうなあって。私はうちの父が泣いたのを見たことがありません。
果林 私も、男性も自分をもっと大切にしてもいいんじゃないかなって思います。
真理子 別に男性だからって上じゃなくていいし。腹立たしいのが、テレビとかで、男性が女性に教えるって構図。それって男性にとっても窮屈なんじゃないかなって。
果林 女性を必ずしも経済的に守らなきゃいけないってプレッシャーもいらないしね。結婚して専業主婦になりたいって女性も少なくないのかもしれないけど、個人的には男女ともに経済的に自立しているのが理想だと思っています。
真理子 ジェンダーに縛られることなく自分に誠実であればいいと思います。結婚も、自分にとって本当に必要かどうか、女性も男性もより考えるべきだと感じますね。
果林 結婚する理由の一つに、両親や親戚からのプレッシャーもあるかもしれないですね。男性も同じように、むしろ女性以上に圧を受けているのかもしれないなって。
真理子 不倫についても、当事者にとっては辛い問題だから軽々しくは言えないですけど、ただ、男性であっても女性であっても既婚者でありながら違う「人」を好きになることって人間ならあると私は思います。それ自体を極悪のように捉えられてしまう日本は大変だなって感じる部分も。不法行為ですし、もちろんオランダでも不倫はご法度ですけど、モノガミー(一人だけを愛す)の関係性を続けることの難しさはもっとオープンに議論されている気がします。乾さんはどう思いますか?
乾 完全に同意ですね。日本の場合、結婚する理由は世間体だったり、親族からのプレッシャーが大きいような……。
真理子 結婚したければすればいいし、したくなければしなければいい。結婚し、家庭をもつというのも一つの生き方として、多様なライフスタイルがもっとあってもいいと思います。同時に、結婚してもしなくても同じ社会サービスを受けれるような構造をつくるべきだと思います。
果林 日本は結婚していた方が税金が控除されたり、優遇されるもんね。男女の関係に話を戻すと、日本の若い世代の人たちの間では性別をベースにした役割意識が希薄になってきているような気もします。共働きが増えているからかもですけど「女が料理すべき!」とか、男性にもそんな感覚がそれほどなさそうだし、それはいい流れなんじゃないかなって私は思っています。
真理子 前にもお話しした通り、うちでは父が毎晩ごはんを作ってましたが、父が当時スーパーに行くと、夕飯の買い出しに来ている男性客はたいてい父だけだったそうです。そういう父みたいな男性はかなり珍しかったようですけど、むしろ当時の一般的な男性像が不自然だったんじゃないかなあ。
果林 従来の考え方が社会と合わなくなっているんでしょうね。男女のあり方も新しくなっていって、これからどんな風に変わっていくのか楽しみでもあります。
乾 ありがとうございます! ということで、みなさまからの質問や相談、お悩みを募集しています! 今回の内容、次回以降のパートナーシップや結婚観についての記事でさらに詳しくひも解いていってますので、そちらもお楽しみに!
皆さんのご意見や相談、受け付けます!
この連載「毎日がサスティナブル!? —アムステルダムとニッポンのSDGs—」で取り上げてほしい事や桑原真理子さん(桑原姉妹)へお悩み相談したい方、募集します!
桑原果林 くわはら・かりん
コーディネーター、翻訳者、通訳者。日本で日蘭バイリンガルとして育ち、2010年渡蘭。レインワードアカデミー美術大学文化遺産学科でミュゼオロジーを学び、在学中に姉・真理子と共に通訳・翻訳事務所So Communicationsをアムステルダムにて設立。メディア・教育・介護・農業・デザイン&アートなど多岐にわたる翻訳・通訳・コーディネート業務を行い、日本とオランダの交流のサポートにつとめる。
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桑原真理子 くわはら・まりこ
アーティスト。東京都生まれ。 父が日本人、母がオランダ人。19歳の時にオランダへ渡る。2011年、ヘリット・リートフェルト・アカデミー(アムステルダム)、グラフィックデザイン科卒業。過疎地域で出会った人々との対話を元に、ドキュメンタリー形式の出版物、映像作品を制作している。
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乾祐綺 いぬい・ゆき
編集者、フォトジャーナリスト。写真家でもあった祖父の影響から、幼少期より写真を始める。海、環境、暮らしなどを主なテーマに、日本各地はもちろん、海外への取材を続ける。未来をつくるSDGsマガジン『ソトコト』、ANA機内誌『翼の王国』誌上などで、写真と記事を掲載。日本と海外、それぞれのソーシャルグッドな文化や活動を双方向で伝えることをテーマに活動する株式会社ニッポン工房代表。