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仕事・働き方

管理者負担を軽減する大崎電気のスマートビルディングシステムから未来型まちづくりを目指す

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ビルや商業施設の管理業務を省人化できるとあって、注目されている大崎電気のスマートビルディングシステム 。近年、電力会社に納める電力量計のトップメーカー大崎電気は、ベンチャー企業と連携しシステム開発に乗り出しています。2018年7月にシステム・機器部長に着任した時から約3年間、大崎電気のスマートビルディングシステムに携わるエネルギーソリューション営業統括部 営業二部長 兼 SMS課長の土屋 武史氏に、ソトコトNEWSの北野が未来へのビジョンを聞きました。

目次

電気メーターを活用し既存ビルの管理業務をスマートに改善

北野:本日はお時間いただきありがとうございます。まずは土屋さんの入社のきっかけを教えて下さい。
土屋:技術系の大学を出ているので、電気に関わるメーカーが良いかなと考えていました。実際には、技術系の仕事に就いたことがないのですが。就職活動をしていた当時、電力会社さんに電力量計を納めているメーター企業で長らくトップメーカーの大崎電気の従業員数が意外と少なくて目を引いたんですね。1つの枠の中で仕事をするのではなく、ひょっとすると選択肢がたくさんあって、自分の可能性を試せる会社かなと思って選びました。
北野:なるほど。そこからいろいろご経験されて今があると思うのですが、今携わられているスマートビルディングシステムについて、生まれた経緯を教えてください。
土屋:電力量計は、電気使用量を正確に測るため各家庭に1台必ず設置されているのが特徴です。従来の電力量計は、内部の円盤が回って計測する機械式メーターでした。近年では、通信機能など多彩な機能を搭載したスマートメーターと呼ばれるデジタル電力量計が普及しています。当社の社長である渡辺もよく話していますが、電力量計が電気使用量を測るだけの円盤が回る機械式からスマートメーターに切り替わるメリットは、双方向で通信できることなんです。どこにでも設置されているスマートメーターを活用すれば、皆さんの生活をもっと豊かにできるのでは?という発想でスマートビルディングシステムを開発しています。
北野:まさに生活をより豊かに、そこに関わる方々がより便利にというところを追い掛けた結果、できたことですよね。
土屋:そうですね。スマートメーターの設置が進む中で、検針したり電気を入れたり切ったりするだけではなく、大崎電気としてはもっと踏み込んでいきたいと考えています。顧客が抱えている他のお困り事も、すべて解消しようという発想になったのはここ数年です。例えば従来の施設管理者は、各テナントの都合に合わせて巡回し目視検針を業務として行っています。そこからエネルギーコストを算出し、各テナントに請求するという流れです。電力量計の中には、ビル屋上の壁際など非常に危険な所に設置されている場合もあります。そうすると、かなり怖い思いをして検針する場合も多くあります。さらには夜間に営業しているテナントの場合には、夜しか検針に行けないとか。しかも同じビルに昼間だけ営業しているテナントも入っていると、1日中ビルに出入りしなくてはいけない。こういったビル管理の煩わしさを解消する取り組みとして、スマートビルディングシステムの開発を行なっています。スマートビルディングシステムなら、大規模な小規模施設やテナントビルまで電気使用量だけでなく、ガスや水道の利用も一括で検針・集計することも可能です。テナントとの検針・管理・請求などの業務を省力化できるうえ、遠隔操作で照明の明るさを調整したりセキュリティ面に対応できたりします。
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ビルのオーナーも住民もメリットを享受できる

北野:このスマートビルディングシステムを導入すると、ビルのオーナーにはどのような点がメリットになるのでしょうか?
土屋:実はビル管理の現場は、慢性的な人材不足なのです。電気設備の保安を担う人材の方は、何年間か業務に従事していないと法的な資格を取得できません。最近は、保安業務に携わる人材が高齢化によって減少しているという話も聞いています。大崎電気のシステムをご採用いただいている大規模なショッピングモールだと、さまざまなメンテナンスを行う担い手を見つけるのも大変だそうです。しかしスマートビルディングシステムなら、遠隔操作することで楽にビル管理できるので、業務の省人化が進み、働き方改革に役立つと感じています。技術的に今は厳しいことも、今後どんどん取り込んでさらに提供価値を高めていきたいです。またビルのオーナーだけでなく、マンションなどの住民にとっても住環境が良くなるというメリットもアピールしていきたいですね。例えば、管理会社側で共用部の電気が切れている・いないが分かれば、定期点検まで待たなくても、すぐに対応できるようになります。さらにCO2の濃度を計測することで、人がどの程度その場に密集しているかが分かります。スマートビルディングシステムのメインターゲットは、築年数が経ったあまり大きくない既設ビルです。ビル管理の効率化に伴うイニシャルコストは、既設の電力量計を活用できるため少なくて済むのに、ビルなど不動産の価値も上がるといった好循環を期待できると考えています。
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他社と自社の強みを掛け合わせ付加価値の創造へ

北野:スマートビルディングシステムの開発において、どのあたりが1番大変だったか教えて下さい。
土屋:スマートビルディングシステムの開発においては、他社、特に技術力のあるベンチャー企業との連携・協業を重視しています。大崎電気が、もともと保有している技術だけではスピード感や価格面などさまざまな課題があり、スマートビルディングシステムがなかなか広がらないと判断したためです。そこで高い技術を保有するベンチャー企業など他社とパートナーを組んで付加価値を創造し、できることを増やしていこうという取り組みを今も継続しています。入社して25年になりますが、ベンチャー企業とのお付き合いは今回が初めてです。顧客でもサプライヤーでもない、一緒に開発するパートナーという距離感をつかむまでが大変でした。ブラックボックスで高い技術を使わせていただくという関わり方が、新鮮でかつ面白く、非常に大変な点です。
北野:ベンチャー企業と一緒に取り組む上で、大事にしていることは何ですか?
土屋:大前提として、目的・目標をまずパートナー会社と共有し、世の中にスマートビルディングシステムを提供する価値を共有して一緒に開発を進めることが、非常に重要だと考えています。その上で、自分たちの利益を優先するような思考から、お互いのメリットが享受できる形を常に考えるようになりました。それは規模の大きな組織に長く勤務しサラリーマンとしての考え方と、ベンチャー企業経営者の考え方が大きく乖離していることに気づいたことがきっかけでした。大企業だと若干ぬるま湯に浸かっているところがあるので、彼らほどの切迫感が私には足りないと実感させられましたね。ベンチャー企業はスピード感を持って、サービスを世の中に送り出す必要がありますから、大崎電気もそのスピードに合わせるための配慮や工夫が必要なんだなと非常に勉強になりました。
北野:開発を進める上で、社内で大変だった点はありますか?
土屋:スピード感が落ちないようにするために、社内の技術部とは対話量をとにかく増やして業務に取り組んでいます。実際に開発を担当する技術メンバーとは、溝を埋めるためにたくさん話をしていますね。気づかないうちにスケジュールが遅れている、という事態は回避したいですから。とにかく会話をたくさんしようと心がけているので、新型コロナの影響下でウェブを活用した打ち合わせにもすっかり慣れました。
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未来型まちづくりの構想とは

北野:スマートビルディングシステムは、まだまだ伸びしろがありそうですね。今後どのような豊かさをもたらす可能性があるとお考えですか?
土屋:日本中には約9,000万個の電気量計が設置されており、すべてが一元化されると非常に細かいメッシュを形成できます。そうすると、より正確なローカル情報のやりとりが可能になるのです。ビルの中で完結しているシステムを外の世界に向けて拡大していくと街になり、スマートシティ化につながるよねと、一緒に開発を手がける技術部長と最近よく話しています。街全体を対象とした場合には、ビル管理の場合とは異なる情報が必要になると考えています。例えば自治体の方の話を聞いてみると、防災無線塔の真下にいる人は音がうるさ過ぎて、アナウンスの内容がよく分からない。逆に防災無線塔より遠い人は、山びこみたいでよく聞こえない。市全域ではなくもっとピンポイントを対象にアナウンスしたほうが理解されやすいですよね。各家庭に1台必ず設置されているスマートメーターは、ローカルな情報発信にうってつけです。スマートメーターの設置情報を一元化すれば、通信網を経由して避難の必要がある人に直接アナウンスするなどの活用法も考えられます。
あるいは、電柱が電子掲示板になるアイデアもあります。道路情報と連携し、迂回して逃げないと危ないですよと表示される。あるいは鉄道と連携し、列車が遅れています、と表示されるといった可能性を考えたりしています。
北野:いずれ生活になくてはならない存在になる可能性がありますね。
土屋:今後労働者人口が減っていく中で、技術で人の代わりができるようなところまで実現すべきなのかなと思います。

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