壁を塗るだけでなく、装飾を施したり、擬木や擬石を手がけたりとクリエイティブな側面がある左官の仕事。
『吉村興業』の職人さんたちは、確かな経験と技術であらゆる現場で活躍している。
作業内容の幅が広い、 クリエイティブな左官業。
左官工事を手がける同社は、1957年の創業、現在は三代目の吉村誠さんが代表を務めている。”左官”という言葉は耳にするが、実際にはどんな仕事なのだろう。「現場は町場と野町場に分かれ、前者は住宅や店舗の改修など小規模の工事を、後者はマンションや商業施設などの大きな建造物の工事を担当します。また、特殊建造物を扱うこともあります」と吉村さん。
その作業内容も多岐にわたり、石灰石から作られた漆喰をコテで塗り重ねる壁塗りのほか、砂、セメントなどを混ぜた材料で岩や木などをリアルに再現するモルタル造形、葉模様などを立体的に装飾する漆喰石膏装飾、さらには研ぎ出し、洗い出し、土壁、漆喰などの昔から伝わる左官工法を文化財復元や古民家改修で施すこともある。「弊社は平らに塗るだけでなく、レリーフ(平面上に形を盛り上げて肉付けした彫刻)を得意とし、またテーマパークや映画のセットに用いる木や石をモルタルで再現する仕事を請け負うことも。後者の場合、通常は左官屋がモルタルを塗りつけて造形屋が仕上げますが、左官屋に最初から最後まで任されるのは珍しいことなんです」と吉村さんは説明する。
このように特殊な現場や工法を任されるのには理由がある。同社には、過去48回開催された全国技能大会の優勝者がかつて5人在籍していたこともあり(現在は4人)、左官業界の中でも高い技術レベルを誇っているからだ。「全国的に見ると一人親方が率いるところが多いですが、弊社は技術力が高い職人がリーダーとなって若い人と一緒にチームを組んで大きな現場をまとめること、現代の左官屋ではできなくなっている昔からの技術を若い人に継承していくことができるのを強みとしています」。
特殊建造物の復元を 手がける重要な仕事も。
「まず調査から入り、使用している材料、工法を確認して、基本的にはその当時の通りの復原を目指します。ただし、昔使われていた漆喰に混ぜる麻の苆(繊維)や海藻の一種である角又糊が今では入手しづらくなったり、工事の予算があったりするので、どうするかは腕の見せどころ。このドームの場合は、厚さ10センチの漆喰が塗られていたところにモルタルを塗って躯体をピンで刺し、剥落防止の方法をとって漆喰は3センチに抑えるという工法になりました」。
そして、まもなく同社は、神奈川県横浜市のシンボルの一つである『横浜市開港記念館』の復元工事にも携わる。「昔はこんなことをやっていたんだと発見があり、調査は私の大好きな仕事です。安全性を第一に考えて復元しますが、当時の使えるものは使うというスタンスです」。目を輝かせながら語ってくれた吉村さんから、左官業はロマンを感じる仕事でもあると伝わってきた。
毎日塗るのが楽しい。 入社2年目の女性職人。
「左官の魅力は後世に残る仕事に携われること。ものをつくり上げていく楽しさ、出来上がった瞬間の達成感もあります。鈴木さんのような志のある人たちと重要な仕事を手がけていきたい」。吉村さんは力強くそう語った。
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記事は雑誌ソトコト2022年7月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。