技術や伝統を受け継ぐ、

技術や伝統を受け継ぐ、 若い左官職人たち。

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2022.06.06

壁を塗るだけでなく、装飾を施したり、擬木や擬石を手がけたりとクリエイティブな側面がある左官の仕事。 『吉村興業』の職人さんたちは、確かな経験と技術であらゆる現場で活躍している。

作業内容の幅が広い、 クリエイティブな左官業。

『吉村興業』三代目、代表取締役の吉村誠さん。

職人の朝は早い。取材の日、現場に出発する前の朝6時過ぎに、シャキッとした姿勢でカメラに向かった。この凛々しい1ショットに収まったのは、東京都中野区に本社を構える『吉村興業』の職人さんたちだ。
 
左官工事を手がける同社は、1957年の創業、現在は三代目の吉村誠さんが代表を務めている。”左官”という言葉は耳にするが、実際にはどんな仕事なのだろう。「現場は町場と野町場に分かれ、前者は住宅や店舗の改修など小規模の工事を、後者はマンションや商業施設などの大きな建造物の工事を担当します。また、特殊建造物を扱うこともあります」と吉村さん。

その作業内容も多岐にわたり、石灰石から作られた漆喰をコテで塗り重ねる壁塗りのほか、砂、セメントなどを混ぜた材料で岩や木などをリアルに再現するモルタル造形、葉模様などを立体的に装飾する漆喰石膏装飾、さらには研ぎ出し、洗い出し、土壁、漆喰などの昔から伝わる左官工法を文化財復元や古民家改修で施すこともある。「弊社は平らに塗るだけでなく、レリーフ(平面上に形を盛り上げて肉付けした彫刻)を得意とし、またテーマパークや映画のセットに用いる木や石をモルタルで再現する仕事を請け負うことも。後者の場合、通常は左官屋がモルタルを塗りつけて造形屋が仕上げますが、左官屋に最初から最後まで任されるのは珍しいことなんです」と吉村さんは説明する。

このように特殊な現場や工法を任されるのには理由がある。同社には、過去48回開催された全国技能大会の優勝者がかつて5人在籍していたこともあり(現在は4人)、左官業界の中でも高い技術レベルを誇っているからだ。「全国的に見ると一人親方が率いるところが多いですが、弊社は技術力が高い職人がリーダーとなって若い人と一緒にチームを組んで大きな現場をまとめること、現代の左官屋ではできなくなっている昔からの技術を若い人に継承していくことができるのを強みとしています」。

特殊建造物の復元を 手がける重要な仕事も。

代表作の東京駅丸の内駅舎の南北ドーム天井。

技術力と経験が豊富な吉村興業は、これまでに誰もが知る施設を数多く手がけてきた。東京駅丸の内駅舎の南北ドーム天井は、代表作の一つだ。1914年竣工の駅舎は1945年の東京大空襲で被災し、戦災復興工事による姿のまま60年以上が経過したが、2012年に創建当時の姿に復元された。2003年に「国指定重要文化財」の指定を受けたこの建物の象徴する華やかな南北ドームを手がけるという、重責がのしかかる大役を見事に務め上げた。

「まず調査から入り、使用している材料、工法を確認して、基本的にはその当時の通りの復原を目指します。ただし、昔使われていた漆喰に混ぜる麻の苆(繊維)や海藻の一種である角又糊が今では入手しづらくなったり、工事の予算があったりするので、どうするかは腕の見せどころ。このドームの場合は、厚さ10センチの漆喰が塗られていたところにモルタルを塗って躯体をピンで刺し、剥落防止の方法をとって漆喰は3センチに抑えるという工法になりました」。

そして、まもなく同社は、神奈川県横浜市のシンボルの一つである『横浜市開港記念館』の復元工事にも携わる。「昔はこんなことをやっていたんだと発見があり、調査は私の大好きな仕事です。安全性を第一に考えて復元しますが、当時の使えるものは使うというスタンスです」。目を輝かせながら語ってくれた吉村さんから、左官業はロマンを感じる仕事でもあると伝わってきた。

毎日塗るのが楽しい。 入社2年目の女性職人。

現場が変わるのも楽しいと話す鈴木巴里さん。
職人歴10年の越前谷晃史さん。作業に無駄がない。

仕事の幅が広い左官業では、職人ごとに得意な技が異なってくる。コテを使って絵を描く作業もあり、施主からイメージだけを伝えられて形にすることも。任される内容の幅が広いため、美術に長けている人がこのような仕事を得意とし、同社でも美大出身者の職人がいるそう。一方で、仕事の多くを占めるのが平らに壁を塗る作業。昨年入社した27歳の鈴木巴里さんは、「壁を塗るのが毎日楽しい」と話す若き職人さんだ。取材当日は、職人歴10年の越前谷晃史さんと東京都目黒区のマンションの一室で改装作業を行っていた。前職は小売店業だった鈴木さんは、職業訓練校を経てこの業界に入った。「一見簡単そうですが、実は奥が深い。平らに見えても光が当たるとバレてしまうんです。昔は厳しい師弟関係があったと聞いていますが、今は先輩たちが分からないところは教えてくれるし、一番経験が浅い私にもやらせてくれる。日々勉強の気持ちで取り組んでいます。高校を卒業してすぐに入らないと職人になれないイメージがありますが、今は私のように社会人を経験してからでもやりたい気持ちがあればなることができますよ」と鈴木さんは充実した表情で話してくれた。

「左官の魅力は後世に残る仕事に携われること。ものをつくり上げていく楽しさ、出来上がった瞬間の達成感もあります。鈴木さんのような志のある人たちと重要な仕事を手がけていきたい」。吉村さんは力強くそう語った。

本社の天井に施した漆喰石膏装飾。
吉村さんの伯父と父が、1957年に創業。
漆喰の原料である消石灰、セメント、砂などが倉庫に並ぶ。
珪藻土入りの仕上げ材をコテで塗る作業。
天井に仕上げ材が付かないよう最初に養生テープを貼る。
広い面、狭い面でコテの種類や仕上げ材の硬さを変える。

Job Information

勤務地
東京都中野区

人数
若干名

勤務スタート時期
随時募集中

photographs Mao Yamamoto   text by Mari Kubota

記事は雑誌ソトコト2022年7月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。