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連載 | SUSTAINABLE DESIGN

松江モダニズム建築群|伝統と近代が高度に応答する松江市の都市空間

雑誌『ソトコト』編集部

雑誌『ソトコト』編集部

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目次

開発と保存。相反する想いを見事にくみ取った歴史都市の姿。

この夏、島根県松江市を訪れる機会があった。島根県立図書館など巨匠・菊竹清訓が設計した建築が複数あり、それを観たい想いで立ち寄ったのだが、その思惑を超えた特別な経験をした。

私が感動したのは、建築単体がどうこういうよりも、その都市空間だ。まず城の存在感がすごい。松江城の天守や掘割がていねいに保存され、都市の中心を成している。また、その周りにあるモダニズム建築群もすごい。県庁、図書館、武道館、旧・博物館など、どれも合理的な美と造形の力強さがあり、一つの群造形となっている。

さらにランドスケープとして捉えてもすごい。都市の中心部が日本庭園と都市公園とが融合した環境となっていて、この都市の文化度の高さを物語っている。日本でこれほどまでに、伝統と近代が高度に応答する都市空間を知らなかったので、ものすごく興奮した。

よほどの凄腕のキーパーソンがいたに違いないと聞きまわってみると、森広厚造という一人の人物の名前が浮かび上がってきた。森広は、島根県庁の財政課長~総務部長~出納長を務めたエリート事務職で、当初は何も知らなかった建築・都市計画について、ヨーロッパの視察によって造詣を深め、当時の島根県知事・田部長右衛門氏の後ろ盾を得て整備計画全体を一貫してマネジメントしている。森広の残した手記には、簡潔な言葉でヨーロッパの都市から学んだことが整理されている。「1.土地利用の規制と公有地の拡大 2.永久の意図をデザインに反映すること 3.強い計画意志と、その根底に生活環境に関する理想像を描くこと」。サスティナブルデザインの本質を突く至言であろう。

今、日本では各所で、資本の原理による短期的な視野の再開発が進行中である。果たして森広のような人物を、今の日本は生むことができるだろうか。未来に期待したい。

藤原徹平
ふじわら・てっぺい●建築家。1975年横浜生まれ。2009年より『フジワラテッペイアーキテクツラボ一級建築士事務所』主宰。2010年より『一般社団法人ドリフターズインターナショナル』理事。建築、地域計画、まちづくり、展覧会空間デザイン、芸術祭空間デザインと領域を越境していくプロジェクトを多数手がける。2012年より横浜国立大学大学院Y-GSA准教授。受賞に横浜文化賞 文化・芸術奨励賞など。

記事は雑誌ソトコト2024年2月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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